第19話
「そういえば、あのまま先生のこと見なかったけれど、すぐに帰ったのかな?」と独り言を言った。チョコとパフェは黙ってミーの考えている姿を見ていた。そしてミーの心の中では、自分に起こったここ2、3日の間の出来事が、走馬灯のようにゆるやかに流れていった。それからミーは、今思い出した記憶を自分で確かめるかのように、
「黄土色のマントの男・・・カールが闇の現を見せていた相手。あれから一度も見ていない。カールは私に気づいたから、その男に闇の現について詳しく教えるのをやめ、話を中断した。あれから、教えてもらったのかしら?・・・いいえ、無理よ。だってその次の日に、イガに捕まったのだから。でもイガからカールは逃れた。闇の現のおかげで。それからカールはどこに行ったの?あっ!イガから逃げたあと、その男の所へ行ったの・・・、いいえ。やっぱりそれも無理。護衛魔法使いが、ソロン中の家を探したもの。という事は、あの男は、まだ闇の現について詳しく知らないんだわ。だって、カールから教えてもらう事が出来る時間は、私が授業を受けている間、私が校長室に、忍び込んだ前しかないもの。もし、誰かが校長室へ行ったのなら、絶対に私たちの教室の前を通るはずよ。あれ?でも黄土色のマントの男を見た日も、私たちの教室の前なんか、通らなかったわ。通ったのは、先生や生徒だけ・・・。そしてもちろん、私がイガに助けられた日も誰も通らなかった。通ったのは、サン先生とかイガとか・・・。サン先生?そういえば何で昨日、護衛魔法使いしか学校に入れなかったはずなのに、いたのかしら。」とゆっくりゆっくり自問自答しながら言った。そして最後に自分で言った疑問の答えは、1つしか思いつかなかった。それを口に出して確定するように言ってしまう事など、とてもミーには出来なかった。自分で導き出した答えを否定するために、ミーは最後の望みを胸に抱き一目散に走り出した。そして、ミーの目指した場所に着いた。そこは、サンの研究室、つまりサンだけしか入る事のできない部屋だ。(教師には、一部屋ずつ自分の小部屋がある。)ミーは、苦しげに深呼吸すると、恐る恐るドアに手を伸ばした。すると驚いたことに、鍵はかかっていなく簡単に中に入ることができた。警戒しながら、ゆっくりと部屋に入り、最初ざっと部屋を見渡した。そしてサンがいない事を確認すると、安心し警戒を解いたが、逆に不安な思いは増えた。そして今度はざっと見渡すのではなく、倉庫の時と同じように、慎重に「狭間への道」を探した。すると、数秒もたたない内に妖精の2人が見つけた。2人は
「ミー!あったよ!!博士の言ってた通り、狭間につながっているような道が!!」と叫んだ。その歓喜あふれる妖精の声を聞いた時、ミーは心の中で、やっぱり予感は的中してしまった。と嘆いた。そして、グッと涙をこらえると、前を見据え、しっかりとした声で、チョコとパフェに、
「みんなを呼んできて。」と言った。チョコとパフェはミーがショックを受けているのを感じ心配したが、ミーの言う通りコペとチェドの元へ急いだ。コペとチェドの2人は絶望したような顔をしながら一緒にたたずんでいた。しかし2人はミーと一緒にいた妖精が、あわてて飛んでくるのを見て、顔に少しずつ笑顔が広がっていったのだった。そして妖精たちが
「見つけたよ!!」と叫んでいるのが、聞こえ笑顔は完全なものへとなった。それから自分たちを呼びに来てくれた妖精の元へと、自分のパートナーを連れコペとチェドは走った。一方チョコとパフェは、2人が自分たちの元へ駆けて来るので、止まって待つことにした。そして、2人が軽く息を切らし
「どこに?ミーは?」と切羽詰ったように聞くので、説明は後にしてミーの元へ案内した方がいいだろうと思い、顔を見合わせるとすぐに来た道を戻りミーの待っている部屋、サンの研究室へと向かったのだった。
ミーは、2人がチョコとパフェの後ろからついて来るのを見た。そして得意そうな顔をしてミーを見ているチョコとパフェに気づき、可笑しくて思わず笑ってしまった。チョコとパフェはそんなミーを見て、何?というような顔をしている。ミーは笑うのをやめると、
「ありがとう。」とニヤッと笑いながら、2人に言った。2人もいたずらっぽく笑って返した。それから、部屋に入ってきたコペとチェドに、自分が何故この部屋だと思ったのか、2人に説明した。そして、ミーが校長室で見た黄土色のコートを着た男、それはサンだったのではないか、と思っているという事も話した。(それともう1つ、ミーは気づいた事があったのっだが、まだ確信がないので言わなかった。)チェドは、何故あの時すぐ変だと気づかなかったのかと、自分をののしった。しかしコペはというと、驚きもせず意味ありげに博士と目を合わせミーとチェドに朝博士と2人で話していたことを明かした。
「わしは学校の中に必ず、校長に何らかの形で加担しておる者がいると考えていたのじゃ。まさか、サン君だとは思いもしなかったがな。昨日まず最初に、イガ君が消えたという報告をわしは受けた。その報告には何も不信感を抱かなかったが、その次の報告には、いくつか奇妙に思う事があったのじゃ。それは、イガ君がいなくなった時校長が一緒にいたらしい、という内容の報告だった。みんな変に思わんか?わしは、その報告を聞いた瞬間に変だと感じた。だからわしはもちろんの事、その報告をしてきた護衛魔法使いに、誰がその情報を提供したのだ?と聞いたのじゃ。すると、どうだろう!彼は、分かりません。誰かがそういう声を聞いたそうです。というではないか。わしの抱いた不信感は大きさを増していった。そしてお前さんたちの話を聞き不信感は、確実なものとなったのじゃ。それからその声は誰だ?何のために言った?といろいろ考えた。前者の方の疑問は、分からなかったのじゃが、今わかった。サン君じゃ。ミーの推理の通り、サン君が黄土色のマントを着た男だという事も、彼は教師なのだからうなずける。不思議に思ったじゃろ?何故黄土色のマントの男の姿をあれから1度も見なかったのか。それは、いつも学校にいるからじゃ。教師としてじゃがな。そして後者の方の疑問の答えは、博士と相談した結果わかった。そうじゃ、わしらは、誰かがイガ君が消えた時一緒にいたのは、校長1人だったと思わせるために護衛魔法使いを騙したのだろうと考えた。そしてその人物が黄土色のマントの男、サンだという事も、今となっては推測できる。」とコペは説明した。その間博士は、ふむふむとうなずいていた。ミーとチェドはというと、コペの考えの鋭さに驚き尊敬した。そしてコペは、最後に
「今まで黙っていてわるかったの。」と謝った。もちろん2人はそんな事で責める気はなかったので、
「気にしてないよ。」と笑いながら答えたのだった。
そして、コペの告白も終わったところで、3人は誰から行くか相談した。そして、最初に行くのは、博士にきまった。(行くといっても、本当に行くのではなく、覗くという事だが。)博士が危険がないか確認し、大丈夫なら、コペと博士。次にミーとチョコ。そして最後に、チェド、ケーキ、パフェ。という順番に行くことにした。
博士は危険がないことを確認し、コペと共に「狭間へとつながる道」に足を踏み入れた。すると、その途端、一瞬にして2人は狭間へと消えた。それを見てミーは多少恐怖を覚えたが、勇気を出しチョコと共にコペのあとを追い狭間へと消えた。そして最後に残ったチェドたちも、もちろんのこと狭間へと消えたのだった。




