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戦ぎの淡い影 ― 平安戦御体戦記  作者: ひろくま
花舞 (はなまい)

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189 花舞ノ章 幕間 二

「嶺巴(れいは)は知ってる。で、この娘がミカナ。で、伊佐(いさ)様」

蓮華がひとりひとり名前を並べる。

「で、おじさん二人」

「あのう、せめて名を言ってほしいのですが・・・・」

「不満千万」

皆秀(かいしゅう)と宿儀(しゅくぎ)がぼそぼそ言う。

「そもそも、ミカナはわかるがあたしは呼び捨てで伊佐だけ様ってなんだよ!」

嶺巴も不満なようだ。

「なんでよ!あんたに様をつけて呼ぶ義理はないわ!」

蓮華が嶺巴の胸をつんつんしながら言う。

「おれは嶺巴の”ミカナはわかるが”にも不満じゃが?」

ミカナが頬を膨らませる。


「まあ、まあ。久しぶりに会ったのだし・・・・」

淡影がなだめようとすると、蓮華がぎろっと睨む。


「・・・・ええと、ごめんなさい」


「ふん!それと、白結・・・・いえ、淡影様!」

「は、はい?」

蓮華の勢いに押されながら淡影は笑顔を作る。

「何でしょうか?」


「岩姫、狛丸、竹丸」

子どもが三人。蓮華が一人ずつ名前を呼ぶ。

「そ、そうです」

淡影が言うと、蓮華は眉間にしわを寄せた。


「娘が三人、子どもが三人・・・・・どういうことでしょうか・・・・・?」

「・・・・え、あ、この子たちはおれの子ではないが・・・・・」


「あ・た・り・ま・え・で・しょ・う?」


「は、は・・・・・・はい」

全身びっしょり汗をかきながら淡影が苦しまぎれの笑顔を作る。






「ねえ、伊佐姉様。あの人誰?」

竹丸が伊佐の袖を引っ張りながら言う。

「あ・・・・・えと、あの・・・・怪力娘・・・・じゃなくて、淡影様の幼い頃からの・・・・」

・・・・幼い頃からの・・・・何?

だって、怪力娘って、もっと鬼みたいなごつごつした娘だと思っていたから!

こんな可愛らしい子だとは・・・・。

もしかして、もしかして!?

・・・・またわたし、影が薄くなる!?

汗止まらない!!

「伊佐姉様、向こうで遊びたい」

今度は狛丸が伊佐の袖を引っ張る。

「ああ、そうですね。向こうで遊びましょう・・・・」

・・・・これって、結構まずい状況じゃ!?

子供の相手ばかりで、わたしのこと・・・・忘れ去られる気がする!!

頭のてっぺんから汗が滝のように流れてくる。

「伊佐姉様?」

「あ、はい。遊びましょう!遊びましょうね・・・・」




「女ばかり連れて旅して!わたしのこと東雲山(しののめさん)に置いて行ったくせに!!」

「い、いや、それは・・・・」

「許しませんからね!!」

「だ、だから・・・・」


「おい、蓮華とやら!」

ミカナが口を開いた。

「何ですか!?」

蓮華は頬を膨らませながらミカナを見る。

「淡影はお主のことを思って置いていったのじゃ。許してやれ」

「・・・・どういうことっ!?」

「淡影はな・・・・・・」

「まてまて、ミカナ。おれが話すよ」

淡影はミカナを止める。


「お蓮が・・・蓮華が、天狗と刀の修練をしているって聞いて、おれについて戦に出るつもりなんだって思ったんだ。でも、おれは、蓮華に殺し合いなんてしてほしくない。だから、そのまま東雲山にいて欲しかった。戦が終わったら迎えに行くつもりだったんだよ」


淡影が蓮華の肩に手を置く。優しくて温かい手。


「なんだかぁねぇ。あたしらなんか、平気で戦わせるくせにさ!」

嶺巴がじとっとした目で淡影を睨む。


「淡影様・・・・・・」


「すまない、蓮華・・・・。黙って置いて行ったのは謝る。顔を合わせたら、置いていけないと思って」


「それなら・・・・・・・」


少し俯いて肩を震わせる蓮華。


「先にそう言ってくださいっ!!」


ぎりぎりぎりぎり!!


「い、いひゃいっ!!」

蓮華は思い切り淡影の頬をつねった。

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