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社畜にブラックギルドはぬるすぎる!  作者: 城太郎
第五章・業務整備課編
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29.セシルのフィードバック

 イゼルは早速、窓口で作業しているメンバーたちに改革案を伝えに行った。ユートもそのあとに続く。


 執務室には、セシルとクロダ、リーナの三人が残された。


「クロダ」


「は、はいっ!」


 急に呼びかけられ、クロダは反射的に直立不動になる。


「……今はもう課長同士なのですから、そんなにかしこまらなくてもいいでしょうに」


「い、いやあ……くせで、つい。すみません……」


 クロダは照れ笑いを浮かべながら、頭をかいた。


「それはともかく。クロダ、今回の改革案を私が承認した理由が分かりますか?」


 不意の問いに、クロダは戸惑う。


(承認した理由……? そんなの、この案が優れていると思ったから、以上の理由があるのか……?)


 思ったままに答えてみたものの、セシルの表情は渋い。


「その様子では、次回以降の提案はうまくいきそうにないですね」


「なっ……!」


(何かダメなところがあったってことか……? もしかして……セシル課長の温情だった?)


 続きを聞くのが恐ろしくなり、思わず尻込みしていると、リーナが助け船を出してくれた。


「申し訳ありません。何か至らぬ点がございましたか? もしよろしければ、今後のために教えていただけますでしょうか?」


 リーナの素直な態度に、セシルは一瞬だけ迷ったようだったが、やがて静かに語り始めた。


「あなた方の改革案を採用した理由は、説明された以上のメリットがあると判断したからです」


 クロダは思わぬ言葉に目を丸くした。


「え……そんなのありましたっけ……」


「あります。たとえば、素材の仕分けが簡略化できます。窓口ごとに種類が分かれていれば、箱詰めの段階で、すでにある程度整理された状態になるでしょう」


 クロダは、研修の時の仕分け作業を思い出す。


(たしかに……あのとき、箱の中はあらゆる素材がごちゃ混ぜに詰め込まれていた。あらかじめ分類されていたら、どれほど楽だったか)


 感心するクロダをよそに、セシルの言葉は続く。


「さらに、挙げていただいたデメリット……流通量の多い素材に関しても、対策可能です。専用窓口を作るなり、複数窓口で対応するなり……工夫の余地はいくらでもあります」


「な、なるほど……」


「そして、顧客目線でも利点があります。高価な素材は確認に時間がかかりますからね。高級素材専用の窓口を用意すれば、一般利用客の待ち時間を減らせます」


 セシルの挙げたポイントは、業務整備課の会議ではまったく出てこなかったものだった。リーナは横で一心不乱にメモを取っている。


「少し考えただけでも、これだけのメリットが出てきます。しかし、それが説明には一切含まれていなかった。つまり……」


(つ、つまり……?)


 セシルはクロダの肩をぽんと軽く叩くと、淡々とした口調で言い放った。


「プレゼンが致命的に下手、です」


「んがっ!!」


 クロダは悶絶した。


(久々の……ド直球な苦言……! 懐かしい……胸にしみるなあ……)


 痛いところを突かれて項垂れるクロダをよそに、セシルの死体蹴りは続く。


「四人がかりで考えて、今話したメリットが出てこなかったのでしょう? プレゼン相手に考えさせているようでは、三流もいいところです。」


「うっ……」


「メリットをこれでもかというくらい並べて、それでも却下されるような世界に我々は生きているんです。つまり、今回の改革案が受け入れられたのは……たまたまですよ」


「はい……」


 容赦ない評価に肩を落とすクロダだったが、リーナは逆に目を輝かせていた。


「ご指導、ありがとうございます! 次回以降、改善いたします!」


 セシルはその言葉を聞くと、今まで見たことのないような柔和な表情を浮かべた。


「あなた、なかなか見どころがありますね。リーナさん、でしたか。……どうです、素材調達課に興味は?」


「えっ?」


 予想外の勧誘に、リーナは固まる。


(ま、まずい! 俺の大事な初めての部下が!)


 クロダは慌てて二人の間に割り込み、声を張った。


「彼女は業務整備課の大事な戦力ですので……! では、我々もこの辺で。お時間をいただき、ありがとうございましたー!」


 そう言い放つと、クロダはロープに縛られた不自由な身体を必死に動かし、リーナの持つロープをぐいぐいと引っ張っていく。そのまま、ぴょんぴょんと跳ねるようにして、素材調達課の執務室をあとにした。


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