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生者探し

今回はいつもより短めです。

例えるなら、魔道書は車のような物だ。


短距離の移動なら自分の足でも歩けるように、憑依や即席ゾンビなどの簡単な魔術を使うだけなら必要じゃ無い。だけど車があれば同じ時間でより遠くに行けるように、魔道書があればより高難易度の魔術にも手が届く。ただの魔術の知識を刻んだだけの本じゃ無い。


望んでいるページを開く。そこに描かれているのは魔法陣、複雑な魔力の行使をサポートする目的で使う図式だ。魔力を込めると、血で描かれた陣が赤く光りだす。左手で本を開いたまま、右手である物を取り出す。その正体は尺骨、腕の骨の一部だ。モーリスの骨と土で補強スケルトンを作る時に使わず取っておいた。


『これは私の骨、ですか?』

『ええ、今から行う魔術にこれが必要なんです。残り少ない貴方の骨、使わせて頂きますね?』

『どうぞ、ご自由に。今更惜しみません。』


本人の許可も出たので、取り出した骨を転がすように手のひらから本の上、魔法陣の中心に落とす。骨は本にも陣にも触れることなく、その真上に浮く。ふわふわくるくると、骨はゆっくり回り、次第に魔法陣の光りを帯びて赤く染まる。


『生の終わり、命の結末、死の世界に我は語る。骸の針よ、主たる我に示せ。汝は死者の羅針盤、生を求める亡き者の指先。我らが共に抱く一つの望み、無辜なる命の在処を示せ!』


骨が高速に回り出し、すぐにピタッと止まる。骨が纏っていた赤い光が先端に集い、血の色のように赤黒くなる。


「ウォ!?グラァ、グラァ!!」

「ひゃっ!?あ、危ない…」


私の魔術を見て興奮したのか、つーが突っ込んで来た。それを紙一重で躱す。


『主よ、大丈夫ですか!?』

『ええ、なんとか無事です。』


霊の姿のような角が生えただけのウサギならともかく、このクマの図体で体当たりされたら怪我しちゃう。いや、当たりどころが悪ければそのまま死んじゃうかもしれない。


「つー、危ない!今の貴方に当たってたら大怪我だよ!?」

「ウグ?グルゥゥ…」


クマの体で首を傾げるつー。契約した霊をゾンビにする欠点の一つは、肉体があるから接触しないと魂の言葉が届かない事。一生を多分森で過ごしたつーは、わたしの言葉が分からない。今も 「え、何で怖い顔してるの?」とでも言いそうな態度だ。同じ危険をもう一度はこりごりなので、しっかり頭を掴んで叱る。


『つー、その体、危ない。ぶつかったら、私、怪我する。』

「グォ?ウ、ウゥゥ…」


分かりやすいようにゆっくりで説明する。態度から察するに自分がクマの体に入っているのを忘れたようだ。


『その体で、私にぶつかるの、ダメ。分かった?』

「グゥウゥ…」


つーがしょぼくれる。残念ながらその体ではあまり可愛く見えない。


『もうしないって、約束する?』

「グォ!グォ!」


頭を縦に降るつー、分かってくれて良かった。元の世界では契約は美咲季さんとしか交わしてないので、こんな苦労するとは思わなかった。支配すればゾンビでも常に魂の言葉で命令が出来る、その場合人も動物も同じなので契約しても同じだと思ってしまった私の失敗だ。


『その、地面に落ちてしまったのですが…い、如何されますか?』


回避の代償に本と骨を地面に落としてしまった。だけど大丈夫だ。


『問題ありません、幸い踏み潰されなかったのでそのまま使えます。生者探しの術は長持ちしますので。』


さっきの魔術は、生者探し、文字通り生きてる存在を探す術。そのままでは虫、動物、魔物、あらゆる生物に反応するので媒介を使用する。モーリスの尺骨を使ったのはそれが人間の骨、つまりこれで人間だけに魔術を限定した。落ちてある死饗祭典と生者探しの術を込めた骨を拾う。浮かせる必要があるので髪の毛を一本引き抜いて紐がわりに骨の中心に結ぶ。これで準備は完了。


『ではそろそろ出発します。つー、乗りますね?』


もう一度つーの頭に触れながらモーリスとつーに話しかける。つーはちゃんと屈んで私が乗りやすくしてくれる。そのまま上によじ登る。


『つー、この骨、見えるよね?赤いほうに、進んで?』

「グォウ!」


つーが吠えて答えて、私をのせたままのっしのっしと走りだす。毛皮をしっかり掴んで落ちないようにする。


さて、ちゃんと人里につけるかな?



次はできれば金曜日、うまくいったらこのまま月、金と定期的に投稿したいと思います。

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