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徒然なる日常の一コマ

素直じゃない気持ちの伝え方

作者: モモンガもどき



「お兄ちゃんなんか、だいっ嫌い!!」




あっ、うそ…



とうとうやってしまった。

言ってはいけないことを言ってしまった。


そう気がついたのは目の前の、いつも穏やかに笑う兄のとても悲しそうな、傷ついた顔を見たあとだった。


「そっか…ごめんな。」


兄はそう言うと、そのまま私の横を通り過ぎ玄関の扉へと向かっていく。

いつも出かける時に、私の頭を軽く撫でていく優しい手は、今は冷たいドアノブへと一直線に伸びている。


ま、まって!

ごめん、さっきのは嘘なの!!

お兄ちゃんのこと、大好きだから!!


そう言いたくて伸ばした手は、あの広くて暖かい背中には届くこともなく…

言いたかった言葉とともに、行き場もなくその場をさまよった。





両親が常に海外出張で家を空けていたせいか、小さい頃から家にはお兄ちゃんと2人っきりだった。

お兄ちゃんは優しくて、頼りになって、いつも私のことを大切にしてくれていた。


お兄ちゃんが大好きだった。

お兄ちゃんがいたから寂しいなんて思ったこともなかった。

幸せだった。


それなのに…


ある日、友達に言われた。


『兄妹なのに、そんなに仲良いって異常じゃない?』


目の前が真っ暗になった。

お兄ちゃんが好きで、大好きで、いつも一緒にいたいって思うのは異常なの?


もしかして…

お兄ちゃんも…


そのすぐ次の日だった。

お兄ちゃんに、『大切な人』ができたと聞かされたのは…



やっぱり、お兄ちゃんも…


『私のこと異常だって、気持ち悪いって思ってたの?』





それから私は、お兄ちゃんに「本当の言葉」を言えなくなった。


「…もう帰ってきたの?(嘘だよ、バイトお疲れ様)」


「ちょっと、買い物行くから荷物持ちしてよ。(一緒に買い物行きたいんだけど、ダメかな?)」


「忘れ物、気がついてたのならもっと早く持ってきてよ!(いつも忙しいのに、届けてくれてありがとう)」





「ねぇ、ちょっと今日暇でしょ?付き合ってよ。」


「いや、今日は前から彼女と約束してる日なんだ…ごめんな。」


「…先週だって会ってたじゃん。今日くらい私に付き合ってよ。」


「…ごめんな、それは無理だ。」


「なによ!!私とその女どっちが大事なの!!」


「……ごめん。」



「!?っもう、『お兄ちゃんなんかだいっ嫌い!!』







今日は約束あるだろうこともわかってたのに。

それでも、どうしても一緒に買い物に行って欲しかった。

ほんの2時間だけでもいいから。

そしたら…



誕生日プレゼント、ちゃんと渡せたのに…



たとえ素直に『おめでとう』って言えなくても、忘れてないってことだけは伝えられたのに…



「…私のバカ。」



沈みきった心とともに、私はそのままリビングのソファへと突っ伏した。



もういっそ、


今日という日がこのまま終わってしまえばいいのに…




あれから何時間経ったのだろう?

気がつくと日も傾いて、電気の付けていないリビングはとても薄暗くなっている。


ふと近くのケータイを見ればなにやらメッセージが届いていて…



『今、ショッピングモールに来てるんだけど、なにか欲しいものある?』



あんなひどいこと言ったのに…


いつも通り、優しい言葉。



目頭が熱くて、頭が痛い。

なんだか無性に泣きたくなった。



潤んだ目元をゴシゴシとこすると、さっと返信をうってからキッチンへと向かう。



ちょっと浮上した心とともに、冷蔵庫の中身へと想いを馳せる。

確か『今日は』ハンバーグが作れる材料がまだ残っていたはず…




『ホールケーキ。メッセージは"Happy birthday お兄ちゃん"で。






待ってる。』






お気付きの通り、妹ちゃんはかなりのブラコンです。そしてツンデレですw(しかしデレ率は1割にも満たない!!)

しかし、顔に思ってることが出やすいので、兄には実は思ってることがバレバレだったりw

この兄妹は5歳差くらいあるっていう設定があります。(あともう1つどうでもいい裏設定が…w)

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― 新着の感想 ―
[一言] こんにちは。 これはむしろ兄様の方が妹萌えはないでしょうか。しかし妹さんの方は凄いツンですね。 いい味が出ていると思います。良いものを読ませていただきました。
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