0-49 栄耀ノ章 十二
恒範親王は驚くほどあっさりと白状した。
「すべて山城守宗忠に唆されてやったこと!いや、まだわしは何もしておらん!」
「まだ?」
浄基が睨みつける。
「い、いや、これからもする気はない!」
慌てて両手と首を横に振る。
「だが、その企みに加わっていたことは明白。そして、内裏からも加担していたことも言い訳出来まい」
「・・・・・・しかし!山城守がどこで何をしようとしていたのか、わしも知らんのじゃ!」
縋るように言った。
おそらくだが、それは本当だろう。
「追って、わが父紀基より沙汰があろう。首を洗って待っておれ」
浄基は刀を納めると、へたり込む恒範親王を見下ろした。
そのまま山城国府へ向かうと、霞宗忠を都へ連行した。
「・・・・・・」
「これほどの物資で何を作ろうとしていたのだ?」
恒範親王と違い、霞宗忠は棒打ちの拷問にも一切口を割らなかった。
「・・・・・・」
「代わりに答えよう。戦御体だな?」
「・・・・・・」
「戦御体を作って何をするつもりだった?」
「・・・・・・」
・・・・これでは無駄か。おそらく死ぬまで何も言わぬだろう。
宗忠の体を棒で打ち据える音が響く中、浄基は獄を後にした。
だが、恒範親王と山城守宗忠、そして東雲山蓮華寺僧正蓮空が共謀していたことは恒範親王があっさり白状した。そしてその目的が緋家討滅であることは明白だった。
「以上です」
浄基が父・紀基へ事の顛末を報告した。
紀基の顔が真っ赤になっていくのが見ていてわかるほどだった。
「恒範めぇ!!このわしを倒そうだとぉっ!?」
「いかがなさいますか?」
「恒範は鬼界が島へ流せ!霞宗忠は首を落とせ!」
「はい。承知」
浄基は頭を下げて紀基の前を去ろうとした。
「待て、浄基!」
「はい?」
「東雲山を焼き尽くせ!!」
蓮華寺では、都で僧侶たちが緋家の役人に殺されたことから、寺の外へ出るときは棍棒や槍などを絶えず持ち歩くようになっていった。
そして徐々に、それを扱うための修練を寺の中で行うようになっていく。
やがて自らを”僧兵”と呼ぶようになる。
その僧兵たちが寝静まった頃だった。
秋の虫が羽音を立てる。風がかさかさと枯葉を運ぶ。
息を潜める、浄基が率いる緋家軍八百。
東雲山の険しい山を登り、蓮華寺のまわりをぐるりと取り囲んだ。
そして笛の合図とともに、緋家の兵たちが一斉に火を放った。
秋枯れの東雲山が、一気に明るく光を放って燃え上がった。




