表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/51

桜木姫乃:追憶

「はあ…」

ドアの前でぐったりと座り込む。ブチ破ろうと数時間前に意気込んで叩いたり体当たりしてみたものの、白旗を上げたのは私の方だった。別に最初から無理だった分かってたし、万が一扉を壊せてもすぐに兵士に捕まるのがオチ。つまりこれは親友を勝手に悪認定したあの国王と、親友を助けられなかった自分に対するただの癇癪。


私、桜木姫乃さくらぎひめのはクラス毎異世界に連れ去られて、今この部屋に軟禁されている。理由は私の親友である東雲聖子しののめしょうこ、ショウちゃんが逃げ出すのを手伝ったから。学校の教室から謎の地下広間に転移させられ、異世界の国王に魔王を倒してくれ、なんて頼まれた時、私はうわーテンプレ展開だ!なんて喜んでたっけ。だけどショウちゃんが触れた鑑定石に死霊術師なんて出て態度は急変、助けも虚しく彼女は捕まってしまった。そうして私やショウちゃんを助けようとした3人は兵士に運ばれ、別々の部屋に入れられ今に至ると。


ドアから離れ、フラフラっと、部屋にあるベッドの上にドサッと倒れこむ。


「…ショウちゃん…」

ふと彼女の名前を呟く。鑑定石を触る前の態度、逃げる時に捕まるきっかけになった異様な本、私の親友がネクロマンサーだったのは真実のようだ。しかもlv29、中ボスも一人で倒せそうなレベル。どう考えても初期値じゃない。


「…お嬢様じゃなくて、魔術師だったんだね。」

ふとベッドの上で考える。もしかしたら、私はショウちゃんの事をぜんぜん知らないかもしれない。少なくとも彼女がネクロマンサーの様なリアルとはかけ離れた存在だとは夢にも思わなかった。そんな訳でちょっと思い返してみる。私が彼女の、何を知っているのかを。



_____________________________________


私がショウちゃんと最初に出会ったのは入学式の時。


出会ったと言っても、一方的に私が見知っただけ。別に彼女が首席だった訳でもなければ、何か問題を起こしたという話でもない。美人すぎてみんなの目を引いた、という程でもない。それでも何故か彼女から目が放せなかった。全体的に見て平均よりちょい上、みたいな容姿をしてた彼女は、それだけでは語れないオーラっぽい物を感じた気がした。顔とかそこまで差は無いはずなのに、胸は私の方が大きいはずなのに、不思議と私は彼女に興味を持った。


クラス初日で見た彼女はぽつんと周りから浮いてた。他の生徒は中学の時の知り合いで固まっていたり、既に仲のいいグループで駄弁っていて、残ったあの子が無表情で窓を見ていたのが今も目に焼き付いている。このクラスに知り合いはいなかったし、何故か彼女には引かれるし、


「やっほー、なーに一人で黄昏てんのさ。お腹痛いの?」


私が話し掛けるのは当然の事だった。




ショウちゃんと知り合ってまず分かった事は、彼女が少し、いや大分変わっている事だ。ふつーにアドレス聞こうと思ったらスマホどころか携帯電話そのものを今まで持った事なかったそうでびっくりした。


「ええと、ゴメンナサイ?今まで欲しいって思った事なくて…」ってのが本人の言い分。あんたは本当に21世紀の人間か?欲しい欲しく無いじゃなくて最早必需品でしょ!?って思わずつっこんだわ。そんで翌日に、


「お父さんに買ってもらいました!」と言って彼女がカバンから出したのは最近出たばっかの最新機種。大人気でどの店も品切れのはずの代物を昨日の放課後という短い時間で手に入れた彼女は只者じゃないと理解した。


私は彼女の正体をどっかの金持ちのお嬢様、と推測した。借りたハンカチを洗って返そうと思ったら値段が5桁もする高級品だったり、長髪が綺麗だからどんなケアしてる?と聞いたら「私?私は美沙希さんにお願いしてもらっているけど…」みたいな的外れな答えを出すし。ショウちゃんはただのお手伝いさんと誤魔化したけど絶対メイドさんだと思った。


私みたいな平凡な人とは住む世界が違うなと思いながらも、離れる事はしなかった。ショウちゃんとの会話はいつも新鮮で、彼女とのやり取りは私の高校生活では当たり前のものになった。一年の終わりに敬語を辞めて砕けた口調で話してくれた事が嬉しかった。ショウちゃんは一部の男子には人気らしく、二年目の初めに同じクラスの男子が3人体育館裏に集まって「これより聖子姫紳士協定を此処に設立する!」なんて言ってたのをを偶然聞いて思わず吹き出しそうになった。


だけど残りのクラスからは、ショウちゃんは嫌われている。そのほとんどは「金持ちで人を見下してそう。」「みんなに対して冷たいよね?」みたいな言いがかりや、誰が流したかも分からないような噂話。私の耳に届く頃には私と紳士協定の3人以外が、ショウちゃんを敵視していた。ショウちゃんと仲のいい私も「金持ちの腰巾着が。」な感じの言われよう。だけどショウちゃんはそんなクラスの対応に全く気づいていないみたいなので、私も無視する事にした。


私にとってのショウちゃんは世間知らずなお嬢様で、ちょっと天然で、ついでに機械音痴で、でも一緒に過ごす時間が楽しくて、もっと一緒にいたくなる、そんな人物だった。他人とは変わっている彼女と、妙なオーラを感じたあの子と、ずっと友達でいたいと思った。困っていたら助けたいと思った。だからクラスで転移して、彼女が多分一番隠したかった秘密がバレて、ショウちゃんが兵士に掴まれた時、


私がショウちゃんを助けようと飛びかかったのは当然の事だった。

姫乃視点の幕間は、あと1〜2話、続く予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ