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社畜にブラックギルドはぬるすぎる!  作者: 城太郎
第六章・ホワイトギルド編
44/47

44.対決! 魔術研究課②

 頑固で、子どもじみていて、底意地の悪い、偏屈じじい。


 ――バルドによる、ロドルフ評である。


 保守的で、利己心が強く、面白みのない、臆病者。


 ――こちらは、セシルによるロドルフ評だ。


 聞いていた通りの光景が、目の前で繰り広げられていた。


「やーじゃ! やーじゃ!」


「そ、そこをなんとか……」


「やーじゃ! やーじゃ!」


「話を聞いてもらえませんか……!」


「お前の顔が気に入らん! 嫌じゃ!」


「か、顔……」


 クロダは絶句した。会話にならない。助けを求めるように魔術研究課の面々を見るが、誰もがわざとらしく視線を逸らす。


「こうなった課長は、誰も止められないだろ……」


 どこからか、そんな声が漏れ聞こえてくる。


 困り果てて隣に目を向けると、イゼルと目が合った。イゼルは頷き、遠慮がちにロドルフに声をかける。


「ロドルフ課長……しかし、この案は魔術研究課にも多くのメリットがございます。どうか、ご一考を」


「別に、今のままでもうちの課は売上トップじゃしの? わざわざやり方を変える必要はなかろう?」


「ですから、その売上がさらに上がるというお話でして……」


「さらに上がるじゃと?」


 ロドルフの表情が一変した。急に暴れ回るのをやめ、目つきが鋭くなる。


「さらに上がって……それの、どこがうれしいんじゃ?」


 クロダたちは顔を見合わせた。ロドルフの話の意図が読めない。ユートが、おずおずと手を挙げる。


「それは、売上が上がったらみんなうれしい……じゃないスか?」


「ふぉ、ふぉ、ふぉ。青い。青いのう。売上が上がってうれしいとはのう……」


「え……?」


 ユートは反論しようとしたが、ロドルフの表情を見て黙り込んだ。


 ロドルフは、さきほどのように怒鳴り散らすことはない。しかし、その目に宿るのは――強い"怒り"だった。


「売上が上がったらうれしい……わしもギルドに入ったばかりの頃は、そう信じておったわ。じゃが、みんなで協力して死ぬ気で働いて、やっと売上を10%上げたとき……当時の上司に何と言われたか分かるか?」


 ロドルフの瞳は、どこか悲しげに光っていた。


「『その調子で頑張れば、来月はもう10%上げられるな!』……じゃ。馬鹿らしいとは思わんか? 頑張れば頑張るほど、評価もされずに目標だけが上がっていく」


「…………」


「労働者が馬鹿を見るのは、もう御免じゃ。それなり、それなりが一番じゃよ。クロダ、お主にならそれが分かると思っていたんじゃがの」


 クロダはドキリとした。


 少なくとも、少し前までの自分は、何も考えずにただ働くだけ……出世欲もなく、現状維持だけを望んでいた。


(……ロドルフのことを、笑えない)


 足元が揺らぐ。何に自信を持てばいいのか分からない。


(やっぱり、この案は間違いだった? 魔法導入なんて、ギルド規則を変えるほどの改革じゃなくて、ほどほどに進めて、ほどほどに生きる方が幸せだったのかも……)


 それ以上、言葉が出なかった。何を言えばいいのか、そしてロドルフを説得するのが正しいのかすら、クロダには分からない。


「……そういうわけじゃから、この話は終わりじゃ」


 ロドルフは話を切り上げようと、腰を浮かせる。


 そのときだった。


 会議室の扉が、勢いよく開かれた。


「おいおい、引退にはまだ早いんじゃねえか? ロドルフのじじい」


 姿を現したのは、製品加工課課長――バルド、その人だった。


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