一息
モーリス、つーと一緒に薬を作り終えた私は、外で待ってた見張りに別の家屋へと案内される。
「ここに、その女の子がいるんですね?」
「ええ、そうですけど…本当に、本当に大丈夫なんですか?」
扉の前で見張りの青年がまた問いかけてくる。態度からして不審者な私を疑っているんじゃなくて、心配しているだけのようだ。
「あなたは毒も薬になるって言いましたけど、どうも、信じられなくて…」
「…そうですか。では、毒って何ですか?」
「え?」
このままでは中に入ることもままならないので、面倒だがまずはこの青年を納得させることにする。
「ちょっと答えてください、毒って、何ですか?」
「え、ええと…か、体が悪くなったり…それと…ひどい時には、死んだり…」
「それは毒の効果です。私の質問は毒という物は何なのか、です。」
「ええ!?」
まるで考えたこともなかったみたいに反応する青年。もしかしたらこの世界は、私がいた世界より文明が劣っているのかもしれない。頭に手を当て、考え込んでいる青年を見て少し思った。
「答えを言うなら、取り込んで害があるものが毒です。」
「え?は、はい…」
「動物の肉に例えましょう。生だったり、焦がし過ぎたり、腐ったりすれば食べられませんよね?」
「…はい…」
「そうなったお肉は体に悪い、つまり毒です。ですがキチンと焼いたり燻製したりすれば食べられます、毒じゃありません。」
「あ…」
モーリスが『少々強引ではないですか?』と言っているが無視する。仮に間違ってても彼が納得すればいい。つーに関してはそもそも最初から会話についてこれてない、なに話してるの?と首を傾げている。
「同じように彼岸花、私が使った花も正しく使えば毒じゃなくなります。おそらくあの毒草の棚は、薬草にもなるが使い道を間違えれば毒になる物を集めた、だから別の棚にあるんじゃないですか?」
「…」
「使い道を間違えると危ないから、この村の薬師さんは棚を分けてこっちの棚は全部毒草ってことにしてるんだと思います。」
絶句している彼に畳み掛けるように結論付ける。この村の薬師がいたら反論してくると思うが、この青年は納得してくれたようだ。彼は一度目を瞑って息を吐いてから、
「妹の事、宜しくお願いします。」
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結局、高熱を出した女の子、青年の妹の症状は大したことなかった。
てっきり物凄い高熱かと思ったのだが、その子は寝込んではいたが意識はハッキリして、おでこも触って見たが熱自体大したことはなかった。つまり唯の風邪だ。それでも青年は「大丈夫!?」とか「何か欲しいものある!?」と慌ただしく、等の妹にも「お兄ちゃん、うるさい…」と言われる始末。事前に薬を飲ませると朝まで目覚めませんよ、と説明しなければもっと酷かっただろうと想像できる。
「いやあ、世話になったね。うちの倅なんかミリアが心配で何の役にも立たなくて。」
「いえ、私が何もしなくともその内よくなってたと思います。」
その後、見張りの青年、アレスと名乗った彼の家で食事を戴くことになった。アレスくんの父親は猟師らしく、本人曰く新鮮なウサギ肉をご馳走してもらった。恐らくつーの生前と同じホーンラビットだったお肉の味は悪くない。少なくともあのネズミの串焼きは二度と食べたくないと思うほどには。
「だから言いましたよね?、だたの風邪だから問題ないって。」
「うう…」
同じテーブルでアレス君の母親は下を向いて恥ずかしがっている彼を叱っている。なんでも本来は見張りじゃなくて父の手伝い、猟師見習いをやってるらしいが妹のミリアちゃんが風邪をひいて、心配のし過ぎで手伝いにならなかったので父親から「邪魔だから見張りでもやってろ!」と言われたそうな。
日が沈みだす時間帯、この世界に連れてこられて、初めて一息ついた気がした。




