ブックカバーを求めて
冒険世界 異世界衣服店
「いらっしゃいませ、ごゆっくりどうぞ」
こうして店に直接やって来たのは初めてだな。
今はシスター服から着替えて特注品らしい漆黒の軍服姿になっている。
特注品の発注受付は……あった、あそこか。順番待ちはなさそうだな。ナイアーラトテップの印と呼ばれる意匠が入っていたら後はご自由に装飾していいという内容にしておくか。
「ブックカバーを一つ頼みたい」
「おいおい嬢ちゃんよぉ?俺たちが順番待ちしていたって分かんなかったのか?割り込んで入ってくるとはどういう了見だぁ?」
「クラン連合〔猫紫苑会〕の鉄砲玉である俺たちに喧嘩売るとかEHOをまともに楽しめなくなるぜ?」
「お疲れ様です。副店長がお会いになるそうなので、そちらの案内に従っていただけると幸いです」
「……コレの改善を議題に上げて置け。無理そうなら出禁にして追放で」
「かしこまりました」
受付嬢は知っていたようだな。いや、あの受付嬢『逸般人』の打ち合わせの時にしれっと混ざっていた奴だわ。
我ってば行動パターンがご隠居に等しいからネ。それに雑に煽られると身分的に受け流すわけにもいかない。
神としての身分も得た訳だからなおの事しがらみが面倒ぞコレ。
◆ □ ◆ □ ◆
「お越しいただきありがとうございます」
「ブックカバーを一つ頼みたい。これが仕様書だ」
副店長は着物美人とでも言うべきか、気迫だけなら男にも勝るであろう人だな。このクランの背景を考えると修羅場慣れしてるよな。
「ふむ、ご予算はどの程度をお考えでしょうか?」
「こう言ってはなんだが、相場の類が分からん。予算に糸目はつけんから後でうちの商会に請求書を送っておいてくれ」
「かしこまりました。ところで頑丈さをお求めの理由をお聞きしても大丈夫でしょうか?その内容次第で使用する素材を判断する材料となりますので」
「とある戦闘にも使用する魔導書を入手した。しかし、その表紙が厄介な代物で作られていたのでな。その表紙を隠すのに使用する。それで頑丈さを求める理由は戦闘でも使用するので破れたりして中にある本の表紙が見えてしまっては困るという事だ」
「なるほど」
手作りの冊子を読み始めた?いや、あれは素材のサンプルを張り付けた見本みたいだな。いちいち紐で縛ってくくり直してとやるには手間が掛かる。
商品開発依頼は別にどこの部署が投げてもらっても構わんのだがな。遠慮か……知らないのか……それとも……ん?この話を髭に通した記憶ないぞ。コレを話したのあのギャンカスだわ。
となると周知されていないのも納得だな。
「副店長、文房具類で向こうにあってこちらにない欲しい商品があるのならうちの開発部に話を持って行ってもらって構わんよ」
「あら……お気遣いありがとうございます。この商談が終わり次第持って行かせてもらいますね」
「ああ。紹介状も念の為預けておこう」
「それでですね、可動部以外に金属板を入れる事で頑丈さという耐久性を持たせたいと思うのですが、この方向性でよろしいでしょうか?」
「ああ。なるべく早く頼みたいが、細部や納期はそちらに任せる。いつも渡されていた服はどれも気に入る品だからな。できれば男装系の物を増やして欲しいとは思うぞ」
「オーダー、承りました」
お互い苦笑で商談を〆る。さて、どこで確認作業をしようか?
異世界衣服店:猫さん御用達のブランド〔コスプレ組〕の屋号にして店舗名
キャラのなりきりプレイをしたいプレイヤーから贔屓にされている
あとは街中でオシャレした女性陣




