第25話
しかし、敵わないと思った時から、覚悟している事だったため、自分の推測が当たったのだ。とぼんやりと考えまたしても自分を誇らしく思った。ドリスのパートナーは、博士を鋭い視線で見つめ、死を直面しても恐怖の色が見えない博士を苦々しく思い、どうやって始末しようかと、残酷としかいえない表情で考えた。そして思いついたのが、チューリップの毒で殺すというものだった。今も持っている真っ黒、漆黒のチューリップの色は博士の見た通り、最初は真っ白、純白だったのだが、博士の未来をこの妖精が予言した瞬間漆黒のチューリップに変わった。ドリスが、もし名前をつけるのなら、預言者とつけようと言ったのには、ちゃんとした理由がある。ドリスのパートナーである、この妖精は予言を趣味でするのだ。しかもその趣味は必ず当たる・・・。そして、博士の未来は、「死」だった。そのためチューリップが漆黒、「死」を意味する色に変わったのだ。この妖精は、いつも白い花を使い予言をする。心の中で自分自身に予言したい事を問いたあと、花に意識を集中させ複雑な言葉をいう。決して魔法を使っているわけではないが、その時使用した花は色が変わり、予言の結果通りの色となる。深紅なら、病気や怪我。漆黒なら、死。純白のままなら、今と変わらない未来という意味の結果となる。そして、「死」を表した場合は花が毒の蜜を作り出すのである。その毒の蜜を預言者であるドリスのパートナーは博士に与えようとしているのだ。まがまがしい笑みを浮かべ博士に
「これを飲め。」といいチューリップを傾け蜜が滴り博士の口に入るようにした。博士は絶対に言う事など聞きません。と妖精をにらみながら心で唱えていた。しかし、妖精が博士の目に蜜をこぼし入れようとしたので、博士は慌てて目を閉じた。その時、唇に水のような感覚のものが、触れるのを感じ、博士は無意識に舐めてしまった。その水のようなものは、甘く甘く感覚が麻痺してしまうかと思うほど、素晴らしい思いを与えてくれる味だった。しかし、麻痺のような感覚・・・というだけだったら、良かったのだが、本当に麻痺しているのだ。博士がそれに気づき水のようなもの・・・蜜を吐き出そうとしたがもう遅かった。口はしびれ手は震えていた。視界は色をだんだん失い、しまいには見えなくなった。胃は縮み痙攣した。これで終わりだった。博士の小さな体はいくつもの粒子となり、光となって煌いた。そして散った。博士の人生は幕を閉じたのである。博士は苦しみを表す叫び声をあげていても、幸福、あるいは満足感を胸に抱いていた。それは、自分の人生に悔いがないからである。コペのパートナーに選ばれてからコペと共に過ごした日々、ミーとチェドに出会い伝説の世界に訪れた事、全てに感謝をしていた。博士はコペが大好きだった。とても尊敬していた。だから幸せだった。自分の死をコペは悲しむだろう、そう思えるのが幸せだった。そう思えるのは自分が本当にコペを信じているからだからである。それが最高の幸せだった。最後もコペ様に幸せにしてもらった、そう思い博士は死んだ。永遠の瞬間だった。死は命ある者すべてに訪れる。死は自分だけのものであり、幸せの片割れにいる者のものでもある。コペの幸せの片割れである博士の片割れは死んだ、コペの片割れと共に。しかしもう片方の片割れはコペの心のなかで生きている。その片割れはコペが死ぬ時共に死ぬ。博士は永遠の一瞬を経験した。コペは博士の永遠の一瞬をいつ知るのだろうか・・・。




