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決別

兵士が突き出した剣が、私の体を突き破る。胸の中心を捕らえた一撃は、どう考えても致命傷だ。私が知る死霊術に、これを覆す手段は存在しない。死を操る手段はあっても、生を止めるのは不得手だ。傷を癒す手段を持たない私は、ここで命が潰える。




これが私の体であれば、の話だが。


「んっ、これは?」


私の、いや、この体を突き刺した兵士が違和感を覚える。だが時間切れだ、沈みかけてた夕日が完全に沈み、辺りが一段と暗くなる。これならば追跡は困難だ。剣が胸に刺さったまま、手に持った魔道書を窓に向かって投げる。


ガラスを突き破り、塔の外に死饗祭典が飛び出す。重力に惹かれて地に落ちる前に、二羽の黒い鳥が空中で本を掴み飛び去った。それに反応して老婆が杖から光弾をだして周囲を照らすが既に飛び去った後、空には虚空以外見えるものは無い。


「…ちっ、アタシとした事が耄碌したもんだ。その体、偽物だね?」


喋れないので老婆の答えに頷いて肯定する。剣が刺さった傷口から、血では無く砂と土塊が溢れる。この体はモーリスの遺骨を骨組みに、肉の代わりに土を被せて作った擬似的な肉体だ。そこに私自身の魂を宿して、遠隔で動かせる体の代用品にした。当然ながら会話もできない。輪郭だけで見た目は人じゃ無いと一目瞭然なので誤魔化す目的で別のローブを街で購入て着せてある。私の本来の体は、街の外にある森に隠して、モーリスに守らせている。


この体は注意を惹きつける囮で、本命はさっきの二羽、街で見かけたカラスを捕らえて殺して作ったカラスゾンビだ。魂は元々宿っていたカラスの魂を使っている。私がこの体を使って騒ぎを起こしてから本の居場所を突き止め、あの二羽で運び出すのが本来の作戦だ。順調に行きすぎてこの体でも取り返しそうになったが。


「やけに無口だと思ったが、本当…曽孫のような歳の子が良くやるもんだ。」


老婆が杖を下す。さっきは不意打ちを食らったが、今なら魔力を纏っての防御が間に合う。そして私は死者ではなく生者だ。この体が崩れても元の体との繋がりが途切れていないのでこの距離からでも肉体に戻る事が可能だ。老婆も少しは死霊術の事が分かるらしい。だからこそ、この状況で私を止められないと理解している。


「アタシはこの国に仕えている、だからあんたを捕まえなくちゃいけない。一応もう一回聞いておくけど、投降する気は?」


頭を横に降る。私はこの世界に受け入られる存在じゃない。だから自分の力で帰る方法を探す。姫乃ちゃんや他のクラスメイトが心配ではあるが、私のように酷い待遇にはならないはず。近くに別の魔術師が居ないとは限らない。また不意打ちを受ける前にこの体から出て逃げようとする。


「…ショウちゃん?」


聞き覚えのある声が響いて、老婆と兵士達が後ろを振り向く。私も反応して、この場を止まる。私も彼らも、彼女がここにいるのは想定外だったみたいだ。兵士達の後ろ、部屋の入り口に私の親友、姫乃ちゃんがいた。


「嘘、そんな、ショウちゃん!!」


私の胸に剣が刺さってるのを見て、慌てて駆け寄る姫乃ちゃん。むしろローブで完全に体が隠れた私を私だとよく認識できた物だ。兵士の一人が、危険人物である私に近づけないように彼女に立ちふさがる。


「ダメだ、これ以上近づくな!」

「どいてよ、どいてよぉ!ショウちゃんがショウちゃんが!!」


見て居られない。土と骨の体から脱出する、ただし向かう先は私の体じゃなくて、目の前にいる姫乃ちゃん。魂が通るのに、兵士の体は障害にならない。私は私自身の魂を、姫乃ちゃんに取り憑く。生きている私は他人が入っている体は奪えないが、魂を通じての会話は行える。


『姫乃ちゃん』

「え?何処?何処にいるのショウちゃん?」


何処から声が聞こえたか分からない姫乃ちゃん。そんな彼女にあと一言だけ声を掛ける。


『これ以上私に関わらないで。』

「…えっ?」


返答を聞く前に体から出る。私は、死霊術師ネクロマンサーは、世界の敵だ。そんな私と中が良い彼女も、私ほど酷く無いにしても良い目で見られないと思う。だから突き放す。姫乃ちゃんの事が好きだから決別する。彼女がひどい目に会うのは、見たく無いから。


私の魂が空を飛ぶ。肉体へ戻るまでの時間、温度は感じないはずなのに、やけに世界が冷たく感じた。



この後は桜樹姫乃視点、それと転移した後の幕間を描いてから本編になります。もしかしたらキャラ紹介も書くかもしれません。

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