第13話
ベルの家に、着くと、中は真っ暗で、誰もいないかのように思えた。しかし、チェドが、電気のスイッチを、手探りで探し、急いでつけると、奥のソファーに、すやすやと、寝息を立てながら、寝ているのがわかった。ミーは、ベルを起こさないように、寝室に行き、毛布を取りに行こうとした。しかし、階段に足をかけた時、つまずいてしまい、物音を、たててしまった。その音に、ベルは、気づき目を覚ました。そして、ミーの、姿を、見つけると、嬉しそうに駆け寄ってきた。ミーは、ベルが、自分の元へ笑顔で、来た時、ベルの事を、忘れていたことに、とても、罪悪感を覚えた。そして、これからは、2度とベルを、真っ暗の中、1人でいさせたりしないと、心に決めた。
「お姉ちゃん!遅かったね。僕もうお腹ぺこぺこだよ。」と、言って、笑いながら、ミーに、抱きついた。ミーは、朝、ベルが、自分の事を、
「お姉ちゃんに、そっくり!」と言った事を、思い出した。ミーは、家族というものを、知った今、朝言われた時とは違い、とても暖かい気持ちになったのだった。そして、ベルを、優しく包むように、抱くと、
「うん。ごめんね。今からすぐ作るから。何がいい?」と、言った。すると、妖精たちが、
「チョコ!」
「ケーキ!」
「パフェ!」
「クッキー!」と、言った。ミーとチェドは驚き、妖精たちの方を見た。
「えっ?!妖精って何か食べるの?!」と、チェドがいうと、妖精たちは、怒ったかのように、
「食べるよ。」と、口をそろえて言った。
「だって、今まで食べてた事なんかないじゃないか。」
「だってこんなに長く妖精の領域に、帰らなかったことなかったもん。」と、チョコと言った、ミーのパートナーが答えた。そして次は、ケーキと言った、チェドのパートナーが、
「そうよ、今まですぐ、帰っていたもの。」と、甘い声でささやくように言った。
「私は、今誰のパートナーにも、なっていないから、ほとんど妖精の領域にいるの。でも、昔パートナーになっていた時も、人間と一緒に食べたことなんてなかったかも。」と、昔を思い出すように言ったのは、パフェと、言った透明魔法の妖精だった。そして最後に、クッキーと言った、創造魔法の妖精が、
「私は、今まで人間に、呼び出された事も、ソロンに来た事もなかったから、もちろん人間の、前で物を食べたことなんてないわ。」と、言った。そして、ミーとチェドが、ポカンとした顔を、していると、妖精たちが、一斉に、
「ねっ!だから今日は、みんなで食べようよ。」と言って、ミーとチェド、そしてベルの回りを、飛び始めた。ミーとチェドは、笑うと、
「了解!」と言って、キッチンへ向かい、物作り魔法の妖精を呼び出した。ベルはというと、妖精たちを、興味深々の顔でながめ、触ろうと手をのばしていた。妖精たちは、それに気がつくとベルの、頭の上に座ったり、ほうに触ったりしながら、ベルと遊んだ。ミーとチェドは、急いで妖精たちの希望通りの品と、ベルの好きそうなものを、考えた結果浮かんだ、ミートソーススパゲッティーを、物作り妖精に手伝ってもらい作っていた。そして、出来上がると、物作り妖精は消え、ミーとチェドは、料理を机に運びみんなに席につくように言った。(もちろん妖精たちはイスに、座らず机に腰をおろした。)ミーのパートナーと、創造魔法の妖精は、自分の前に置かれたチョコやクッキーを、少しづつ割りながらおいしそうに食べた。しかし、パフェとケーキを注文した、透明魔法の妖精と、チェドのパートナーは、スプーンやフォークが、大きすぎて使えないらしく手で食べることにしたため、ちょっと不機嫌な顔をしていた。ベルは、ミーたちの予想通りミートソーススパゲッティーが、大好物だったらしく、おかわりをした。そんな様子を、見ていたチェドが、
「そうだ!妖精たちに名前をつけようよ。だって一緒に、謎を解いてく仲間なんだから、名前があった方が、呼びやすいよ。」と、いきなり言った。妖精たちは、名前を、つけてもらったことが、なかったのでとても喜んだ。そしてミーも、その意見に賛成だったので、
「うん。何にする?」と、机に体を乗り出し、チェドに尋ねた。その時ベルが、ミーの妖精を指差し
「チョコ!」と、叫んだ。最初みんな意味がわからなかったが、チョコと言われた、ミーの妖精が、にっこり笑い
「じゃあ、僕チョコ!」と言ったので、ベルは、名前のことを、言っていたのだと気づき、ミーたちは笑った。そして、妖精たちは、チョコに続いて自分たちの、食べていたものを、自分の名前とした。ベルは、にっこり笑うと、ミーに、
「僕にパートナーが出来たら、ミートソースっていう名前にする。」と、言った。パー
トナーになっていない、パフェとクッキーは、どうかベルのパートナーだけには、将来なる事がありませんように。と、心の中で願った。パフェと、クッキーが、考えていたことが、手にとるようにわかった、チョコとケーキは、笑いをこらえることが、できなかった。ミーは、そこまで嫌な名前かしら?と思ったが、妖精たちにも、好みがあるのだろう。と考えたのだった。そして、ミーは朝ベルが話した事を、詳しく聞こうと思い、
「ねぇ、ベル。朝の話なんだけれど、ベルには、家族がいるんでしょ?」と、ベルに尋ねた。すると、ベルは、
「家族って何?」と、無邪気な顔をして、ミーに聞き返した。ミーは、
「朝言ってたじゃない。ママと、パパとお姉ちゃんが、いるんでしょ?」と、言った。
「ママ?パパ?いるような気がするけれど、よくわかんないや。でもお姉ちゃんは、わかるよ。ミーだもん。」と、にっこり笑い答えた。ミーは、何で?と思いながら、
「私じゃないわ。あなたの家族のお姉ちゃんよ。アンっていう名前の!」と、あわてて言った。
「アン?誰のこと?僕わかんないよ。」と、ベルは、困ったように、ミーを見つめ答えた。その時、聖なる木の使者だった、クッキーが、小さな声で、
「ソロンに、魔力を持った人間たちを、連れてくる時間は、聖なる木が、食事をする時なの。聖なる木は、人間たちの記憶を、食べるのよ。」と、言った。ミーやチェド、そしてクッキー以外の妖精たちは、言葉をなくした。ミーとチェドは、なぜ自分たちに、連れてこられる前の世界の記憶がないのか考えたことがあった。そして、やっとクッキーの発言によって、理由がわかったが、それはあまりにも、悲しい答えだった。そう・・・。ソロンの人々は、聖なる木によって、4歳までの記憶を、奪われていたのだ。




