未知なる設計図 前編
「あ、そうだマスター」
「ん?」
「賽祈箱にグレイのバカが優勝して得たポイント注げるだけ注ぎこんでこの一冊の本に変えたよ」
「賽祈箱?」
「イベントポイントで交換できる報酬の一つで、所謂ガチャだよ。奇跡の秘箱っていう課金アイテムが出る物と違ってシークレットが出る可能性があるけど、確率がかなりしょっぱくなる奴です」
シークレットというロマンに魅かれてやったなグレイ。わからんでもない。
確定で最低レアリティしか引けないので天井が無いゲームのガチャはやらないと豪語する人と引いた物が確実に環境入りする覇運の人が知人に居ると普通に一喜一憂する事が出来るだけありがたいと思えるんだよな。
閑話休題
さて、アイリスから差し出されている本の中身を流し読みで改めるとするか。
内容としては……文字は単語でしか解読できないが、挿絵の図形や記号から察するに設計図か?作成する上で必要な特殊な技法についても書かれているっぽいな。
「コレのレアリティは?」
「黒だってさ。あ、そっか。マスターは知らないだろうから説明するとランクはXで意味はシークレット」
「作ったのか?」
「無論。というか、コレを読んだフランセットが『我輩の肉体たる依代の整備なんぞ後回しで構わん!むしろこっちを先に作れ!我輩も全力でサポートしようぞ!』ってすごい勢いでこっちに迫ってきたから」
「わ、わ~お」
あの老竜そんなバイタリティーあったんだ。いや、知らないことが多いだけだな。
ん?専門用語が多くなったのか解読難易度が上がったが単語だけで読むと、移送、転移、転位、世界、次元、空間、移動、接続……そしてこの挿絵の形は……まるで……まさか!
「この設計図はゲートなのか?」
「ご名答。某機械生命体達が使っていたゲートを思い出すデザインでしょ」
「ああ、そう言えばロマンの分野で語るならコレはお前の分野だったな」
「ふふ、仮にだよ、仮に。あの作品をモチーフにした世界に繋がったとしたら変形用のギアも存在するかもしれないんだよ」
「目がハートになって口が蕩けてるぞ」
「ふへへ……最高のロマンじゃん」
わからんでもない。メカ好きが好きな要素を煮詰めたような作品だからな。




