夕映えの空
何故夕映えに雨ふれば
白い朝の残光が
遠く夢の間の夕立
あの歌は羊水に滲むと楮となる
何故夕映えに雨ふれば
咲いた花に伝う白露
あの歌は羊水に根ざす三椏となる
何故夕映えに雨ふれば
遠くの夢の舟浮ぶ
あの歌は羊水に泳ぐ雁皮となる
強勁な繊維を切り取り叩き溶かし干して
一枚の白き和紙となる
霧雨の露滲ませて
歌を詠む人
紙を袖に忍ばせ
髪はたゆとう風の流れに
あの歌のしなやかさ勁さに憧れた
見上げた空、広がる海の深さを忘れない
何故夕映えに涙が溢れ
羊水に夕陽が溶ける