顔文字って意外と難しい
「って言う事件があったわけよ」
事件というのはわかると思うが昨日の実衣の
パンツ事件な。エロパンツ丸見え事件。
「お前もう死ねよ」
「なぜに⁉︎」
朝からガンガン攻めますね‼︎ 麗奈‼︎
「妹のパンツを見てそこまで興奮するとかさすがに引くぞ。もはや病気の域だな。ドン引きだ」
「仕方ねぇだろ。実衣パンツだぜ? そもそも男子高校生ってのはそーゆーもんなんだよ」
「よくもまぁそうやって開き直れるな。むしろ感心するよ」
「ありがとよ」
「褒めてねぇ〜」
んだよ。麗奈の奴。なんとなく不機嫌じゃね?
なんかあったのか? そーいや、昨日の帰りもなんか怒って帰ったよな。
「なぁ、麗奈」
「キャァアああああ‼︎ 孕まされる‼︎」
「何叫んでんのォォォオオ‼︎」
オイオイオイオイオイオイオイ。
待ってくれ。麗奈さんいいですか?
ここ。外。通勤、通学する人たち大勢いる。
みんな見てる。とくに俺への目つきが冷たい。
ゴミを見る目してるよ? ドン引きされてるよ?
ふざけんな‼︎ 俺は何もしてねぇわ‼︎
無実だっつの‼︎ 冤罪だよ‼︎ 白昼堂々そんなこと
するわけねぇだろ‼︎
「ちょっと君」
「なんだよ?」
え? 何? この人。青い制服に帽子をかぶり
腰には警棒とあれ〜? それ、ピストル?
あぁー。もしかして、この人。
警察じゃねぇか‼︎
「そこの女性になにをしようとしていたんだね?」
「え? いや、俺はべつに何も」
「大丈夫かい? お嬢さん」
「はい。なんとか。お巡りさんのおかげで」
なんでうるうるしてんだよ。
さっきまで涙ひとつ見せてなかったじゃねぇか。
名女優かよ。ざけんなよ麗奈。
「今、この男になにかされそうになったのかな?」
「犯される寸前でした」
「嘘こけー‼︎」
ふざけんな‼︎ なにほざいてんの‼︎
警察相手にそれは冗談では済まされないぞ‼︎
「君、ちょっと署まで来てもらおうか」
「いや、ほんと俺なんもしてないですって‼︎」
こうして俺は無実の罪で捕まりました。
麗奈さんや。どうしてそんなに笑顔なの?
近年稀に見ない笑顔でございますね。
ってほんとマジでふざけんな‼︎
「まったく。痴話喧嘩なら他所でやってくれないか。紛らわしい」
俺は頑張った。
なんとか朝の一件を誤解だと説明することができた。
「はい、すみませんでした」
「これからは仲良くやりなさい。女の尻にひかれるなよ?」
……………………………………………………。
なんだこれ。
数十分の取り調べでなんとか誤解を解くことはできたが。クソが。
麗奈の野郎ふざけやがって。
次あったらただじゃおかねぇ。
絶対ゆるさねぇ。100倍返しだ‼︎
ブブー。
んだ? メール? ってこれはこれは
可愛い可愛い実衣ちゃんからじゃ
ありませんか。
『兄、捕まったんだって?』
ちょ。話伝わるのはやすぎだろ‼︎
さては、麗奈だな‼︎
兄が捕まっただなんて聞いたら
幻滅されちまうじゃねぇか。俺の株価が
さらに下落しちゃうわ。昨日の一件も
あるしよ。なんで一人世界恐慌起きてんの?
とりあえず返信しよう。
『あれは誤解だ。すべては麗奈のせいだ。あいつに仕組まれた巧妙な罠だったんだよ』
そうさ。全部麗奈が悪い。アイツ警察近くにいたの
気付いていやがったな。
なにが孕まされる‼︎ だよ。
てめぇの胸ごときなんとも思わねぇよ。
このまな板野郎‼︎
「アァ?」
ヒィィィ‼︎ なんだなんだ⁉︎ この寒気は⁉︎
アイツ何処かで聞いてたのか⁉︎
いや、そんなわけないよな⁉︎
あいつはすでに学校‼︎ だから今の寒気は
気のせいだ‼︎
『兄。犯人は皆否定する。でも認めちまえよ。そのほうが楽になるぜ? カツ丼食うか? むしろ食べたい』
なんで取り調べ室みたくなってんの。
自白強要はいけないですよ。実衣さんや。
つーか、お前がカツ丼食いたいとか言うなよ。
『話を戻そうぜ。なんでメールよこした? まさか俺が捕まったことを確認するためだけじゃないだろ? なんか用事あったか?』
もうめんどくさいので捕まったことは
綺麗さっぱりなかったことにしよう。
ついでに麗奈の存在もなかったことにしたいね。
『そうそう。忘れてた、forgetしてた。brotherにお願いがあった』
ノリがうぜぇ。
『なんだよ、My lovely sister』
うざいノリにはさらにうざいノリ。
これが一番。
『そこでlovelyとつけるあたりが捕まる原因だと思う。キモい。もう、留置場いろよ』
ひでぇな‼︎
『悪かったな。いいから要件言えや。さっさと言わねぇと納豆食わせるぞコラ』
『ヒェェェェェェェェエエエ(´Д` )』
ぷっ。なんか面白いのきた。
ちょっと笑っちまったよ。
顔文字か。なるほど。
俺は普段あまり使わないからどうやって
使えばいいのかよくわからんが面白そうだ。
普段使ってないが俺はこういうのセンスあるからな。
たぶんだけど。
まぁ、見てなって。顔文字ってのは
ただテキトーに使っていいわけじゃねぇ。
文章に合わせて的確な顔文字を選択しねぇと。
顔文字を舐めたら怪我するぜ?
さぁ刮目せよ。俺の顔文字センスを‼︎
『それじゃあそろそろ要件を
言ってもらおうか☆〜(ゝ。∂)』
『ォエ~( ̄┳ ̄|||)』
「そこまでか‼︎」
たしかに俺が顔文字とか使うのは珍しいが
吐きそうになるほどキモかった⁉︎
傷つくな〜。ショックだな。泣きたくなるな。
だが、めげねぇ‼︎ それが俺の人道だ‼︎
『☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆』
『兄やめてください。実衣が悪かったです。謝ります。頼むから顔文字とかやめてください。お願いします。ほんとごめんなさい』
「お前何もしてないだろ‼︎」
謝っちゃうくらい嫌なの⁉︎ 俺の顔文字‼︎
どんだけ気持ち悪がってるんだよ‼︎ ひでぇな‼︎
『そこまで言われたら傷つくわ。そんなにキモかった? 俺の顔文字。さすがにショックだわ』
『べつにキモいとかではない。そう。キモいわけじゃない。キモい、わけじゃない』
「キモいんじゃねぇか‼︎」
あまりのショックに思わずシャウトしちゃったよ‼︎
なんでそんなキモい連呼すんの?
ん? まだ、メールには続きがあった。どれどれ。
『普段兄は顔文字使わないから見慣れないだけ。
だからべつに気にしないで使ってくれて構わない。
問題ない。No problem』
シュワちゃんかよ。今のわからない人いたら
ターミ⚪︎ーターでも見てみろ。
しかしそうか。わかった。それならば遠慮しないで
顔文字を使わせてもらおう。行くぜ‼︎
『( ◉◞౪◟◉)』
五分たったが返事はない。
え? ちょ、スルーかよ‼︎
「くそ、なんだよ。わーたよ。俺にはまだ顔文字ってのは早かったみたいだ。否‼︎ 俺が悪いんじゃねぇ。顔文字が俺の時代についてこれなかったってことだな。ふっ。俺も罪な男だぜ」
「お母さん。あの人はなんで一人でドヤ顔で語っているの? 自分に酔っているの?」
「見るんじゃありません‼︎ あーゆう人は自意識過剰といって自分のことを客観的に見れない勘違い野郎なの‼︎ そんな人間とは目を合わせちゃいけません‼︎」
「うわー。救いようもないね。なんでそんなやつが生きてるんだろう? 気持ち悪いから目なんて合わせないよ‼︎ お母さん‼︎」
……………………………………………………。
と、とにかく、実衣の要件聞かないとな。
ハハハハハ。あぁあ。悲し。