第35話
顔のない聖なる木が笑っても普通ならわからないが、この時2人は聖なる木が微笑んでいるように見えた。そして、その優しい表情の後ろから小さな光が煌いたのを見た。その光が何なのかミーとチェドには、わからなかったが、と虚ろ魔法意外の妖精たちはすぐにわかったようである。チョコとケーキ、パフェ、は口をそろえ
「クッキー。」と叫んだ。その言葉を聞きようやくその光が妖精であり、クッキーである事をミーとチェドは気づいた。そして、聖なる木にチェドは
「クッキーを石から戻してくれてありがとう。」と言いすでにクッキーのもとへ走っていってしまったミーを追いかけた。聖なる木はクッキーに話し掛けた。
「ごめんなさい。あなたを石にしてしまって。あなたは何も悪いことをしていないのに。あなたは人間のパートナーとなり幸せにいろいろな事を経験してください。」クッキーはミーやチェドとはしゃぐのをやめ聖なる木の声に耳をかたむけていた。ミーたちには2人が何を話しているのかわからなかったが、クッキーの表情を幸せそうな表情を見れば、大体察しがついた。クッキーは
「本当は優しい声をしていらっしゃるのですね。私に使者を辞めるように言われた事は私が湖の水を飲んでしまったから、そして石になったのは私が約束を破ったから、全て原因は私にあるのです。何も謝る理由などありません。これからはずっとその優しい声でいてください。」と答えた。そして、クッキーはミーたちに
「ありがとう。」と美しい笑顔で言った。ミーたちは微笑みを返しうなずいた。ミーは
「クッキーも帰ってきたし、そろそろソロンに戻らなくちゃ。時間がもうないわ。」と言った。チェドは目を凝らし空間の穴を見ると確かに小さくなっているのを確認した。そして、
「じゃあ、みんな帰ろう。」と一言みんなに言い、自分が先頭となり空間へと向かった。妖精たちもクッキーの周りを飛び回りチェドについて行った。最後に残ったのは、クッキーと面識がなく輪に入っていけない虚ろ魔法の妖精とミーだった。ミーはどうしても聖なる木に聞きたい事があったのである。
「ねぇ、何故また闇の現を自分の中に取り入れたの?」と聖なる木をまっすぐ見つめ尋ねた。聖なる木は静かな落ち着いた声で
「私から闇の現を取り除くと、私の心から完璧に欲望や嫉妬がなくなるのです。そうなった私は生きていけない。あなた方が最初にみた私には葉がなく気味の悪い木だったでしょう?それは欲望などが私の感情からなくなり、私は生きている楽しさをなくしたからです。欲をもたない人間などいないでしょう?私も一緒です。そういった感情をなくすのではなく抑えて生きていくのが、心を持った命ある者なのです。欲をなくした者は生きた感覚を味わえないのです。」と答えた。ミーは、聖なる木の言っている意味がわからなかった。
「よくわからないわ。」と首をかしげ言うと
「そのうちわかるようになるでしょう。」と優しい声で答えた。その時虚ろ魔法の妖精が
「ミー、早く行かないとあなた取り残されるわよ。」とミーに話し掛けてきたので、ミーは聖なる木に
「じゃあ、使者たちにもよろしく。」といいチェドのもとへと走った。
その頃コペは、
「彼はソロンで自分の居場所を見つけられなかった。だからよけいに記憶を大切にしたのだろう。」と王の問いたサンについての質問を答え終わったときだった。ちょうど、その時、空間から、チェドの声が聞こえ、空間の穴からチェドの姿が現れた。そして次々に妖精たちが現れ最後にミーがクッキーと共に王の間へと戻ってきたのであった。ザガート王は、暖かい笑い声で、チャじいは
「よく戻られた。」という言葉で、ミーたちを迎えた。そしてコペはミーとチェドに駆け寄り両腕を2人に回し優しく抱きしめ
「よくやった。クッキーも連れ戻したのじゃな。お前さんたちはわしの誇りだ。」と言ったのだった。
それから、ザガート王はソロンの人々に、今回の出来事を全て嘘偽りなく語った。放しを聞くため宮殿の前に集まった人々の中には、イガの姿、そしてカールの姿もあった。ミーとチェドは、イガと言葉を交わしていなかったが、その時見たイガの表情は何かが昔とは違っていたように2人の目には写ったのであった。カールは相変わらずのようだった。カールは何も罪に問われなかったため、今でも校長職についている。王の語った話しの中にはカールの名もあったが、カールは、それを恥じとは受け取らなかったようだ。ソロンの人々の反応はさまざまだった。自分がソロンの人間ではなく地球から連れてこられたという事に関し、怒る者もいれば、もうどうでもいいと言う者もいた。しかしそんな人々の意見が、まとまった事柄もあった。それは自分の家族が殺された、という事についてである。ソロンの人々の意見は、
「家族というものが、自分を育ててくれた人のことを言うのなら、たとえ血のつながりがなくてもそれは、自分を育ててくれた世話人だと思う。だから、家族が殺されたと言われても怒りを覚える事はない。」というものだった。そう思える者はサンとは違い、ここソロンという世界に自分の居場所を見つけられた者であろう。サンは、偽りの居場所を持っていた。それは記憶の中の家族という存在だった。その偽りを本物にしようとしたのが、人間の本質である欲望を隠す事なく、さらけだしていたドリスというもう1人のサンであったのだろう。ドリスは全ての人間の心にいる。もしドリスがサンのように、もう1つの人格となり、あらわになったのなら、それは自分の居場所をもたず、さまよう人である。ミーの幸せの片割れは、チョコであり・・・・・。チェドの幸せの片割れは、ケーキであり・・・・・。コペの幸せの片割れは、博士であり・・・・・。みんな幸せの片割れを探す。それは真実の幸せでなければならない。偽りが真実を語るのは、しょせん偽りで終わるのだから・・・・。




