第23話
公園を一周したが、魔法の残り香はしなかったため、一旦公園に戻り妖精たちの帰りを待つことにした。公園でまっている最中何人か5歳くらいの子供が遊びに来た。その子供たちと一緒に手をつなぎ、来る女の人がいた。コペたちにはそれが母親という存在の人間なのだろう、と瞬時に気が付いた。その母親と子供が何か話し追いかけっこをしている姿や、子供が遊んでいるのを暖かく見守っている母親の姿を目を放す事なく、見つめた。コペは自分が母親、(いや男なのだから父親だろう。)になった気持ちで見ていた。ミーとチェドは自分が母親から見守られている子供になった気持ちで見ていた。自分たちが魔力を持った人間に生まれてきたことを悔やんではいない。ソロンに連れてこられた事も今では良かったとも思っている。しかし、聖なる木に4歳までの記憶を奪われた事がつらかった。思い出だけでもいいから家族が欲しかったのだ。あと1つ何度も何度も考えている事があった。結論はいつも同じだったが、無意識のうちにも考えてしまう事・・・。それは、ソロンに連れてこられた自分たちは、母親の顔も父親の顔も何もかも覚えていないが、地球に残った家族は自分のことを覚えているのだろうか?自分は死んだことになっているのか?それとも突如消えた事になっていて今でも謎のままになっているのだろうか?という事だった。ミーの考えはいつも覚えていない、もしかしたら家族も私に関する記憶を失われているかもしれない。というものだった。チェドは、わからない。という言葉がいつも最後に頭の中に残る声だった。しかし、覚えてはいないだろう。と思う自分がいた。数時間前ソロンの歴史を教えてくれた使者たちに聞けば答えてくれただろう。だが、ミーもチェドも聞く事が出来なかった。はっきりと、家族はお前達の事を覚えてはいない。といわれるのが怖かったのだ。しかし、子供と一緒にいる母親の姿を目の当たりにした今、ミーは誰かに
「家族はお前のことを覚えている。今でも・・・。」と言って欲しかった。たとえ嘘でも・・・。そう思った瞬間、今にも消え入りそうな声で、コペに
「ねぇコペおじいちゃん、ママやパパは私の事覚えているかな?もしかしたら、いるかもしれないお姉ちゃんとかも・・・。」と尋ねた。コペはミーの思いが手にとるように分かった。この言葉を聞いた時のチェドのビクッとした体の震えから、チェドも気にしていたのだろうという事もわかった。2人の思いを理解したからこそ、偽りの幸せを与えようとは思わなかった、ミーたちを喜ばせる嘘をつくことは出来なかった。そのためコペは2人が落胆するという事がわかっていても、自分の考えている真実の思いを口にした。
「ミーやチェドが何と答えて欲しいかは分かる。だが、わしは後で涙するよりも心をはっきり持ち真実を受け止めた方がよいと思うのじゃ。嘘は真実より幸福な思いになる事が多い。真実は嘘より苦しい思いになる事が多い。じゃがの、わしは真実こそ人々が幸福になるものだと思う。つらい真実を知ればその時は、つらいのは当たり前じゃ。しかし嘘はしょせん偽りの幸福を与えてくれるものだ。今わしが自分の考えを口にするというのなら、それは、ミーにとって、チェドにとって受け止めたくないものだと思う。わしの考えは、お前たちの事を家族が覚えている可能性はとても低いという事じゃ。理由は簡単じゃ。長い間地球から人間を連れて来ているのに、地球で問題になっていない。わしは過去にソロンから妖精を連れてきたという事柄も、地球の歴史には残っていないと考えている。ソロンにも残っていないのだからな。じゃが、気を落とすことはない。これはわしの考えであり、列記とした真実ではない。それに真実が嘘でもあることはある。」ミーとチェドはコペの言葉の意味がわかった。わかったからこそ、それが真実なんだと受け止めた。もしここでコペが嘘をついていたのだとすれば、2人は最後にたどりつく真実を受け止めることは出来なかっただろう。2人は真実を受け止めたからこそ、家族を探すという思いに決心をつけることができた。コペは2人の表情から受け止める事が出来たかどうかを察する事は出来なかった。そのため2人が言葉を発するまで待った。それは数分だったかもしれないが数秒だったかもしれない。ミーとチェドは考えがまとまった時自分でも驚いたが、笑った。悲しいいう思いはなかった。ミーはコペに言った。
「コペおじいちゃん。私もそう考えてた。でもはっきりと口に出して言われるのが、怖かったから使者に聞く事もしなかったの。でも今コペおじいちゃんに聞いてよかったと思ってる。それに不思議と悲しくないのよ。あと決心がついたの。」と、ミーは自分の進む道がはっきりと見えた今、とても強い声で言った。チェドも
「僕もだよ。コペさんに言われた真実を受けとめる事ができたのは、嘘をつかないで言ってくれたおかげだよ。」と、にやっと笑いながら言った。チェドの目にも迷いはなかった。コペは2人が今回の経験を通してよい方向に成長したと思った。コペもミーたちと同じような事を考えた事がなかったわけではない。しかしコペ自身がけっこうな年であるため、母親や父親が生きているとは考えられない、とすぐ結論に達した。その考えは、当たっているだろう。コペが自分の家族に会う事はもう2度とないのだ。そんなことを心の隅で考えながらも暖かい目で2人を見つめた。チェドは話を続けた。
「僕はそれでも一度家族に会いたい。たとえ遠くから眺める事しいかできなくても。」と言った。それに続きミーも
「私もチェドと一緒よ。もちろんドリスの問題が片付いてからでいいの。」とコペをまっすぐに見据え言った。コペは何も言わずただうなずいた。うなずいたコペの後方から、何かパタパタと飛んでくる。チョコだった。チョコの後から見えてくるのは、パフェだった。チョコが何か言う前に、見つける事が出来なかったのだろう、と思った。うつむき加減でとてもしょぼんとしていたからだ。ミーはチョコに
「そんな顔しなくてもいいって。ありがと。それにチョコでも見付からない場所にいるって事がわかったし。」と笑いながら言った。チョコはちょっとふてくされたような顔をしたが、にやっと笑ってみせた。コペとチェドは気にすんな、というように肩をくいっとあげてみせ微笑んだ。そしてチョコの報告がすんだあと、パフェがすいっと前に現れ、誇らしげに背筋を伸ばし誰か尋ねてくれるのを待っていた。その思いに答えたのはチェドだった。
「パフェは何か良い知らせを持ってきてくれたみたいだね。」とパフェの顔を笑いながら覗き込み聞いた。パフェはパァッと顔をほころばせこくこくとうなずいた。
「うんっ!あのね!!ドリスのパートナー見ちゃった!」と一気に言った。その報告は思っていたよりも、良い知らせだった。コペも興味をかられた様子でパフェの話に耳を傾けた。チェドは詳しく言うように、パフェを急かした。




