第28話
コペは
「サン君・・・君が何故ここにいるんだ?!それにドリスとわしが昔会ったことがあるとはどういうじゃ?!」サンはわざとらしく、驚いたように
「まだわからないとは。使者たちから情報をもらわなかったのですか?ドリスは赤いマントの男だと。」とあざ笑うかのような声色でコペに言った。さすがに、コペとミーは理解することができた。ミーは怒りのこめた声で
「サン先生がドリスなのね。」と言った。
「そうさ。でも今はサンだ。チェドを刺したのはドリスだから僕を恨まないでくれよ。」とミーに笑いかけながら答えた。ミーは学校でいつも優しく笑いかけてくれるサンを思い出した。コペはミーに向けていったサンの言葉を聞きやっと納得した。
「そうか、君は二重人格なんじゃな。それならサンである君と話していても意味がない。ドリスと話したい。」
「おや?いいのかい?さっき言っただろう。ドリスは僕のように優しくないよ。」
「君で話が通じるのなら、君のままでよいがの。」
「ははは、十分さ。ミーおいで。」とサンは突然ミーを呼んだ。ミーはどういうつもりなのかわからず迷っていると、
「何もしないさ。僕はサンだ。チェドが心配じゃないのかい?僕がチェドを君のもとへ運んであげてもいいんだけれど、コペさん怒っているようだからね。」と肩をすくめ言った。サンとミーたちの間にはそんなに距離がない。あっても3mだろう。コペは
「ミーじゃなくてもいいだろう。」と言いコペがチェドのもとへ行こうとしたが、
「それはだめですよ。何されるかわからないんでね。」と言った。コペは苦く思いながらもミーに
「気をつけるのじゃよ。チェドを何とかしてこちらへ戻してくれ。そうしないと何もできん。」と声をかけミーに行くように促した。ミーは小さくうなずくとサンの元へしっかりとした足取りで進んだ。サンはミーが自分のもとへ来ると
「チェドは今気を失っているが見たところ、傷はそんなに深くないようだ。」と言った。ミーはサンの言葉の意図が理解できなかった。しかし、そんな事を気にしている暇がなかったため、ミーはすぐにチェドのもとへ駆け寄った。そして、そっとチェドの頭を自分の膝に乗せ、少しチェドの体を傾かせ背中の傷を診た。チェドは背中を刺されていたが、サンの言った通り傷は浅く気を失っている直接の理由は傷ではないようだった。
「ナイフに何の毒をぬったの?」ミーは今にもサンに飛び掛っていきそうな勢いで聞いた。サンはニヤッと不気味に笑うと
「やはり、君は優秀だね。心配しなくても大丈夫さ。百合でこの妖精が作った眠り薬だ。」と言った。紹介されたドリスのパートナーはサンの後ろから姿を現した。ミーはギョッとし、思わずチェドの肩をギュッと握った。ミーはこんなに、美しい妖精を見たことがなかったが、それと同時にここまで冷たくまがまがしいオーラを放つ妖精に会ったこともなかった。その妖精はミーをじっと見ると
「サンには敵わないけれど、結構強いようね。」と不敵な笑みと共に言った。ミーは答えることができなかった。すると、妖精は
「ねぇ、あなたの妖精誰?」と聞いた。ミーは、コペと共にいるチョコの方を向いた。チョコは
「僕だよ。」と挑むように答えた。サンのパートナーの妖精は何か言おうとしたが、サンに
「黙れ。」と言われたので、言うのをやめ、静かにサンの隣でチョコを睨みつけていた。サンは、横目で自分のパートナーを睨みつけると、ミーに
「さぁ、チェド君を連れて早くコペさんのもとに戻ったらどうだ?」と言った。ミーは、言われた通りにするのはしゃくだったが、急いでチェドの腕を自分の肩に回し引きずりつつチェドの元へ戻った。コペはミーが自分のそばまで来ると、ミーを手伝いチェドの片腕に手を回し部屋の1番奥へチェドを連れて行き壁に寄りかかるようにし座らせた。そして、サンに向き直ると、
「サン君、君のパートナーがわしの博士を殺したようじゃな。じゃが、君のパートナーは虚ろ魔法の妖精じゃろう。どうやってわしのパートナーを殺した?」と聞いた。サンは自分の妖精に教えてやれ。というように目配せをすると、妖精は
「私はあなたの言うとおり虚ろ魔法の妖精よ。でも趣味ぐらい持ってるわ。今から見せてあげる。」と言いサンに、
「いい?」と聞いた。サンがうなずくと、
「カスミソウ頂戴。」と小さな手をサンに差し出した。サンは自分のマントから白い小さな花が咲き乱れる美しいカスミソウを1輪出し虚ろ魔法の妖精に渡した。そして、花を受け取った妖精はにっこり笑い花にキスをし、予言を始めた。コペたちは妖精が何をしているのかわからず、じっと黙って妖精の行動を見ていた。すると、白い美しかったカスミソウは、黒い小さな花をつけたものへと変わった。その結果に満足した虚ろ魔法の妖精は、花を前に突き出し
「私は花を使って予言が出来るのよ。黒くかわったからあなた達は、死ぬ。という事になるわ。つまり私たちの勝利を示すのよ。そして黒く変わった花には、死の蜜、毒が出来るの。あなたのパートナー、望遠魔法の妖精も私はチューリップで予言した。そしたら死を示したのよ。その毒を飲ましたってわけ。」と笑いながら話した。コペは怒りに手を震わした。そして、一言
「それはどのぐらい苦しむ?」と聞いた。虚ろ魔法の妖精は正直に教えた。
「想像できる苦しみじゃないわね。考えないほうがいいわよ。でも、あなたの妖精、変な言い方だけれど、死ぬっていうのに幸せそうだったのよ。」コペは、この時初めて涙を流した。博士が苦しみを味わい死んでいったこと、しかし幸せを感じていてくれたという事に泣いた。涙は博士の死を現実のものだと受け止めたので流れた。ミーはそんなコペを見て、私は、もう博士の死を現実として受け止めていたから、涙を流して悲しんだんだ。でもコペは受け止められなかったから、涙が出なかったんだわ。と思った。




