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社畜にブラックギルドはぬるすぎる!  作者: 城太郎
第六章・ホワイトギルド編
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41.謝罪行脚

 魔術研究課への提案書の作成が一段落し、クロダは自席で大きく伸びをした。


 今のペースなら、来週にも提出できそうだ。気持ちに少し余裕ができたクロダは、ふと自分のことを振り返る。


(自分で考えてやる仕事……疲れるけど、やりがいがある。悪くないな)


 最近ではユートも、クロダを見習うようにして自分で考え工夫するようになった。いずれイゼルやリーナに肩を並べる日も近いだろう。上司として、これほど頼もしいことはない。


(しかし、バルド課長やセシル課長、それに日本時代の上司も、こんなふうに思ってたのかな……?)


 クロダは過去の上司たちの顔を思い出し、申し訳ない気持ちがこみ上げてきた。


 自分は今まで、どれだけ周囲に迷惑をかけていたのだろう。どれだけ歯がゆい思いをさせていたのだろう――想像するだけで怖くなる。


(直接、謝っといた方がいいかなあ……)


 クロダは気が進まなかったが、それでも重い腰を上げた。まずは製品加工課へと向かう。





 製品加工課の執務室は、以前の喧騒が嘘のように静かで落ち着いていた。殺伐としていた空気はすっかり和らぎ、課員たちの表情も明るい。


(残業削減の改革が功を奏したのか……だとしたら、うれしいな)


 仕事を邪魔しないように気をつけながら、バルドの席へと向かう。


「おう、どうした? クロダ」


「随分と機嫌がよさそうですね。何かいいことでも?」


 バルドはニヤリと笑う。


「そりゃ、おめえたちの改革案だ。あれのお陰で、今週の売上はついに30%アップだ!」


「それは何よりです。……ところで、バルド課長にお話がありまして。少しお時間よろしいでしょうか?」


 昔なら「忙しい」の一言で済まされそうなところだったが、バルドは素直に頷くと、二人で資料室へ向かった。


「で、なんだ?」


 資料室でバルドと向かい合う。クロダはバルドに向かって勢いよく頭を下げた。


「今までご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした!」


 沈黙。


 数秒たって、クロダは恐る恐る顔を上げる。バルドは困惑したように眉をひそめていた。


「な……何の話だ?」


 クロダは、自分がこれまで考えずに仕事をしてきたこと、そのせいで迷惑をかけたであろうことを説明した。バルドは一瞬ぽかんとしたが、やがて大笑いした。


「ガハハハハ! つまんねえこと言うようになったじゃねえか!」


 今度はクロダが面食らう。何と言っていいのか分からない。


「なんだ、わざわざそんなことを言いに来たのか?」


「……そ、そうですけど。でも、やはり伝えておいた方がいいと思いまして」


 額の汗を拭うクロダに、バルドは近づいて肩をポンと叩いた。


「そんなことを言うなんて、十年早ぇよ」


 それだけ言い残すと、バルドは笑いながら大股で資料室を出ていった。


(どういう意味だ……?)


 クロダは狐につままれたような表情で、バルドが去った扉を見つめていた。





 続いてクロダは素材調達課を訪れた。


 以前と同様、静かに仕事をする課員たちの間をすり抜け、セシルの席へと向かう。


「どうしたのですか。今日はとくにミーティングの予定はなかったと思いますが」


 手を止めずにそう問いかけるセシルに、クロダは思わず頭をかいた。


「いやあ、思いつきで、少し話せないかなと思いまして……」


「思いつきで行動するものではありませんよ」


 辛らつな言葉だったが、それでもセシルはクロダを応接間に案内してくれた。応接間でセシルと向かい合うと、クロダは深く頭を下げる。


「今までご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした!」


「……まったく、あなたには本当に苦労させられました」


 冷たい言葉にクロダの心臓が跳ねる。恐る恐る顔を上げると、意外にもセシルの表情は穏やかだった。


「ようやく、あなたにも仕事というものが分かってきたということですね」


(やっぱり……セシル課長はお見通しなんだな……)


 セシルの慧眼は敵わないと、クロダは素直に頷いた。


「はい。自分で考えて仕事をすることの重要さが分かってきました」


「……まったく、ようやくスタートラインに立ったというのに、情けない顔をしてますよ」


 セシルはため息をつきつつ、クロダを真っすぐ見据えた。


「ま、なかなかいい顔になってきたんじゃないですか?」


「え?」


 セシルはそれ以上何も言わず、静かに部屋を出ていった。クロダは一人残される。


(なんか、予想外の反応だったな……)


 バルドもセシルも、クロダの謝罪に対して怒ってはいなかった。もう少し小言を言われるかと思っていただけに、肩透かしを食らった気分だ。


(迷惑をかけていた、とは思うんだけど……。上司の気持ちって、やっぱりよく分からないな……)


 クロダは釈然としないまま、応接間でしばし立ち尽くしていた。


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