物理の世界2
「アイリス、起きてー」
「んんむぅ……」
ダメだこりゃ。死にかけて気絶したにも関わらず、活動可能な環境に戻った瞬間熟睡状態へ移行だからな。
切り札やりますか。
「納期」
「すみませんやりますやらせてください!!」
「アイリス、この御仁のボディがメンテナンス可能かどうか診てくれ」
「ア、ハイ!」
「すまんが、世話になる。この体に使われている技術でよかったらいくらでも盗んでくれて構わない。だが、パーツそのものを持っていかれては困るからそこだけはやめてくれ」
「調べるだけ調べて最善を尽くさせてもらいます」
さて、向こうの対応はアイリスに投げたからな。それで、エピゾとクロエは狸寝入り、アールグレイは普通に気絶状態から復帰していない。となると離れた場所で取り出すか。
「フランセット殿」
『手間をかけたな』
「いえ、魔力が存在しない世界だったようです」
『それは誰かから聞いた話なのか?それとも実験を繰り返した末の結論かなの?』
「アトランティス出身を名乗る方から聞きました」
『かの統一世界か。して、その御仁はどこに?』
「向こうでアイリスにメンテナンス作業を任せるという形で応対させています」
『そうか……確認だが、お主は影響を受けることなく活動可能なのだな?』
「はい。仮にゲートが閉ざされようともこの身に宿る力を使いこなせばこちらに戻ってくることはできます。その後に再度向こうへ渡ろうと思うとかなり難しいですが」
世界の裏側に落ちて裏側経由で……って言うとバグみたく聞こえるだろうが、実際に似たような挙動しないと戻れるルートが脳裏を駆け巡らないからな。
安全策を取って行動するのは逆に周囲が不安全な状態になる事をさすぐらい魔力が使えないというのはキツイ縛りだな。
閑話休題
『偵察を頼めるか?こちらでも向こうで活動するための装備を開発するのでな』
「了解。向こうの世界の情報を聞き出したら拠点を用意できるように行動しときますよ」
『ありがたい』
◆ □ ◆ □ ◆
「話を伺っても大丈夫ですか?」
「構わん。今は義手を取り外してメンテナンスをしてもらっている最中で口は暇なのでな」
「では単刀直入に、物理世界に人が住んでいるかどうか、住んでいるのならその文明のレベルはどのようなレベルなのかをお教え願えますか?」
「100万人ほどではあるが、人間が住んでいるな。文明のレベルと言われると答えに困るが、機械工学が発展していると言ったところか?ああ、でも十分に高度な科学技術は、魔法と区別できないと聞いた事があるが、あれは真実だったのだと思い知らされたな」
ポーカーフェイス、ポーカーフェイス。顔が引きつっている気がするけどポーカーフェイスは維持しましょう。
調べるべきアレコレは見えてきたし、メモも用意したからあとは当たって砕けるだけだな。
ニャルがプログレスか権能を持っていたら多分ニャル単騎で物理世界に適応する為の手術をできたかもしれない
現状でもやれなくはないけど、もれなく制御不可のパンデミックの芽をばらまく行為なのでやらないです