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薬小屋

村長さんが呼んだ見張りの人に案内され、一つの小屋に連れてこられた。なんでも、村の薬師はここに材料を保管したり、薬を作っているのだとか。


「それで、子供用の熱冷ましを作ればいいんですよね?」

「はい、お願いします旅の薬師さん。」


一応見張りの青年に聞いてみたが作って欲しいのは熱冷ましだけのようだ。本当ならその子供に診察とかした方がいいとは思うのだが、下手に慣れないことをやって嘘がバレると嫌だったので黙っておく。一応そのお子供は何歳か?と村長さんに聞いたら七歳の女の子だそうだ。


「ここが作業場です、薬草とかはこっちの方の棚にあります。」


そうして案内されたのは使い古された、という言葉が似合う作業台だった。小屋の一角を占拠してるそれはすり鉢や陶器のな入れ物が上に置かれている。近づくと、草や花の匂いが染み付いているのが分かる。パッと見て見たが、これどうやって使うんだ?みたいな物はないので一安心。問題は、材料の方だ。


「この棚に入っているのは、全部使っていいんですか?」

「はい、毒草は別の棚に保管しているので、ここにあるのは全部薬草です。」

「一応、毒草の棚も見ていいですか?」

「え?まあ、はい。」


薬草の棚を見てみたが、見事に見覚えのない植物ばっかりだ。もしかしたら中には私のいた世界と同じ物もあるのかもしれないが、薬師じゃない私には分からない。下手にここから選んでも草汁しか作れそうにない。藁にもすがる思いで、毒草の棚もみて見る。それが通じたのか、その中に一つ、見覚えのある花があった。


「あ、彼岸花…」

「え、この赤い花のことですか?」


薬草と同じように乾燥させ、種類ごとに分けられて棚の中の容器に入れられてある。その棚の一つに、彼岸花の花が入ってる棚を見つけた。乾燥しても線香花火みたいに広がる花弁に思わず見惚れる。一番好きな花を教えてと言われたら迷わずこの花を指すぐらいには好きだ。


「これ、使っていいですか?」

「え、でも、これって毒ですよね!?」

「毒も使い方次第で薬になります、この花は使い慣れているんで問題ないです。」

「そ、そうなんですか?」


確かに彼岸花は薬にもなるが、重要なのはそこじゃない。死人花しびとばなの異名もあるこの花は土葬された死体を野生動物から守る為に植えられたと父に聞いた。「死」に縁があるこの花は、死霊術で作る薬の立派な材料の一つだ。


「ではこの花と、あとこれと、この薬草も使わせてもらいますね。」


そう言って薬草の棚から適当に目をつけた物を選ぶ。一応、比較的魔力が宿っているのを選ぶが、薬を薄めて人に飲ませてもいいようするだけなので、最悪外に生えた雑草でも構わない。


「あと、できれば作っているのを人に見られたくないので、一人にしてくれますか?」

「ええ?」

「教わった人に、他人に見せてはいけないと言われているのです。このままでは作れません」

「で、でも…はい…」


嫌そうに見えたが、見張りの青年は素直に退出してくれた。扉の内側には閂があったので、それをかけて入られないようにする。


『これで準備は出来ました。モーリスもつーも手伝ってくださいね。』

『分かりました。ですが手伝うと言っても何をすれば?』

『…?…!、!!』


何をすればいいか分からないモーリスとよく分からないけど任せて!と言いたそうなつー。


『今から作るのは死体を健康にする薬です。モーリスとつーは、繋がりを通して伝わる魔力を、今から作る薬に注いでください。』


本来なら生きてない者、死体に飲ませてその効果で体の損傷を直す為の薬。壊れたゾンビを直す用途で使う。直すと言っても四肢の欠損みたいな大規模の損傷は直せない。あくまでも人が自己治癒できる範囲でしか直せない。生きている人にも効果はあるが同時に体温が下がり、意識が落ちて仮死状態になる。濃度が濃ければそのまま目覚めずに死ぬ。


『では始めますね。』


が今回は解熱、体温の低下が主目的だ。よって薄く作って一晩だけ死んだように眠るだけの効能にする。傷の修復は微々たるものになるがそれでいい。彼岸花を含めた材料を作業台の上に置く。取りかかるとしよう。


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