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社畜にブラックギルドはぬるすぎる!  作者: 城太郎
第三章・伯爵令嬢襲来編
16/47

16.アリシア、作戦を立てる

 使用人たちに丁寧に出迎えられながら屋敷へ戻ったアリシアは、いつものように自室のベッドへと身を沈めていた。


「コンラッド! 来てちょうだい」


「はい、お嬢様」


 アリシアの声を待っていたかのように、コンラッドがすぐに姿を現す。


「あの男を手に入れたいのだけど、どうしたらいいかしら?」


「クロダ……ですか」


 アリシアはベッドの上で枕を抱いたまま、黙って頷く。こうなったアリシアは、もう止まらない。


 コンラッドは手帳を取り出し、事前に調べておいた情報を読み上げ始めた。


「クロダ。27歳、出自は不明です。一か月ほど前からギルド《黒鉄の牙》に所属。上司や同僚からの信頼も厚く、有能な人物であることに疑いはありません」


「そんなこと分かってるわ! 私が見つけたんですもの! 当然よ!」


「はい。そして、クロダ本人は勤務体系や給与体系には大いに満足している様子。ゆえに、引き抜き工作は難儀かと思われます」


「……そうよね。あれだけの条件を提示しても、びくともしなかったんですもの……」


 アリシアは枕にあごを乗せ、窓の外を見つめる。表情には、ほんのりと哀しみが浮かんでいた。コンラッドも、静かに同意する。


「あの条件を呑まない者がいるとは、思いませんでした。しかし、そうとなれば――"外"から攻めるのが得策かと」


「外?」


「はい。《黒鉄の牙》はお嬢様もご存知の通り、“ブラックギルド”として悪名高い組織です。あのギルドの悪事の証拠を掴むことができれば、従業員を“救出”する口実になるでしょう。もちろん、クロダも含めて」


「それは、いい考えね!」


 アリシアは枕を放り投げ、勢いよくベッドを飛び降りる。そして机に向かうと、すぐさま筆を取った。


「影の者に監視を依頼しましょう。それと、内部の職員を何人か懐柔して、情報を引き出すの」


 作戦はてきぱきと組み上がっていく。その瞳には、まばゆいほどの闘志が燃えていた。


「絶対、手に入れてやるんだから……!」


 今でこそアリシアは平穏な生活を手にしているが、幼い頃は不遇な暮らしを強いられていた。


 跡継ぎ争いの渦中にあって、兄弟姉妹の仲は険悪。とくに末妹であるアリシアへの風当たりは強く、命を狙われたことも一度や二度ではない。


 父譲りの政治力を駆使し、兄姉たちを力づくでねじ伏せたアリシアだからこそ……能力がありながら環境に恵まれない者への想いは、人一倍強い。


 コンラッドもまた、もとはアルセイン家に仕える武官だったが、兄弟間の争いに反対したことで地位を追われた。手を差し伸べたのは、他でもないアリシアだった。


 そんな彼女が、クロダを見捨てるはずがない。コンラッドは、穏やかな目で彼女を見守っていた。


「……ところでお嬢様。本日ご購入された、ワイルドタイガーのコートはどういたしましょう?」


「いらないわ」


「……えっ」


 さすがのコンラッドも、この返答には固まった。


「あそこで何も買わなかったらクロダが困るだろうから、買っただけよ」


「でしたら、あそこまでの高級な品でなくても……」 


「でも、でも、あれね、毛並みはいいのよ。だけど重いし、動きづらいし……」


 アリシアは腕を組んで唸っていたが、やがてパチンと指を鳴らした。


「バスマットにでもしたら?」


「100万ブラックの、バスマットですか……」


 コンラッドは絶句した。しかし、こうなったアリシアに口答えしても無駄なことは、よく知っている。恭しく一礼すると、何も言わずに部屋をあとにした。


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