第2話
ミーとチェドが歩いている道の左側には、温度計と呼ばれる木が葉っぱを真っ赤にして30度以上と教えている。
空では同じ色をした時計が飛んでいる。
「暑い!!」と、ミーがピンクのハンカチで汗をふきながら叫んだ。
「最後に対応魔法をかけたのはいつ?」チェドが呆れたように聞くと、
「朝起きた時・・・。」と、ミーは顔をりんごのように赤くし下を向いて答えた。
「まったく。ミー、今何時だかわかってる?!もう夕方だよ?!そんなに対応魔法の妖精をほっとけば暴走するに決まってるだろ。」
「わかってるわよ。だからお昼に調節しようと思ってたのに、せん・・・」
「うん。知ってるよ。先生に呼ばれたんだって?で、かける時間がなくなった。」
「そう。そこまで知ってるのならそんなに怒らなくてもいいじゃない。」と、ミーがすねて言うと、
「怒ってはいないよ。ただ対応魔法の妖精は温度を司る妖精ってだけあって気分も変わりやすいからね。あまり時間を空けないでかまってあげた方がいいって事を言いたかっただけだよ。」そう言ってチェドは笑いミーに今やるよう促した。
「わかったわ。」と、ミーは観念し小さくため息をつくと霧がかかったようなやわらかい声で
「対応魔法の妖精さん。聞こえたら出てきて頂戴。」と、ささやいた。
すると、ミーの回りの空気がざわめき、ヒュッと小さな音をたてて半透明な手のひらサイズの男の子が笑いながらミーの目の前に現れた。
パタパタと綺麗な緑色の羽をはばたかせ「ははっ。汗かいちゃってどうしたの?」と、いたずらっぽく首をかしげミーに尋ねた。
「もうっ。私を囲んでいる魔法の壁の中の温度を壁の外と同じ温度にしたでしょ?!外は30度以上なのよ?お願いだからすぐ快適な温度に戻して。」
「ふんっ。ずっと呼び出してくれなかったミーが悪いんだろ。チェドはちゃんと呼んでくれたのに。お昼にパートナー通してお願いしてきたもん。」と、小さな男の子は拗ねたように怒った。
「いろいろあって忘れてたのよ。」
「忘れてたの?!」と、妖精はショックで羽を動かすのをやめてしまい、ヒラヒラと地面に向かって落ちていった。
あわててミーが手で受け止め
「ごめんね。でもこれからは何があっても忘れないで呼ぶから機嫌直して。」と、優しく見えるように精一杯努力し謝る。
「ふんっ。約束だよ。やぶったらミーにゆで卵と同じ気持ちを体験させてあげるからね。」
「了解。約束するわ。だから戻して。」納得した妖精は、にかっと笑うと、フッと息をミーの回りを囲む透明の壁に吹きかけた。
そして「絶対だよ。」と、一言いうとまたヒュッと音をたて消えた。
「はぁ。涼しくなった。」ミーが嬉しそうに微笑む。
「そう。じゃあ急いで帰ろう。僕まだ研究レポート書いてないんだ。明日は提出しないと・・・。で、ミーのパートナーのあの妖精、地面に落ちそうになるの何回目だっけ?」と、チェドは笑った。
「ハリネズミの毛の数より多いんじゃない?」と答え、ミーも笑った。
ミーとチェドはいろいろな事を一緒に体験してきた友達であり大切な仲間でもあった。ミーは12歳で、ちょっとなまけるクセがあるがとても動物が好きで、パートナーを大切にする優しい子だ。チェドはミーより1歳年上でとても頭のいい責任感の強い子であり、ミーと同じでとてもパートナーを大切にしている。
ミーの家が見えて来た頃「ニャオーニャオー・・・」と、猫が鳴くのが聞こえた。どうやらミーの家のすぐ前にたっているクルミの木から聞こえてくるらしい。
急いで駆け寄ると、哀れにも今にも折れそうな枝に必死にうずくまって助けを求めている猫はチェドの家の隣の洞窟に住んでいる猫、シャルルだった。
「また、降りれなくなったんだわ。」ミーが心配そうにシャルルを見てつぶやいた。
「シャルル。今降ろしてあげるからそこから一歩も動かないで待ってて。ミー、もう暗いし僕一人でできるから家に入っていいよ。」
「嫌よ。シャルルがちゃんと地面に足をつけるまで見てる。」
「わかった。じゃあ、ついでに僕の荷物持ってて。」
チェドはそう言うとミーに、本が3冊入ったリュックを預けた。ミーはうなずきリュックを受け取り
「集中してやるのよ。」と、真剣な顔でチェドに声をかけた。
チェドは"こりゃ、まいったよ。本気で心配してるみたいだ。そりゃこの前はあと少しって所で別の事に気をとられて落ちそうになったけれど、あれはミーが下で青虫に驚いて悲鳴をあげたからじゃないか。"と、内心不満に思ったが「わかってるよ。」とだけ言ってパートナーである浮遊の魔法の妖精を呼び出した。
「やぁ。またシャルルが木から降りれなくなったんだ。シャルルの所まで僕を連れて行ってくれないかい。」と、くすぐったい低い声で妖精に話かけた。蝶の羽のようにも見える紫色の羽をもつ女の子の妖精は、そよ風のようにくすくすと笑いながら、
「ふふっ。いいわよ。その代わりシャルルに触ってもいい?」と甘い声でチェドに問う。
「もちろん。いいよ。」
「取引成立ね。」と、言ってチェドの回りをヒラヒラと飛びながら歌をうたうように呪文をささやいた。するとチェドはフワフワと宙をただよい、チェドの言うことを聞き石のように固まっているシャルルの元へ近づいた。妖精は楽しそうにチェドの回りを飛びながらシャルルに投げキッスをしている。
ミーはというと、下でチェドのリュックを重たそうに持ち
「シャルルー、もう少しの辛抱よ。動かないでね。」と、叫んでいた。




