第6話
「えぇ、あなたが、断らなければ、多分あなたを、世話人にコペおじいさんは、選ぶと思うわ。」
「でもっ、私まだ学校に行ってるのよ?」
「そうだけれど、あなたは、レベル4の妖精を、パートナーに持つ魔法使いだし、王様の護衛魔法使いにも、指名されたじゃない。」
「それって関係あるの?」
「あるわよ。だって護衛魔法使いって事は、仕事に就いている。って事じゃない。それも、身分が高く普通の人では、就けない仕事にね。」とサナが言った時、コペが、家の中から出て来た。そして、ミーを、見つけ微笑むと近づいてきた。
「やぁ、おはよう。もう聞いたと思うが、世話人候補にミーの名前が挙がったんじゃ。詳しい事を説明したいのじゃが、ついて来てくれるかの?」と、言った。
「おはよう。コペおじいちゃん、もちろんついて行くわ。」と、ミーも笑顔で答えた。
コペとは、ソロンの王であるザガートの友であり護衛魔法使いの長でもある。護衛魔法使いとは、王の座を狙う者が、戦いを起こした時、王を守り戦う仕事である。その他にも、ソロンの人々の誰かが、禁じられた魔法を使った場合など、ソロンのどこであってもすぐに駆けつけ犯人を見つけ罰するのも護衛魔法使いの仕事である。もちろん誰でも就ける仕事ではない。パートナーのレベルが3以上である事が絶対条件なのだ。
とても身分の高い仕事であるため、護衛魔法使いの人と、普通の身分の人は、話す事さえ出来ない。ましてや護衛魔法使いの長であるコペと友達のように話すという事は、あっては、ならないような事なのだ。しかしこの村の人々にとっては、ごく普通の事である。なぜかというと、コペがこの村にやって来た者の世話人を決める係りなのだ。そのためみんなコペに親近感があり、コペ自身も、
「わしに頭を下げる必要などない、普通に接してくれ。」と言ったので、今ではみんな友達のようにコペに話しかける。そして先月ミーとチェドが2人そろって護衛魔法使いに指名された。2人は、護衛魔法使いに指名される事は、名誉な事であると、わかっていたのですぐに承諾した。しかしミーとチェドが、護衛魔法使いだと、正式に発表されてから、友達や周りの人は、急に態度を変え2人に頭を下げあいさつをしたり、話し掛けてこなくなった。そのことがとても嫌だった2人は、
「今までと同じようにして。護衛魔法使いになったからって態度を変えないで。」とみんなにお願いをし、それを聞いたみんなは、嬉しそうに笑うと前と同じように接してくれるようになったのだ。
コペの後をついて行き、家の中に入ると、噂の男の子は、イスに座りケーキを食べていた。ミーが入ってきた事に気づいた男の子は、ケーキで汚した顔を、くちゃくちゃにして笑い、「お姉ちゃんにそっくり!」と大きな声で、言った。ミーは、意味がわからず、コペの方を向き、助けを求めたが、コペもわからないというように首を傾げた。
「お姉ちゃんって誰?」と男の子の顔をハンカチで拭きながら尋ねた。男の子は、キョトッとした顔をすると、
「僕のお姉ちゃんだよ。アンっていうんだ。とっても美人でモテモテなんだよ。」と笑って答えた。
「あなたのお姉ちゃん?あぁ、今まで世話をしてくれてた人の事ね。」
「世話?お姉ちゃんは、僕の家族だよ。」
「家族?何それ?」ミーはとても混乱してしまい、またコペの方を見たが、どうやらコペも同じだったらしい。
「家族って一緒に住んでる人の事だよ。僕4人家族なんだ。」
「一緒に住んでる人がいるの?」驚いたミーは、大きな声で聞いた。男の子もその声に驚いたらしく、体をビクッとさせた。それに気づいたミーは、
「ごめんね。ちょっとびっくりしちゃって。」と謝った。
「一緒に住んでるよ。家族なんだもん。」と、男の子は、何でびっくりするの?と思いながらも答えた。
「よくわからないけれど、結婚してるって事?」
「僕まだ4歳になったばっかりだもん、結婚なんかしてないよ。結婚してるのは、ママとパパ。お姉ちゃんにだってママいるでしょ?」
「ママ?いないわ。」世話人のことかしら?とも思ったが、なんとなく違う気がしたので言うのをやめた。
「いないの?じゃあ、お姉ちゃんどうやって生まれたの?!」ミーの言葉に男の子は、心底驚いたようだ。
「生まれる?!私は、人間よ。動物じゃないわ。聖なる木から命を授かったの聖なる木から命を授かったのよ。」ミーも男の子の言葉に、心底驚いた。
「人間だって動物と同じなんだよ。女の人と、男の人が愛しあうと赤ちゃんができるんだ。ママが教えてくれたもん。お姉ちゃんにだって、ちゃんとママとパパがいて、愛し合ったから生まれてきたんだよ。木が命をくれるわけがないよ。だったら体は、何からもらったの?」と、男の子が、なにげなく言ったこの言葉が、のちにコペとミーの人生を大きく変える言葉になるとは、誰も気づいてはいなかった。そしてチェドの人生が、変わるかどうかは、ミーがこの事を話すかどうかによって変わってくるという事は、言うまでもないだろう・・・。そして、もちろん昨日聞いた話を、いつチェドに教えるのか、という事もとても重要なのである。




