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社畜にブラックギルドはぬるすぎる!  作者: 城太郎
第二章・製品加工課編
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11.おもしれ―奴……

 クロダが製品加工課に配属されてから一週間後。


 定例の幹部会議がいつものように開かれていた。


 最近の幹部会議は発足当初の目的などさっぱり忘れ去られ、誰もが惰性で参加するだけの無意味な時間となり果てている――はずだった。


 しかしながら、その日の会議は思いがけず熱気を帯びていた。


「今週の売上ですが……製品加工課が40%アップ……?」


「まさか、製品加工課が? 集計ミスじゃないのか?」


「他の部署は軒並み微減か、せいぜい現状維持が精一杯なのに……」


 幹部たちは一様に目を見張り、動揺の色を隠せなかった。その中でただ一人、バルドだけが余裕の表情で腕を組んでいる。


「おい、バルド! まさか、不正をしたんじゃないだろうな!」


 魔術研究課の課長が机越しに身を乗り出すように食ってかかる。しかし、バルドはその剣幕を涼しい顔で受け流した。


「不正? んなもんやるかよ。どうせ調べりゃすぐにバレる。そんな無駄な真似、するわけねえだろ」


「だったら……一体どうすればこんな数字が出るんだ?」


 釈然としない表情の魔術研究課長を横目に、バルドはニヤリと悪い顔をした。


「最近、ちょっと面白ぇのが入ってきた。それだけの話だ」


 そのとき、会議室の端でじっと様子をうかがっていた素材調達課のセシルと、バルドの視線が交差した。


 セシルは一瞬だけ口元をゆるめ、意味ありげに笑う。バルドも負けじと挑発的な笑みを返した。二人の間に火花が飛び散る。


「そんなことよりも」


 総務課の課長であり、議長を務める男が話の流れをぴしゃりと断ち切った。


「みなさん、分かっているでしょう。来週――あのアルセイン家の令嬢が、この街を訪れるということを」


 アルセイン家。


 その名前が出た瞬間、会議室の空気が一変した。ぴんと張り詰めた緊張感が走り、場内は一気にざわめき始める。


「アルセイン伯爵家、ですか……」


「前回は……思い出すだけで胃が痛い」


「また“あの時”のようなことになれば……今度こそうちのギルドは終わりだな……」


「はい、はい、静粛に、静粛に」


 議長が手を上げると、室内のざわめきは徐々に収まった。


「つきましては、アルセイン令嬢の対応を、いずれかの課に一任したいと思います。どこか希望はありますか?」


 幹部たちは顔を見合わせるが、誰一人手を挙げようとはしなかった。議長は小さくため息をつく。


「……本来なら、名誉な役目のはずなんですがね。それでは――今回、売上トップとなった製品加工課でどうでしょう?」


 この提案に、すかさず幹部たちが賛成の意を示す。


「いいな、それが公平ってもんだ」


「売上アップのご褒美だよ、ご褒美」


「あー、うちが担当したかったが、今回は譲ってやろう」


「そうそう、大事な仕事は、信頼できる課に任せないとな」


 露骨に厄介ごとを押しつけようとする幹部たちの様子に、バルドは内心舌打ちする。


 ふと、刺すような視線に気づいたバルドは顔を上げた。


 セシルだ。


 他の幹部たちがニヤニヤ笑っている中、彼だけは笑っていなかった。何かを見透かすように、じっとバルドを見つめていた。


(チッ……何を企んでやがる)


 バルドは視線に気づかない風を装って目を逸らすと、自信満々に胸を叩いてみせた。


「おう、任せろ。必ず成功に導いてやらあ」


 言葉とは裏腹に、バルドの頭の中はすでに全力で回転していた。


 たしかにこの任務は大役だ。もし令嬢の不興を買うようなことがあれば、せっかく好調な売上も水の泡となる。それどころか、自分の立場すら危うくなりかねない。


 だが、それだけに――成功したときの見返りは、大きい。


(それに、今の製品加工課には……“あいつ”がいる)


 バルドは胸の内でほくそ笑みながら、来週の段取りを練り始めた。


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