28 (無視して次に進んでください)
読んでいただきありがとうございます。
先日、28をアップしたときに途中までしかアップしていませんでした。
オリジナルの28の方にも付けたしましたので、こちらは無視して次に進んでください。
削除しようとしたのですが、削除ができないのでこのままになっています。
ご迷惑をおかけいたします。
*************28の後半と同じものをのせているので、無視して次に進んでください。
丘の上から見た街は美しかった。
前に空たちと訊ねたときはこの景色を見て清々しい気分になったのに、同じ風景がどんよりとして見えるのは天気のせいだけではないだろう。隼人の家の前でサキは立ちすくんでいた。
勢い余ってここまで来たものの、何だか急に馬鹿らしく思えてきた。なぜ、少し隠し事をしただけで、隼人が空の誘拐に関わっているなんてことになるのだろう。確かに隼人の家ならば家の構造上、玄関を通らなくても庭から出入りできる。あの様子では両親は一階に下りることはなさそうだ。
確かめてみよう、そうすればすっきりする。サキは腹を決めて玄関のベルを押した。
すぐに、小さいころに何度か会った隼人の母親がドアを開けた。
「もしかして、サキちゃん?」隼人の母親はサキのことがすぐにわかった。「懐かしいわ。すっかり綺麗になって」
隼人は留守だったので、サキはとっさに嘘をつく。
「隼人君に貸したノートが急に必要になって取りにきました。机の上にあると言っていたので持ってきていただけませんか?」
隼人の母親は困った顔をした。息子の留守に部屋に勝手に入りたくないようだ。
「ごめんなさいね、あの子が暴れると手がつけられなくてね」
暴れる? あの隼人が?
驚きながらも、サキは隼人の部屋のへこんだ壁を思い出した。
隼人の母親はろくに隼人と顔も会わせていないようだ。愛情がないわけではない。接し方がわからないのだろう。
自分がどんなに息子に期待して尽くしてきたか、隼人の母親はサキに長々と語った。
昔はあれこれと口うるさい両親だったのを覚えている。子どもを支配して力で押さえつけるようなところがあり、息子が思い通りにいかなくなると、途端に臭いものに蓋をするように構わなくなった。隼人は学校だけでなく家でも支配されていたのだ。サキは隼人の孤独を想い、その怒りに共感した。
しばらく話を聞いた後、サキは母親に断って玄関の脇の庭へ続く階段を下りた。
ガラスの窓はカーテンが閉まっていて中の様子を知ることが出来ない。サキは少しの間、庭から隼人の部屋の様子をうかがっていた。確かに子どもを連れ込み易い作りだけれど、騒がれれば両親に気づかれる。第一、防音の部屋ではない。
考え過ぎだと思うと、急に可笑しくなった。
カーテンの隙間から中が見えないかとガラスに近寄ってみると、急に窓が開いて隼人が目の前に姿を現した。隼人は窓を開けて無表情でいらっしゃいと声をかける。
「今、帰ってきたんだ。どうぞ、あがって」
サキは警戒しながら隼人の部屋に入った。前に来たときと同じように部屋は蒸し暑い。
部屋の中のどこにも子どもを監禁しておけるところはない。サキは胸を撫で下ろした。




