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桜木姫乃:決意

「…ショウちゃん?」


想定していなかった事態を目にし、思考より先に口から言葉が溢れる。ショウちゃんと思わしき人物の胸に剣が突き刺さっている。目を通して伝わる事実を脳が拒否しようとする。だけど感覚は誤魔化せない、意思に反して、状況を理解してしまう。


「嘘、そんな、ショウちゃん!!」


居ても立っても居られなくて、ショウちゃんに向かって駆け寄る。だけど私の行動に気づいた兵士の一人が立ちふさがって、ぶつかる。迂回して通る前に、他の兵士達が私の邪魔をする。これじゃ通れない!


「ダメだ、これ以上近づくな!」

「どいてよ、どいてよぉ!ショウちゃんがショウちゃんが!!」


どうして邪魔するの!?このままじゃショウちゃんが死んじゃう!嫌だよそんなの!思考が白熱して、けど何もできなくて、考えるのを止めて押し通ろうとする。でもその前に感覚が、ショウちゃんが近づいている事を告げた。それがどういう事かわかる前に、私の中に何かが入るような変な感覚がして、ショウちゃんの場所を告げる感覚が私がいる場所で重なる。


『姫乃ちゃん』

「え?何処?何処にいるのショウちゃん?」

声が響いて来る。間違いなくショウちゃんの声だ。でもどこから?感覚が私と同じ場所で重なって、突然声が聞こえて、さっきから色々あり過ぎて頭が追いつかない。


『これ以上私に関わらないで。』

「…えっ?」


そしてそのままわたしから何かが出ていって、それが一気に加速して飛び去った。同時に黒いローブを纏った誰か、私がショウちゃんだと思った人が倒れる。途端に私も手足の力が抜けて、意識が遠のく。何が何なのか分からないまま、いや、一つだけ分かりながら倒れる。私が感じてたあの感覚は、きっとショウちゃんの魂なんだと…




_____________________________________


「起きな小娘!」

「うっひぃ!?」

耳元で怒声が響き叩き起こされる。反射的に辺りを見渡すが、自分の部屋でも教室でも、軟禁された場所でも無い。小さい部屋に白いカーテン越しに日差しが入る窓、病室みたいな場所だった。隣には白髪のお婆さん、おそらく私を叩き起こした人が立っていた。


「具合は?」

「…え?」

「だから具合はどうなんだって聞いてるんだ。」

まるで挨拶がわりに突然聞かれたので、


「お、お腹が空きました。」

と返す。


「…ちょっと待ってな。」

はあ、とため息を零しながらお婆さんが背後のドアから出ていった。そしたら1分もしない内にお婆さんが戻ってきた。手にはパンやらスープやら乗ってるトレイがある。それをベッドの上で座っていた私の膝の上に置いた。


「ほれ、食べな。」

食べていいと言われたので、心の中でいただきますと言いながらパンに齧り付く。パサパサして喉が渇くのでスープで流し込む。うん、空きっ腹に染みる。


「食べながらでいい。昨日の夜の話だ、聞きな。」

深妙な顔をして、お婆さんが語りかけて来る。


そして私はあの夜何があったのか聞いた。

あの騒ぎは脱走したショウちゃんが起こした事、それは彼女が持ってた魔道書を取り戻す為だった事、あのローブを纏った体は囮で目的を果たし逃げ去った事、そして、


「…3人も、死んだんですか?」

「ああ、その内二人は兵士。残りの一人は…あんたらだ。」

「っ!」


死、その言葉が頭の中で反復する。元の世界ではニュース越しにしかなかったのが、中が悪かったとはいえ同じクラスの生徒という身近な人物に襲いかかった事に衝撃を受ける。


「これでも最小限、と言っていい。あの子が殺す気だったらたとえアタシがもっと早く戻れたとしても生存者なんか片手で数える程しか残らなかっただろうね。」

「…」


特に、それをしたのがショウちゃんという事実が、刃物のように胸を突き刺す。お婆さんに何か言おうとして、ショウちゃんの最後に言った事を思い出し留まる。『これ以上私に関わらないで。』と言った事を。それで理解した、何故あんな事を言ったのか。


ショウちゃんはお人好しだ。異世界に転移される時も、彼女は私を庇った。あの慌てっぷりは何かの魔術のせいだったと理解したんだろう。もしかしたら一人で逃げられたのかもしれない。だけど彼女は私に抱きついて庇った。昨日も、わざわざ私が巻き込まれないように忠告したんだと思う。下を向いてた顔を、お婆さんに合わせる。


「…お婆さん。」

「名乗ってなかったね、ゲルダだよ。」

「ゲルダさん、私、彼女を探します!」


予想外の私の答えにお婆さん改めゲルダさんは目を丸くする。


「会えたとして、何て声を掛ければいいのか分かりません。だけど彼女は、ショウちゃんは私の親友です。だから彼女を一人にしておけません。」


そう自分自身に決意する。死霊術師だとか関係ない。ショウちゃんが捕まった時、私は何も出来なかった。だから今回は何かする!その何かが分かんないけど…


「探す、ねぇ?そう言ってもあんた、アテが有るのかい?」

ゲルダさんが私を睨みつける。だけど怯まない。


「あります、あとあんたじゃなくて姫乃です。」

「…へぇ?」


そう、ショウちゃんを探す手段はある。何故なら私の感覚が、途切れる事なく未だショウちゃんの魂を捉えてるからだ。大まかにだが、彼女がどっちの方角にいるのが分かる。


「ヒメノ、これに触ってみな。」

そう言ってゲルダさんがローブの裾から何かを出して私の前に置く。これって、昨日見た鑑定石?視線で急かされてもう一度触れてみる。すると、



     サクラギヒメノ、聖女、LV5


と出てた。あれぇ?何でレベルアップしてるの?てか聖女ってドユコト?そう疑問に思っていたらゲルダさんが話し出した。


「魔力は本来魔術師にしか知覚できない。だが限られた条件ならば他にも扱える職業はある。聖女は体内の魔力を使って傷を癒したり肉体を強化したり、本人の願い次第で様々な奇跡を起こす職業だ。アテについても、デタラメ言ってる訳じゃないようだね?」


な、なんか凄そう…そう思っていたらゲルダさんが後ろを向いて歩き出した。


「今日中に、あの子を追う部隊が組まれる。ヒメノ、あんたも一緒に連れてく事にした。」


そう言って私が返事も質問もする前に、扉を出て去って言った。結局謎のジョブチェンジの事は分からずじまい。しかも部隊に連れてくって強制?そして一人残された私は何をすればいいの?



まあ、なんか色々と疑問だらけだけど、取り敢えず頑張ろう…




この後現代視点を書くつもりでしたが、幕間が思ったより長くなったのでまた別の機会に書く事にします。次からまた本編です。

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