ポイントカード
いつも利用しているコンビニへいく。
「ポイントカードはおもちですか?」
「いいえ」
「お作りしますか?」
「いいえ」
日課になったやり取りだ。
毎日断りつづけるのも面倒になり、どうせなので作ってみることにした。
作ると答え、渡された紙を記入し、本日清算分のポイントがはいったカードと交換する。
じつに簡単だった。
コンビニを出てすぐにポイントカードをふたつに割ってゴミ箱に捨てた。
次の日もコンビニへいく。
「ポイントカードはおもちですか?」
「いいえ」
「え?……お作りしますか?」
「はい」
そして捨てる。
日課になったやり取りだ。
登録申し込み用紙の必要事項記入欄にぴったりと合う判子を作っている。
店員が紙を出した瞬間、その判子を押して突き返す。
店員は、気にするようすもなく紙を受け取ると新しいポイントカードをつけておつりを返してくる。
その後も、清算のたびに『作る』と答えつづけた。
無料で発行してくれるのでお金はいっさいかからない。
出社と退社のたびによるコンビニなので、一年を待たずして四百枚近いポイントカードを作ったと思う。
ある日、ソファーで本を読んでいると玄関のチャイムが鳴った。
めったにヒトの来ない時間の来訪者に戸惑いつつも玄関へ向かう。
のぞき穴から外を見るがダレもいない。
「どちらさまですか?」
「あなたに発行していただいたポイントカードでございます」
「……何枚目の?」
「三百五枚目です」
なるほど、そいつはなかなか縁起がいい。
玄関のドアを開くとふたつに割れたポイントカードが立っていた。
立ち話もなんだから、と家にあがるように勧めたが丁重に断られてしまった。
玄関先でしばらく世間話をしていたが、適当なところで話を切り上げ帰っていった。
いったい彼はなにしにきたのだろう。