第8話
「あと、3秒で席につかなくちゃ、遅刻にするぞ。」と、息をきらしながら、教室のドアをガラッと開けた2人に、先生は言った。2人は、急いで席まで行き慌てて着席すると、先生は、
「5秒かかったが、まぁセーフにしてやろう。」と言いニカッと笑った。この人物は、ミーとチェドの担任であり、歴史の教師である。彼の名は、サンといい、みんなから、とても好かれていて、ミーとチェドもとても信頼していた。
ソロンには、村ごとに、1つ学校があり、6歳から15歳までが、通っている。そして学年というものはなく、魔力とパートナーの強さによってクラス分けされているのである。そのためミーとチェドのクラスにも、6歳の子がいたり、15歳の子がいたりする。しかし、7歳の子もミーやチェドと同じように、歴史や数学などを勉強するわけではない。同じ時間を過ごすのは、魔法授業とお昼の時間だけなのだ。だが、ミーとチェドは、みんなそろって授業を受ける時間、つまり魔法の授業の時間が大嫌いだった。理由は、みんながそろうからではない。その授業の教師が、嫌いなのだ。そして、最悪なことに今日の1限目の授業は、魔法授業だった。
魔法授業の教師、イガは、教室に入ってくるなり、
「話すのをやめろ。魔法とは、神聖なものであり、本来ならお前たちのような薄汚いガキ共が、使う事さえ許されないものなのだ。」と一括した。(イガとは、とても強い魔法使いだが、それに反比例するように、性格が悪いとみんな思っていた。逆にサンは、とても弱そうな魔法使いだが、性格はとても良いと思われていた。)そして、自分のパートナーを呼び出し、何か命ずると、妖精は、教室の中を監視するように、1人づつの顔をのぞきこみながら、ゆっくりと、飛びまわり始めた。ミーは、イガのパートナーの事が、怖かった。他人のパートナーのレベルと能力を、知ることは、その相手が教えてくれない限り不可能なため、この妖精のレベルがいくつなのか、知らなかったが、ミーは、絶対に自分のパートナーよりもレベルが上だと思っていた。自分のパートナーより、レベルが上の妖精に、会うと、人は、恐怖を覚えるのだ。そのため、もし自分のパートナーより、上の妖精の魔法を使いたいのなら、恐怖に打ち勝ち、その妖精を従わせなければならない。ミーは、何度も、恐怖を乗り越えてきたが、これから先この妖精の能力を使いたくなったとしても、多分、この妖精を、従わせる事など、出来ないだろうとも思っていた。そして、イガの妖精が、ミーの顔の前にきた。そして、ミーをカマキリのような目でのぞき込むと、鼻で笑い飛び去っていった。時間に換算すれば、ほんの数秒だっただろうが、ミーにとっては、とても長かった。そして、クラス中の人間を確認すると、イガの元へ帰り何か呟き、消えた。それから、イガは、妖精の領域の話をし、そこに行った者は、生きては帰れないとみんなに何回も、言った。この話は、以前にも聞いている、イガのお気に入りの話なのだ。そのため、ミーの意識は、今日の計画の事にとんだ。この後の音楽の授業も、歴史の授業もすべて計画の事だけを考えて過ごしたのだった。しかし、パートナーと約束した通り、お昼に呼び出す事だけは、忘れなかった。そんなミーの様子を、見ててチェドは、不安を、抱き、昨日から何か変だ。と思ったが、何かあったのなら、話してくるだろう。と思い聞くのを、やめた。
そして、いよいよ放課後になった。チェドには、
「サナと遊ぶから、先に帰ってて。」と言って教室で別れた。そしてサナのクラスに行くように、チェドに思わせると、さっそく校長室へ向かった。本当は、今日計画を、練っている内に、何度も、チェドに助けてもらおう。と考えたが、もし計画が、失敗した時チェドにまで、迷惑をかけてしまう。と思い、諦めたのだ。そして、校長室のそばまで来ると、ミーは、計画の第一歩を踏み切った。まずパートナーを通し透明魔法の妖精を、呼び出した。その妖精は、レベル1の内気な、とても可愛い女の子であり、ミーのパートナーと、とても仲が良い妖精の1人である。さっそくミーは、自分を透明にしてもらった。そしてゆっくりと校長室に近寄ると、ドアをそっと開け、中に誰もいない事を確かめた。透明魔法の妖精と、ミーのパートナーの妖精は、ミーの後を興味しんしんの顔をし、静かについてきた。




