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腹ぺこ聖女

作者: belgdol

 ある時、ある国に、いつもお腹を空かせている聖女様が居ました。

聖女様は癒しの力を持っていて、人を癒すたびに寄進という形で食事を貰うという生活をしていて、毎日沢山の人を癒して、沢山の食事を食べていたのにいつもお腹を空かせていました。

そんなみたされない日々の中で聖女様は昔を思い出します。

昔はちゃんとお腹一杯になっていたような気がします。

でもなぜか今は食べても食べてもちっともお腹が一杯にならないのです。

どうしてだろう、そう深く考える暇も無く癒して食べてを繰り返す日々。

そんな彼女にある日転機が訪れます。

それは遠い異国からやってきた、みすぼらしい格好をした親子でした。

子供は生まれた時から手足が無くて、このままでは両親である自分達が死んだら生きていけなくなってしまいます、どうかお慈悲を。

そういって聖女様に癒しを乞う父親と母親に、聖女様はいつものように癒しと施しの力を使い子供に手足を授けました。

母親は大いに感激してありがとうございますと何度も頭を下げます。

父親は涙ながらに子供を強く抱きしめます。

聖女様はそんな姿にも上の空、ぼんやりとお腹が空いたなぁと思っていました。

ところが、母親が申し訳なさそうに差し出した豆と雑穀のおかゆを食べると目を丸くしました。

なんと一口でなんともいえない満腹感が感じられるではないですか。

思わずこの料理は何?と聞く聖女様。

それをとがめられたと思ったのか、本当に申し訳なさそうに頭を下げながら、「貧しい旅費の中から用意できる精一杯の料理でございます。どうかお許しください」と言います。

聖女様はそうではなく、どうやって私を満腹にしたの?何が入っていたのと問います。

母親は戸惑いながらただの豆と雑穀のおかゆでございます、と繰り返すばかり。

それ以上は何も解りそうにないので、とりあえずその親子を返してから聖女様は考えます。

なぜあんな粗末な料理がお腹を一杯にしたのか?

豪華さだけならあれよりもっと豪華な料理を捧げられた事があります。満腹にはなりませんでしたが。

量。お皿一杯分で特に多いわけではありませんでした。

そしてどれだけ考えてもわからないので誰かわかる人は居ないかと考えてようやく満腹でまともに動き出した頭で思いつきました。

神様にお祈りして教えてもらえばいいのです。

そう思いつくとその後の癒しも手早く終えて、神様にお祈りをしました。

神様、私が満腹になるにはどうしたらいいのですか?と。

すると聖女様に神様は応えてくれました。

神様いわく、満腹度は民からの貴女への感謝の気持ちである。

食べ物の量に関係なく貴女に深い感謝をささげ精一杯の一品を作った者の料理はあなたのお腹をくちくするでしょう、と。

それを聞いた聖女様は絶望しました。

なぜって、お腹が一杯にならない普段の癒しを求める人々は自分に感謝などしていないということを知ってしまったからです。

聖女様は泣きました。

そして神様に、私はこれから先も飢えながら人を癒さなければならないのですか、私はそれほどの罪を犯しましたか、と訴えました。

神様は泣く聖女様に優しく言いました。

「旅に出なさい、そして旅先で困っている人々を癒し、食事を作ってもらうのです。人はいつもそこにある恵みには慣れて、いつしかそのありがたみを忘れてしまいますが、不意に訪れた幸運にはひどく感謝するから、きっと貴女を満腹にしてくれるでしょう。」

そういわれた聖女様は旅に出ることに決めました。

そうと決めれば聖女様には神様の加護があります。

瞬く間に旅の支度を整えて神殿を出て行ってしまいました。

そして明日の癒しを待つ人々の前に現れこういったのです。

「貴方の精一杯の一食を私にください。そうすれば貴方達の病怪我は瞬く間に癒えるでしょう。これが終わったら私は旅に出ます。今、この地で行う最後になるかも知れない癒しです。さぁ癒しを求める方は料理の準備を!」

こうして自らを求めて来た人々を全て癒してから聖女様は旅立ちました。

そして、後年人を癒して食事を貰った後ぽんぽんとお腹をたたく姿からこう呼ばれるようになったのです。

満腹聖女と。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです。聖女さまの満腹と飢餓感の話には、納得させられました。この話は現実世界にも、形を変えて当てはまりそうですよね……。考えさせられました。 [一言] ラストシーンの満腹の聖女さま可愛…
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