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桜木姫乃:騒乱

「うあああああ!!!」

「うひゃっ!?」


いつのまに眠っていた私は、外から響いてくる悲鳴によって目覚めた。


「え、ちょっ、何今の…誰の悲鳴?」


辺りを見渡すが、当然ながら部屋には誰もいない。目に見える変化は窓から入る光が減って薄暗くなっている、扉の前に銀色のトレイに乗った食事が置いてあるの二つ。寝ている間に運び込まれたみたいだがいったいいつまで寝ていたんだ私は?食事を見てお腹が空いている自覚は出たが食べる気になれない、部屋の外で、悲鳴が続いているからだ。


「助けてくれ、お願いだ!」

「そんな、どうして、お前が…」

「ち、近づくな!お前も襲ってくるんだろ!?」


耳を澄ますと、そんな声が次々に聞こえてくる。それと同時に、何かが倒れたりぶつかったりする音が聞こえる。近くの壁に何かが当たった音がして、扉から後ずさる。


「どうして…私が寝てる間に、何が起きたの?」


怖くて、その場でへたり込む。どうしよう、どうしよう、どうしよう、思考が延々と空回りして何も思い浮かばない。誰かの悲鳴が木霊する、どこかでぶつかる音がする。


「嫌、やだぁ…」


何かしないといけないのに、その何かが分からない。動こうとしても、手と足が恐怖に竦んで動かない。薄暗い部屋と、外の悲鳴が精神を蝕む。


「助けて、お父さん、お母さん、…ショウちゃん!」


手足が震える。心まで恐怖に飲まれ、助けを乞う。誰もいないのに、届くはずもないのに。だけど、親友の名前を呼んだ途端、彼女の顔が浮かび上がって、言い表せない感覚が胸に宿った。


「…え?」


震えが止まって、体が恐怖から解き放たれる。その場で立って、外の騒ぎを無視して、感覚に没頭する。


「これって、ショウちゃんの…」

これは、私がショウちゃんといる時に感じていた何か。いつの間にか、感じていたことさえ忘れていた微かな感覚。それが強く、確かな物になって私の中から訴えかけている。


「…近くに、いるの?」

半ば確信を持ちながら言葉にする。不思議と、私の中にある感覚が、どこから来ているのか分かる。その感覚が、私の親友がいる場所を断定している。


「…会いたい。」

ショウちゃんに会いたい。どうしてこの感覚を感じているのか、そもそもこの感覚は正しいのか、そんな思いは一緒で霧散して決心だけが私に残った。やりたい事は決まった、だったら行動しないと。


部屋の外からまだ騒ぎは聞こえる。扉から部屋を出るのは危険だしそもそも鍵が掛かっている。だから出る方法は一つだけ、窓の外から。窓の外に、一本の木が生えているのが見える。窓からジャンプすれば届く距離で、うまくやればそこから降りれて自由に動ける。だけど失敗すれば大怪我間違いなし。それでも覚悟を決めて、窓に足を掛け、


「うおーりゃー!」


と声を上げ飛び出す。それが悪かったのか、勢いよく木にぶつかり、掴み損ねる。重力に引かれ、「あ、やば、」と言い終わる前に、体が地面に叩きつけられる。


「痛っ…たくない?」


そのまま起き上がる。衝撃こそ受けたものの、体のどこからも、痛みを感じない。薄暗い中自身を見渡してみるが、地面で服が汚れたぐらいで、骨折どころか打撲も擦り傷も見当たらない。あれ?と思いつつ上を見る。私がいた部屋の窓が、だいたい三階建の高さだ。無事に落ちれる高さじゃない。


「…まあ、結果オーライって事で!」

もしかしたら異世界は重力が地球より弱いのかもしれない、と変な理論で自分を納得させる。蛮勇からの失敗について考えるのを放棄し、感覚が伝えてくれる場所を探す。城の角にある塔の頂点から感じる。


「…そこに、居るんだね。」


塔に向かって走り出す。私のショウちゃんが、死霊術師だとかはどうでもいい。大事なのは、彼女が私の親友だって事。捕まって居るなら助けないと!


辺りが一段と暗くなる。だけども怯まずに進んでいく。塔の中に入る、辺りには倒れて居る兵士だけ。わき目も振らずに登る、私の中にある感覚が、親友に近づいて居るのを感じながら。運動は得意じゃないけど、今だけは体がいう事を聞いてくれている。全速力で登り切り、感覚を感じる部屋に入る。



そこにいたのは召喚された場所で見たお婆さんと多数の兵士、その一人が、黒いローブを纏った人に剣を突き刺していた。


私の感覚が、その人がショウちゃんだと告げていた。

幕間二話目です、あと一話続きます。

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