プロローグ
『兄〜』
「なんだ。妹」
『実衣おなかすいた』
オイコラ。ほんの一時間前に夜飯食ったばかり
だろうが。食欲旺盛の男子高校生ですか。ったく。
「却下だな」
『実衣はまだ、おなかすいたとしか言ってない』
「どうせ何か作れとかいうんだろ? ざけんな。夜飯食ったばかりだろ。太るぞ」
『フフン。私には胃が四つあるから大丈夫』
フフン。じゃねぇよ。牛かよ。はぁ‥‥‥。
でもまぁコイツがそういうなら仕方ねぇよな。
「わーたよ。太ってもしらねぇぞ?」
ほんと俺は妹に甘いな。
『心配ご無用。実衣は太りにくいのだ』
「あっそ。で? 何食べたいわけ?」
『ティキンラーメン』
ティキンって。チキンでいいだろ。なんでわざわざ
発音良く言うわけ? あぁ。コイツ筆談だから
発音もクソもないか。なんか余計にムカつくわ。
「ティキンラーメンな? 了解した。今作るからまってろ」
『兄がティキンとか言うとすごくムカつく。何これ気持ち悪い。イライラがとまらない』
「黙れ。妹」
これが俺、一ノ瀬颯斗と妹、一ノ瀬実衣の甘く切ないラブストーリー。
『おいバカ兄。誰に対してナレーション入れてるか知らないけどキモい。なにがラブストーリー? バカ?』
「なんでお前俺の心の声聞こえるわけ? 超能力?」
『なわけ。声に出ていたからに決まってる』
「ノーン」
マジか。声に出てたのか。やだ。恥ずかしい‼︎
『見てよこれ。あまりの気持ち悪さに鳥皮が立った。さすがにさっきのはありえない。もう、死んじゃえよ』
「ひでぇ‼︎ いや待て。妹。え? 鳥皮? お前焼き鳥なの?」
『うっかりうっかり。鳥肌と間違えた。テヘペロ(´・Д・)』
「全然ペロッてないな」
鳥皮と鳥肌間違えるってどんなミスだよ。
これは俺、一ノ瀬颯斗と一ノ瀬実衣の平凡な日常を描く物語である。
『過度な期待はしないように』
「どこぞの三姉妹か‼︎」
『ばかやろう‼︎』
「オメェがだよ‼︎」