0-39 栄耀ノ章 二
「・・・・・・詳しく聞かせてもらえるだろうか?」
男は言った。
「・・・・・・」
「信頼して話そう。おれは山城守霞宗忠の家臣、霞兼信。ここにいるのはミカナ。陰陽師だ」
慶秀が考えあぐねて黙っていると、男は自ら名乗った。
「・・・・おれは楠慶秀。職人だ」
「おれたちはミカナの父、臼井天海を殺したという富士江成親の屋敷を調べて戻る途中だ」
兼信はゆっくりと話した。
「・・・・どうしてそんなことを話す?おれをそこまで信じてよいのか?」
「・・・・わからんが、商人の勘だ。おれはこの”勘”だけでここまで来たのでな」
そう言って男は少し笑った。
「・・・・商人?」
「ああ。六原は今、ものすごい勢いで鉄や木を集めている。その資金繰りと調達を調べに行っていた」
「・・・・・おそらく、おれはそれと繋がりがある」
「・・・・どういうことだ?」
「おれが職人として作っていたのは、”戦御体”」
「何だ、それは?」
「人が乗り、動く人型の絡繰り・・・いや、鬼と言った方が近いかもしれん」
「・・・・・・・?」
兼信とミカナは顔を見合わせた。
「・・・・・・」
「直に見るまでは信じられんだろう。おれもそうだった。唐へ渡り、実際に見るまではな。だが、最初に見た時、おれはあれを作りたいと思ったのだ。そして、その技を身につけた。だが・・・・それで・・・人が死んだ。大勢死んだ。すべておれのせいだと思うのは思い上がりかもしれない。だが・・・・」
「・・・・それで六原を逃げ出してきたのじゃな?」
ミカナが言った。
「そうだ。おれの作ったものが、罪のない者を殺すところを見たくない」
「そうじゃな・・・お主の言う通り、思い上がりも甚だしい」
慶秀はミカナの顔を見上げる。
「ああ、すまん。この娘、こういう娘でな。思うことに口を閉じられんのだ」
「世の中にあるどんな優れたものも、使い道を誤れば人の命を奪うことは往々にしてある。すべては使う者次第じゃ。それを恐れていては、この世に新しいものなど何も生まれんぞ」
「だが、今度のものは違う!」
「違うなら、お主がこのまま逃げ回っておれば、それは生まれてこぬものか?」
「・・・・いや。そんなことは・・・ない」
「ならば、お主にできることは何じゃ?職人が作ることをやめて、何ができる?」
「・・・・・・・・・」
「まあ、ミカナ。それくらいにしてやれ」
兼信が見かねて間に入った。
「ともかく慶秀殿。我が主、宗忠殿に会ってみてはくれぬか?」
「・・・・確かに、その娘の言う通りだ。おれが逃げていれば、何も変わらない。会わせてくれ、宗忠殿に。緋家を止めねばならん」
そう言うと、図の書いた紙の入った布袋を引き寄せた。




