191 花舞ノ章 幕間 四
「天狗殿、わたしのことは、皆には内密にお願いしますね」
・・・・と、瑞奈には言われたが・・・・。
天狗はどうしても、今までとは違う目で瑞奈を見てしまう。
天狗、瑞奈と蓮華、伊佐、嶺巴の五人は、狛丸と竹丸を連れて祝宴の準備をしている関ノ府の町を見に来ていた。瑞奈の腕の中では狐白丸が欠伸をしている。
狛丸と竹丸のふたりは伊佐の着物の裾をしっかり握って離さない。
「すごく懐いてますね?」
瑞奈が伊佐に言うと、伊佐は少し困った顔をした。
「ずっと、離れてくれないのです」
「うれしいことではないですか」
「そうなのですけど・・・・」
瑞奈はしゃがんで狛丸と目を合わせる。
「この子が宗影殿の子ですか。会いたいでしょうね、澄玲殿」
来迎院での、澄玲のことを思い出す。
・・・・一緒に瓜の苗を植えた畑、もう、実ったかしら。
狛丸は人見知りしたのか、伊佐の後ろに隠れる。
一方、竹丸は瑞奈の方を指さして「きつね!きつね!」と伊佐に呼びかけていた。
「そうね、きつねだね」
伊佐が言う。
竹丸がおっかなびっくりで狐白丸に触ると、すぐに手を引っ込める。
狐白丸はそれには構わず、また欠伸をする。
「ふふ、かわいい」
笑顔になる瑞奈。
・・・・・・何も、今までと変わらん。それでいい。
天狗は自分に言い聞かせた。
・・・・だが?
何故か蓮華だけは瑞奈が微笑むたびに顔を真っ赤にする。
・・・・これは、どういうことなのじゃろう?
「で、あっちが関ノ府八幡宮。今度、瑞奈殿が舞う舞台があるところさ」
嶺巴が案内をしてくれている。
・・・・へぇ、この派手で破廉恥な格好の女、意外と人の面倒とか見るんだ・・・。
瑞奈は心で思った。口には出せない。
「うわぁ、すごい!大きい!」
八幡宮の境内に立てられた大きな櫓、その上に立派な舞台が据え付けられている最中だった。
「こんな大きなところで瑞奈様が舞うのですね!!」
「は、はい。そうなりますね・・・・」
上皇の御前に作られていた舞台よりもずっと立派だ。
広さもあり、高さもじゅうぶんある。遠くからでもよく見えるに違いない。
「せっかくだから、市を見に行こうか!」
嶺巴が言うと、蓮華が目を輝かせる。
「あーっ!!行きたい!!」
「わたしも行きたいです!美味しいものがありますか!?」
瑞奈が言うと、伊佐と嶺巴が笑った。
「え、おかしいですか?」
「さっき、芋を齧っていたばかりじゃないか?」
嶺巴が言うと、瑞奈は頬を膨らませる。
「お腹が空いているから食べるのではないのです!そこに美味しいものがあるから食べるのですよ!」
◇
「なあ、ミカナ」
「なんじゃ?」
淡影とミカナは淡影の自室にいた。
淡影の膝の上にミカナが座り、そのミカナの上に岩姫が座っている。
岩姫は小さな木彫りの熊をひっくり返したりしながら遊んでいる。
「なんで、ふたりはおれの上にいるのでしょうか?」
「座り心地が良い」
・・・・・もぞもぞ。
「いやぁ」
淡影が足を動かすと、岩姫が声を上げる。
「こら、動くでない。岩姫が嫌がっておる!」
「足が痺れてきた」
「我慢じゃ」
「はい。・・・・そうですか」
・・・・・蓮華たちと一緒に行けばよかったなー。
そう思う淡影だった。




