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妹は筆談で会話する  作者: キズミ
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一ノ瀬実衣(いちのせみい)1

カー。カー。カー。カー。カー。カー。カー。カー。

うるせぇな。わかってんだよ。もう朝なんだろ。

鳥類ごときが俺を起こそうなんて生意気だぞ。

てめぇが鳴こうが関係ねぇ。すでに起きてたわ‼︎

足が攣ったんだよ‼︎ 寝ながらな‼︎ まじ痛かったわ‼︎

ほんとなんなんだろうな。目覚まし時計セットした

時間前に起きてしまった時の不愉快さ。

この気持ちをわかってくれる人は大勢いると

俺は思う。


カー。カー。カー。カー。カー。カー。カー。カー。カー。カー。カー。カー。カー。カー。カー。カー。

どんだけ鳴くんだよ‼︎ このカラス‼︎

何がお前をそこまで掻き立てるんだよ‼︎

カー。カー。カー。カー。カー。カー。カー。car。

最後発音いいな‼︎

もはや鳴き声通り越して車じゃねぇか‼︎

きっとこの辺に巣でもつくりやがったな?

ちくしょうめ。市役所に訴えてやる‼︎ あれ?

保健所か? どっちでもいいわ‼︎

カラスなんて焼き鳥にしてやるよ‼︎



俺の名前は一ノ瀬颯斗いちのせはやと

高校二年生だ。まぁ見てくれも学力も運動神経も

一般レベル。カラスが鳴いただけで

イライラしちゃうのが玉に瑕。

欠点はそれ以外にはひとつもないがな。

だが、逆に卓越した何かを持っているわけでもない。ようするに可もなく不可もなしってことかな。

しかし、それで困ったことも特にないのも事実。

普通が一番だな。なにせ、気楽だ。

変に何かを意識する必要もない。

才能のある奴はやる奴でいろいろ面倒も

あるだろう。もちろん、

才能が皆無なのもそれはそれで問題だろうが。


だが俺は才能のある奴と皆無な奴の中間地点に

いるので基本的になんでもそこそここなす。

あまり、目立つこともないがナンバーワンに

ならなくてもいいって言うじゃねぇか。

そうさ。

僕らはもともと特別なオンリーワンなのだから。

なんか、言ってて恥ずかしくなったな。


話を戻そうか。

ノーマルな俺だが、

たった一つ普通ではないことがある。

俺には妹がいる。それ自体はよくあることだが、

俺にとっての家族は実衣だけだ。

きっとこれが普通ではないところだろう。

もちろん家族の形はそれぞれであり千差万別だ。

それで差別されるような世の中ではない。

しかし、両親がいて子供がいる。

というのが家族の基本型なのだと俺は思う。

それと比べた場合俺の家族構成は

若干普通ではないかもしれない。

あくまで個人的意見だが。

しかしまぁ、家族が妹しかいないことについては

今となっては別段困っていることもない。

妹との生活はもはや俺にとって当たり前なのだ。

妹がいて当たり前。

あっれー。なんかさっき自分で

普通じゃないとか言わなかったー?

結局俺にとっては普通じゃーん。

何一人で勝手に論破しちゃってんの? 俺。

それはまぁいいとして。俺の妹の紹介でもしようか。


妹の名前は一ノ瀬実衣いちのせみい

美しい黒髪で長さは肩にかかるかかからないかくらいまで伸ばしている。

本当に綺麗な黒髪ショートなんだぜ?

サラサラで滑らかで、まさに清楚な美。

これぞ日本人。さらに肌が白いため白と黒の

コントラストが際立ち、肌も髪も美しく艶っぽい。

目は二重でくりっと大きい。

透き通るような黒く綺麗な瞳。まつ毛も長め。

めちゃくちゃ可愛らしい。

背は小さめでまさに女の子って感じ。

身長でいうと150㎝あるかないかくらいだろうか。

とにかく小柄だ。力を入れたらすぐに壊れちまいそうっていえば伝わるか?


そんな可愛らしい俺の妹は本来なら

中学二年生である。

なぜ、本来ならという表現をしたか。

まぁ色々事情があるのだが分かりやすく言おうか。

一言で言うと妹は引きこもりである。

可愛く言うとヒッキーである。どうよ。可愛いだろ? え? 別に? うん。ごめん。俺も気づいてたよ。

全然可愛くない。ハハッ‼︎ 僕ヒッキー‼︎ 夢の国へ(自宅)へようこそ‼︎

こんな夢の国嫌だな。行きたくないわ。


話を戻そうか。なぜ妹がヒッキーになったか。

それはウォルトさんがってこの人は

なんにも関係ねぇよ。そもそもヒッキーは

ネズミちゃうしね。

妹が引きこもりになった理由。

これには深い深い事情がある。

それを話すとものすごく長くなるので今はよそう。

めんどくさいとかそういうわけじゃないぞ?

ほんとだよ。信じろよ。

とにもかくにも実衣は俺のたった一人の家族である。これからも実衣を守っていく。シスコンかよ。

と思う人もいるだろう。それがなにか?

シスコンで何が悪い?

別に開き直っているわけではないぜ?

ただ単純に妹が大切なんだよ。

たとえ声が出せなくてもな。


そう。俺の妹はとある事情により声が出せない。

このとある事情も引きこもりに関係してくる。

俺たちにとってとっても重要なことなのだが

今その話はよそう。だって・・・・・・。


今、目の前にぐっすりと眠っている

妹がいるのだから。


別に寝込みを襲おうとしているわけではない。

断じてそれは違う。俺は妹を起こしにきたのだ。

一応俺は学校に通っているのでその前に妹を起こさねぇといけないんだよ。


ちなみに。俺の通っている安奔旦学園あんぽんたんがくえんは小中高と一貫校だ。

だから俺が通っているのは正確には

私立安奔旦学園高等部だな。

この学校名前は本気でふざけまくっているが

とっても素晴らしいんだぜ?

なんでも理事長の趣味でやってるような学校らしく

授業料などはすべて免除。

自分で買うのは教科書や制服など個人で使用するもののみ。あとはなにもかも負担してくれる。

私立なのに授業料免除とかマジ最高。

俺にとってそれは本当にありがたいことだ。

ってそんなことはどうでもいい。

今の俺にはやるべきことがある。

それは妹を起こすこと‼︎ にしても。


「ぐっすり眠ってやがるな」

今なら何をしても起きないんじゃね?

だからって襲ったりはしない。

さすがに変態鬼畜兄貴じゃないからな。

するなら悪戯だな。それじゃあなにをしようか。


「よし。おっぱいでも揉むか」


ベシ。

おい。今、コイツ蹴りいれてきたぞ?

なんだよ。狸寝入りかよ。

ベシ。ベシ。ベシ。ベシ。ベシ。ベシ。ベシ。ベシ。

痛っ。痛っ。痛っ。一発一発は軽くてたいしたことはないが何度も同じところを蹴られたらさすがにな。


「おい止めろ。そうやって同じところばっか蹴ってんじゃねぇ。ダメージが蓄積されていくだろうが」

ベシ。ベシ。ベシ。ベシ。ベシ。ベシ。ベシ。ベシ。

いい加減やめてくれないかな?

べつにすげぇ痛いわけじゃねぇが、なんだか不快だ。ほんとそろそろいい加減に⁉︎


「おっふ‼︎」


ヤベェ‼︎ ヤベェ‼︎ ヤベェェェェエエ‼︎ そこは反則だろ‼︎ 痛いわ‼︎ はやく跳ねないと‼︎

男なら俺がどこを蹴られたかわかるだろう。そうだ。一撃でもあそこにくらってしまえばどんなに強靭な肉体を持っていようが関係ない。

悶絶してしまう。べつに俺は強靭な肉体なんてもってないけどな。くそ。やっと痛みが引いてきた。

跳ねるのはやっぱ正解だな。


「テメェ‼︎ どこ蹴ってやがる‼︎」

『オティンティン』

「女の子がオティンティンなんて言葉いうんじゃねぇ‼︎」

『別に言ってはない』

「確かに言ってはいないが。それでもだめだっての‼︎」

『じゃあ金玉』

「余計に生々しいわ‼︎」

『じゃあ何⁉︎ 睾丸⁉︎』

「お前みたいな女の子が睾丸なんて言うの初めて聞いたわ‼︎」

つーかじゃあ何⁉︎ ってなんで逆ギレしてんだよ‼︎

『だから別に言ってはいない』

普通に睾丸と書くお前の頭は軽くイっちゃってると思うけどな。


ちなみに妹『いってはいない』というのは声には出していないということだ。

先ほども言ったが妹はとある事情により

声を出すことができない。つまり、話せなくなった。それでは生活に支障をきたすので妹はメモ帳に

文字を書いて俺はそれを見て(聞いて)

会話をしているのだ。

ようするに筆談である。俺たちはこうやって

コミュニケーションをとっている。

って今はそんなことより‼︎


「お前‼︎ なんであんなところ蹴りやがった⁉︎ つーかなにをそんなに怒ってるわけ?」


ホントにコイツは寝起きが悪い。


『バカ兄が私のおっぱいを揉みしだくなんて言うから』

「そこまでは言ってねぇよ‼︎」

『実衣のDカップをよくも揉もうとしたな』


いいじゃんか。未遂に終わったんだし。

まぁ、未遂は今までの含めると74回目くらいだけど。ほんとコイツガードが固い。いや待て。D?

結構あるよな。たしかDカップの基準は

トップとアンダーの差が17.5㎝。

つまりトップは最低でも80は確実超えており、

アンダーにいたっても70は余裕で超えていると。

ウヒョ。

前からあるなとは思っていたが

最近また成長しているんじゃないか?


『兄。鼻の下伸ばしすぎ。妹のおっぱいに欲情するなんてどこの変態鬼畜兄だ。エロゲ主人公か』

「別に欲情なんてしてねぇわ‼︎ ちょっと触りたくなっただけだ‼︎ もういいから早く起きて顔洗え。朝飯食うぞ」


やれやれだ。まったく。つーか、

ほんと実衣は字を書くのが早いな。

今もまた、サラサラと美しい字を書いている。

まさに達筆。書写検定受けろよ。マジ。


『今日の朝ごはんは何?』

「米」

『主食のみの朝ごはんを平然とだすなんて。マジ鬼畜っす。パナいっす』

お前誰だよ。何キャラだよ。

「冗談だっての。味噌汁とテキトーサラダ。あとハムエッグあるぞ」

『主食が米なのにハムエッグなんてマジ鬼畜っす。パナいっす』

だから誰だよ。なんでそんな満足そうに言うの?

そのキャラ気に入ったの?

「卵焼きとか以外と難しくてめんどくさいんだよ。朝は特にな。我慢しろ」

『別にそれくらい気にしない。強いて言うなら実衣は朝はパン派』


知ってるわ。だけどな。たまには米食べたいんだよ。朝から。俺は米派だからな。

朝から納豆かけて米をがっつり食べたいだよ。


「わりぃな。今日は米の気分だったんだよ。嫌ならパン用意するけどよ」

『別に問題ない。兄が米食べるなら実衣もそれを食べるでも』

「なんだよ」

『納豆だけは勘弁。なにあれ? 本当に食べ物? あり得ない。あれをムシャムシャ食べる人達ってホントすごい。納豆ってなんであんなに臭いの? 腐ってるの? あれを食して口はくさくならないの? それに納豆に入っているあの黄色いのって何? あんな得体のしれない黄色い物質を納豆に混ぜて食べるなんてもはやすごいという次元を通り越して異常。意味がわからない 』

「そんな長文をこの短時間で書き上げるお前の方が異常だよ‼︎」


どうなってんだ⁉︎ その手‼︎ 速すぎて手がダブって見えたぞ‼︎ 超人的なスピードだ。効果音にドドドド。

とかつけてもまったく違和感ねぇぞ。

それとな。妹よ。納豆は大枠でくくれば

腐ってるのかもしれないが

あれは納豆菌により発酵させた食べ物だ。

そして、あの黄色い物質というのは辛子だ。

それくらい知っとけ。


『字を早く書くくらい朝飯前。朝飯前だけに』

「ドヤ顔しなくていいわ。全然うまかねぇよ。いいからとっとと着替えて下に降りてこいよ?」

『わかった』

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