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社畜にブラックギルドはぬるすぎる!  作者: 城太郎
第六章・ホワイトギルド編
43/47

43.対決! 魔術研究課①

 ついに、魔術研究課への提案の日がやってきた。


 業務整備課からは四人全員、魔術研究課からは課長を含む六人、総勢十人が参加するという、思いのほか大ごとになってしまった。


「あまり自信ないけど……うまくいくかな」


 クロダは思わず弱音を口に出し、すぐに後悔した。もうすぐ本番だというのに、部下の士気を下げるようなことを言ってしまった。


 しかし――


「大丈夫です。我々はそれだけの準備をしてきました」


「はい! 必ず成功させましょう!」


「大丈夫っス! きっとうまくいくっス!」


 イゼル、リーナ、ユートが、口々にクロダを励ます。


(やれやれ……本当に、いつも助けられてばかりの情けない課長だな……)


 クロダは心の中で自虐しつつも、気持ちを奮い立たせた。


「よし……行こうか」


 クロダを先頭に、会議室へと向かう。





 会議室には、まだ誰もいなかった。準備のために早めに来たのだが、少しだけホッとする。


 リーナとユートが用意してきた資料を机に並べる間、クロダは念入りにカンペを確認していた。


(どうせ本番では頭が真っ白になるだろうけど……何かしていた方が落ち着くし)


 何度も読み込んできたカンペだったが、それだけに気持ちを整える効果はあった。予想以上に冷静さを保てている。


 そして、開始時間ちょうど。魔術研究課の面々がぞろぞろと会議室に入ってきた。


 先頭は課長のロドルフだ。


 ロドルフは、幹部会議で見かけたことはあったが、直接会話するのは初めてだった。


 床を引きずるほどに長いローブに、白く長いあごひげ。どう見ても典型的な魔導士という風貌だ。ギルド内でも明らかに浮いているのだが、彼に口出しできる者は誰もいない。


 ロドルフはどっかりと椅子に腰を下ろすと、余裕たっぷりの笑みを浮かべた。


「ふぉ、ふぉ、ふぉ。今日は何を聞かせてくれるのかの?」


 いよいよ、出番だ。全員の視線がクロダに集中する。


 クロダは大きく息を吐き、ゆっくりと立ち上がった。


「それでは……業務整備課から、業務における魔法利用についての提案をさせていただきます」


 クロダにとって運命のプレゼンが始まる。





 用意してきた資料をもとに、メリットとデメリットを順序立てて説明する。


「そもそも、ギルド規則で魔法の使用は禁止されているのでは?」


「はい。ですが、ギルドのさらなる成長のためには魔法は不可欠と考えております。生産部の部門長からは、魔術研究課の了承が得られれば規則改正を進めると約束をいただいています」


「事故のリスクはどうするんだ。魔法で問題が起きて、うちの責任にされたらたまらんぞ」


「もちろん、事故防止のために試験を重ね、安全を保証した上で導入を進めます」


「いくら気をつけても事故は起こるだろう」


「なるべく危険が及ばないよう、まずは業務のごく一部分に限定して試験導入したいと考えています」


 ときどき魔術研究課のメンバーから質問が飛んだが、イゼルが用意した想定問答の範囲内だ。クロダは噛まないように気をつけながら、用意してきた通りに回答していった。


「しかし、魔道具というが……実際にちゃんと作れるのか? 俺は詳しくないが」


「技術的には問題ないだろう。構造は単純だし、数日で試作品を用意できる」


 クロダが説明するまでもなく、魔道具担当らしい男が勝手に補足説明をしてくれる。


 もちろん、下調べで王都では同様の魔道具が既に実務利用されている、という情報は入手済みだ。


 驚くほど順調に進む。クロダは心の中で小さくガッツポーズをした。


 やがて質問も尽き、クロダは事前に用意した内容をすべて説明しきることに成功する。魔術研究課のメンバーたちは、難しい顔を浮かべながらも反論は出てこない。


(そりゃそうだ。みんなに利益が出るように計算した案だからな……)


 今回のプランでは、各課が魔術研究課の新開発の魔道具を買い取る形にしている。その価格設定もリーナが絶妙に調整してくれており、たとえ魔道具の効果が振るわなくても、魔術研究課には確実に利益が入る仕組みだ。


 理で考えれば、魔術研究課がこの話を断ることなどありえない。絶対に、ありえないのだ。


 そのとき、沈黙を守っていたロドルフがようやく口を開いた。


「ふぉ、ふぉ、ふぉ。なかなか、面白い案じゃのう」


 ロドルフは長いあごひげをいじりながら、のんびりとした声で感想を述べる。


 クロダは最後の一押しをかけた。


「ロドルフ課長、いかがでしょうか。お受けいただければ、魔術研究課にとっても大きな利益になります」


 クロダは息をのんだ。ロドルフの答えを待つ間の沈黙が、永遠にも感じられる。


 そして――


「嫌じゃ」


 ロドルフは即座に、あっさりと否定した。


「な、なぜでしょうか? もし気になる点があれば、すぐにでも改善に取り組みますが……」


 丁寧な姿勢を崩さずに食い下がるクロダに、ロドルフは悪びれもせず笑った。


「わしが嫌じゃと思ったから、嫌なんじゃ! ぜーったい、やらん!」


 どう見ても、この会議室で最年長のはずのロドルフが、まるで子どものように駄々をこねる。


 会議は、唐突に大荒れの様相を呈し始めた。


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