あなたと私の舞踏会
第7回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞投稿作品
下記指定キーワードを全部使用して書いてみた。
年賀状/オルゴール/合い言葉/ギフト/ホットケーキ/舞踏会
/自転車/雨宿り/風鈴/サバイバル/木枯らし
曇天にして木枯らし吹き荒ぶ中を、僕は一人自転車を走らせていた。ふと気付けば暗雲立ち込め数分もすると豪雨となり、僕はびしょ濡れになりながらも目的の場所へと到着した。
そこは廃集落の中の一軒家。その家の軒先には季節外れの風鈴が垂れ下がり、木枯らしに激しく揺さぶられ間断無く不快な音を奏でていた。とりあえずその軒先で雨を凌ぐも天候は時が経つにつれ酷くなり、何ら口にする物を持っていない今の状況は軽いサバイバルを思わせた。
「腹減ったぁ。あれ? そういえば何故こんな所に……あ、あれか」
発端は秋の終わりに届いた一通の封筒。一見するとギフトカードの類に見えたその中には「舞踏会のご案内」と書かれた一枚のチケット。当初それが何なのか不明だったが、直ぐにそれがお年玉付き年賀状で当選した景品だと気がついた。正直興味は無い。だが暇なので行く事にしたが僕は金も車も無い貧乏学生。なので舞踏会の場所まで自転車で向かったのだが……
「騙されたかなぁ……ん?」
途方に暮れていた所、廃屋の中から微かに甘い香りがした。僕は一体何事だと廃屋の中へと足を踏み入れた。
「何か用かね」
「!」
声の方に目をやれば、そこには乱れた長い白髪を蓄えた老婆が一人。
「すいません、てっきり廃屋かと思って」
「この佇まいじゃからのぅ。まぁこれでも食え」
老婆は焼き立てのホットケーキを僕に差し出した。脈絡無く出されたそれに疑問はあったが空腹だった事もあり、僕は有り難く頂戴する事にした。
「お婆さんはここにお住まいで?」
「待っとるんじゃよ」
「待ってる?」
「お主こそ何しに来た」
「僕は舞踏会に参加する為に──」
「おお! そうか! ほな合い言葉は」
「合い言葉?」
「チケットに書いてあったじゃろ」
「舞踏会の事、知ってるんですか?」
「儂が主催じゃよ。で、合い言葉は」
「確か『儂と踊れ!』?」
「よし! ほな目を瞑れ」
訝しみながらも言われるままに目を瞑る。すると先のホットケーキのような甘い香りが再び鼻腔をくすぐった。
「よし! ほな目を開け」
言われるがままに目を開くと、そこには映画で見たような天井が高い西洋のホールといった感じの場所が広がり、安っぽいオルゴールの音がホールに響き渡っていた。
「何だここ!」
「ほな踊るか」
「は? つうか誰もいないし」
「儂がおるじゃろ」
「?」
「お年玉ブレゼントは儂と舞踏会で踊れる権利やないかい」
僕は学んだ。自分で選んでいないギフトに期待してはいけないと。
2025年12月25日 初版
やはり1000文字以内という文字数制限は難しい……




