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疑問

「え?薬師じゃ、ない?」


それは三者三様な有様だった。突然の問いかけに首を傾げるアレス君、真実を見抜かれ硬直する私、そしてそんな私を笑顔で直視するタニアさん。大きく見開いた彼女の視線から感じるものは懐疑ではなく確信、私が薬師でないと確信していた。


「…ゴメンね、ショーコちゃん?」

そう呟いたタニアさんは素早く私の右手を掴んだ。


「っ!」


突然な対応に一瞬遅れてから振りほどこうとする。だけど私の腕はまるで万力にでも挟まれたかのような人並み外れた力で掴まれて全く抵抗できない。引こうとも押そうともビクともしない私の抵抗を無視するかの如く、タニアさんは空いた手で懐から何かを取り出す。それは布に包まれた小さな石、あの王城の空間で見た物と同じ石だ。


「いっ、嫌!」


それが何かを理解して、咄嗟に拒絶の言葉を出す。あれはきっと、鑑定石と呼ばれた物だ。恐らく何らかの魔道具で、触れた人の名前、この世界で職業と呼ばれている人の素質、そしてその熟練度を表す物だ。つまり再び、私が死霊術師だということがバレてしまう。


モーリスとつーへの命令は間に合わない。タニアさんに憑依して止めさせるより早く、鑑定石は私に触れる。この村の人たちに私の正体がバレてしまう。彼等の好意と感謝が、罵声と憎悪に変わる。その瞬間を見たくなくて、思わず目を瞑る。だがそれが潰せるのは視覚だけだった。右手に冷たい何かが触れる感触、それに続いて周辺で魔力が動き出し、魔術師としての感覚が鑑定石に込められた魔術が起動するのを告げる。


私の手の上に現れた文字を見てタニアさんは喋り出す。


「あらやっぱり、それにしてももうレベル7だなんて、若いのに頑張り屋さんね!」

「…へ?」


そんなの好意的な声で、間抜けな声を出しながら閉じた目を開く。目の前に居るタニアさんは、変わらず笑顔だった。何で?死霊術師だってバレたのに…それにレベル7?たしか前は29だったよね?そんな疑問に突き動かされ、右手の上に浮かんでいる文字を見る。


シノノメショウコ、錬金術師、LV7


鑑定石の魔術は、そう示していた。タニアさんが私の右手を手放して、鑑定石が出した文字が虚空に消える。


「本当にゴメンね?そうだとは思ったんだけどどうしても確かめたくて…許してくれる?」


そんな言葉が聞こえてきたが、私は反応を返せなかった。

鑑定石に、錬金術師と表れたせいで、さっきのタニアさんと同じく、一人で考え込んでしまった。


錬金術師アルケミスト?なんで私が錬金術師なの?魔術の分野は一通り知っているけど、私が父から学んだのは死霊術師だけ。私も父も、錬金術師じゃない。でもあの鑑定石は私を錬金術師だと表した。あれって、本人の素質とその熟練度を表すものじゃないの?実はあの石の魔術が壊れている?それとも死者直しの薬が錬金術で作ったと誤認された?でもあの薬はモーリスとつーと一緒に作った紛れもない死霊術の産物、いやでも行ったのは物質の変性だから、ある意味錬金術?


「どうしよう、ショーコちゃんが無視してる!私、許されないんだわ!」

「それは…タニアさんが悪いと思います…」


そんな私の没頭は、見かねたモーリスが声を掛けるまで続くことになった。


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