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対面

村で一晩明かした次の日、


「まあまあ、旅の薬師さんと聞きましたが、結構な美人さんですね!」

「ど、どうも…」


眼鏡らしきものをつけたお婆さんが笑顔のまま私の手を握って、力強い握手をする。ブンブン、と形容すべきその腕の振りに私の腕は成すすべもなく、されるがままであった。


「あら私ったら挨拶もまだなのに、ごめんなさいね?私はタニア、この村で薬師をやってるの。それで貴方のお名前は?」

「聖子です。」

「ショーコちゃんね、覚えたわ!でもビックリしちゃったわ、鳥文とりぶみで熱を出して寝込んだ子がいるって聞いたもんですから慌てて戻ってきたら別の薬師さんが薬を作ったなんて言うんですもの!」


良く言えば若さに満ち溢れた、悪く言えば年相応の落ち着きが全くないお婆さん。タニアさんがこの村の薬師らしい。今私は村長宅の一室に居て、この部屋にはタニアさんの他に私をここまで案内したアレスくんが、部屋を仕切る扉の前に立って居る。つまり逃げられない、という事だ。




何故こうなったのかと振り返ると、今日の早朝まで遡る。モーリスと話し込んだ私は誰かが扉を叩く音で目が覚めた。扉を開けると、そこに居たのは昨日私が薬を飲ませたミリアちゃんだった。なんでも私を起こすのと同時にお礼を言いなさいと両親に言われたそうな。私としてもミリアちゃんがちゃんと元気そうで良かった。調整を誤ってずっと寝たきり、なんて事にならなくて良かった。


ミリアちゃんに「寝汗で気持ち悪いからさっぱりしたい」と頼んだらタオルとたらいに入ったお湯を持ってきてくれた。どうやらここにお風呂やシャワーはないらしい。だけどそれでもお湯はお湯、ミリアちゃんに感謝してからお湯を受け取って体の汚れを拭った。しかし久しぶりの暖かいお湯を堪能し過ぎて、満足して部屋を出た後にアレスくんが現れ「村長の家に呼ばれている」と言われた。



そのまま案内され今に至る。



「えっと、確か街に行って居ないと聞いたんですけど…」

「ええ!本当はゆっくり三日掛けて戻ろうと思ったんですけど急いで戻って来たの!お陰でクタクタだわ。」


ふぅ、と疲れた事をアピールするようにタニアさんがわざとらしくため息をする。三日の距離を、急いで一日で来たらしい。


「あの、もしかして馬に乗ってきたんですか?」


取り敢えず有りえそうな疑問を口にする。この村に馬は見当たらなかったが、仮に徒歩で三日の距離なら馬に乗って一日、と考えれば説明がつく。



「おかしな事を聞くのね?馬みたいな高い物なんてこの村じゃ誰も買えませんよ。歩きじゃ遅いから走ってきたの!」

「え…」


思わず硬直する。歩いて三日の距離を、走って?聞き間違いじゃないかと自問自答するが、私が聞いたことは覆らない。もしかしたらこの世界ではこれが普通なのか?と思いアレスくんの方を見る。君も出来るの?みたいな視線を投げかけると慌てて答えてくれた。


「いや、それってタニアさんだけですよ!普通は走っても一日じゃ街からここへ辿り着きませんからね?」


よかった。これでアレスくんも同じことが出来ると行ってたらどうしようかと…少なくとも、この村でそんな人並み外れた能力を持っているのはタニアさんだけのようだ。


「え?そんなに大変じゃないわよ?」

「それより、確か彼女に話したいことがあるって聞きましたけど!」


きょとん、と首を傾げるタニアさんを尻目にアレスくんが私が呼ばれた理由を聞いてくる。


「ええ、そうだったわね!村長から聞いたんだけど、大変だったねぇショーコちゃん…荷物も殆ど失っちゃったんでしょ?ああ、でも聞きたいことはそうじゃなくて…でもでも…」

「…あのー?」


ああでもない、こうでもない、といきなり私を無視して一人で考え始めるタニアさん。多分本題から話すか、その他から始めるかと悩んでるみたいだけど、私はどうすればいいの?気づかれないようにチラッとモーリスを見るけど、彼は首を横に振る。モーリスはこういう人物は苦手のようだ。しかしタニアさんはついに決断したのか一人で「よし!」と意気込んだ。


「ショーコちゃんって、本当は薬師じゃないでしょ?」

「…えっ、」


ごく普通に、気楽そうに、彼女は私の嘘を捉えていた。


今年はこれが最後です。皆様よいお年を

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