第22話
その頃ドリスは、闇の現を手で持ちながら、地球の人間を高いビルの上から見ていた。彼が今思うのは、家族だった。ドリスはベルと同じで、かすかに記憶を残された子供の1人だったのだ。ベルはすでに記憶をなくしたが、ドリスは24年たった今でも記憶をなくすことなく、覚えていた。自分の人格を2つに分ける事によって・・・。彼の普段の姿はソロンに連れてこられた時から、サンだった。しかし、家族を想い出し、地球の事や妖精の領域のこと、聖なる木のことを調べている時は、ドリスという魔法使いとなった。2つの人格を作ることで、サンでいる時失いそうな記憶のかけらを、ドリスとして覚えておく事で、記憶を抱きしめ続けた。彼はコペたちが思っているような事・・・魔力を持った人間を筆頭に、妖精を利用し世界を我が物にしようとした人間たちと同じ事をやるつもりなどはなからなかったのだ。ドリス・・・つまりミーとチェドの担任であるサンは、自分の家族に会いたかった。ただただ家族と再び会いたかったのだ・・・。サンは、ドリスと共に色々と地球への行き方を調べた。しかしミーと同じよう、本からは何も知ることが出来なかった。そのため、ドリスはいけないと知りながらも禁断魔法の妖精の中の1人、拷問の妖精を呼び出した。そして拷問魔法の妖精を従わせ、歴史家である妖精に色々と聞いたが、わかったのは、妖精の領域への行き方だけだった。しかしサンはそれで十分だった。妖精の領域に行く方法は、太陽に触れればいい、とその歴史家は、拷問にかけられ無意識のうちにサンに教えた。その頃、サンはまだ8歳だった。8歳で禁断の魔法の妖精を呼び出す事など、考えられないことだった。もちろんこの時、護衛魔法使いに禁断の魔法を使ったのが、サンだと気づかれたのなら今こうして地球にいる事はなかっただろう。しかし、サンであるドリスは、サンを弱い魔法使いだと回りの人間に思わせるため、人前で自分のパートナーである、レベル6の妖精、虚ろ魔法の妖精を見せる事はしなかった。それだけではなく、虚ろ魔法の妖精の能力である、人に偽の姿を見せる魔法・・・つまり決して人に自分の本音や感情、素質を見抜けないようにする魔法を自分にかけ続けたのだ。そのためその時調査に来た護衛魔法使いも、サンを弱い魔法使いだと思い、サンが犯人などとは、少しも思わなかった。それにサンは、魔術が弱い者のクラスだったため、余計に考えられなかったのだろう。その護衛魔法使いとは、当時まだ長とはなっていなかったコペであった。コペも騙されミーとチェドも騙されたのだ。もちろん、3人はまだドリスとサンが同一人物であるなどとは、知らないのだから、騙された事にも気づいていないが。この後知ることになるだろう。コペ、ミー、チェドがドリスを追い地球へとやって来るのだから・・・。
3人と妖精たちが、穴を抜け最初におりたった場所は、公園のような場所だった。そこには、ドリスはいなかった。ドリスは移動しビルの上にいるのだから、いないのは当たり前なのだが、そんな事は知る由もない3人と妖精たちは、どこかに隠れているのではないかと思い、必死になりドリスを探した。そしていない事を確信し緊張感が和らぐと、伝説の世界、地球へ本当に来たのだと実感が、だんだんと沸いてきた。ミーはずっと思い憧れてきた地球の地をこうして踏んでいる事が本当に嬉しかった。公園は誰もいなかった。3人は公園からひとまず出る事にし、妖精たちに空からドリスを探してもらう事にした。チョコたちは分かったといい、空へとヒラヒラと飛んでいった。そして残ったコペ、ミー、チェドは、何か手がかりがないか、公園の周りを歩いてみることにした。
「ねぇ、ドリスは地球にいるって事がわかったけれど、サン先生は?今どこにいるのかしら、妖精の領域?それともサン先生も地球に来てるの?」ミーはドリスのあとを追うと決めた時から思っていたサン先生の行方についてコペに尋ねた。
「それなんだがのぅ、サンは妖精の領域に来た事までは確かじゃが、そのあとの足取りがわからないのじゃ。彼はまだ妖精の領域にいる可能性もあるが、ドリスのあとを追い地球に来たとも考えられる。しかしサンは強い魔法使いとは言えない。わしの考えでは黄土色のマントの男になったのも、カールがそそのかしたのじゃろう。彼の事はドリスの問題を片付けたあとで良いだろう。」とコペは悩みながらチェドにも聞えるように答えた。その話を聞いていたチェドはある事を思い出した。
「そういえば、校長ってどうなったんだろう?」と、コペとミーも忘れているだろう思い、勢いよく言葉にした。ミーとコペは、チェドの考えどおり見事に忘れていた。コペは、心の中で笑いを漏らした。ミーは、カールなど生きていようが死んでいようがどうでもいいと、思っていたためチェドに言われても、あまり感心を持たなかった。しかしコペは
「そうだのう、カール君はもしかしたらサン君と行動を共にしているのかもしれんな。」とまじめに答えた。チェドは、そうかもね。というようにうなずき、感心がなさそうにしているミーに軽くため息をついた。コペは、ミーは自分たち以外の人間を認めるようになっても、好き嫌いははっきりしとるの。とチェドと似たような事を思うのだった。その時、地球ではじめて見る人間が、目の前の家から出てきた。家から出てきた人間は黒いマントを着ている3人をうさんくさそうな目で見た。3人はそんな事には気づかず、その人物をしげしげと眺めた。自分たちと違うと一目見て分かるのは、言語だった。見た目は同じなのに、その人物の言っている事がまったく理解できなかったのだ。その人物は3人に向かい、
「こんにちは。この辺に越して来た人ですか?」と、怪しいと思いながら聞いたのだ。3人は言っている事がわからなかったが、初めて会った人が話し掛けてくるのだから、あいさつをしてくれただけだろう、と思い自分たちの言葉で
「こんにちは。」と答えた。今度はソロンの言葉がわからなかったその人物は、外人さんかしら?と思い、にっこり笑うとそそくさと立ち去って行った。その姿を見ながら3人は、自分たちの言葉も通じない、そしてもちろん地球の人々が話す言葉もわからないという事に多少意気消沈した。地球の人と話したいと思っていたのに、無理だとわかったのだ。そして、もう1つ自分たちが場違いだという事にも気がついた。地球の人間はマントを着るという事はしないらしい。という事である。(この発見は重要だった。得にドリスを探すために、街中を歩く際、着ていたままなら、間違いなく3人は、花道を歩くことになるだろうから。)そして、3人はマントを脱ぎ抱えた。




