デスマーチ系修羅場の錬金術師達
「さてと……」
「お疲れ様です姉御」
「だよな」
ログイン早々側にサライが控えてる日常よ。ある意味ホラーとも言えるわ。ただ、我にあてがわれた執務室でのみ起こるイベントともいえるな。
「『逸般人』の原稿について何か話は回ってきてるか?」
「特には。『騎士王』編については城下街を前後編にして、『騎士王』を単独で掲載する事で三部に別けるそうです」
「なんとなく分かるわ。休人内での独占取材だからな。観光ガイドを作る気概で取材したから削るにしても量が膨大になっている」
「アイリス嬢から石油と伝えて欲しいと伝言を預かっているのですが、なにかご存知でしょうか?」
思わずムンクの叫び状態になったことは許して欲しいと思う。
そんなに石油が欲しいのかよ。現在の尺度で語るなら無尽蔵とも思える魔力量を供給してくれるコアがあるのにまだ足りぬと申すか。
「関係者に聞き込みに行きたい。アトリエまで案内を頼む」
「押忍。かしこまりやした」
◆ □ ◆ □ ◆
「マナポ持って来い!」
「生産追いついてません!というか材料が枯渇気味です!!」
「冒険者ギルドに大規模発注掛けてこい!アイリス様の思し召しだ!!」
「錬金術師だけじゃなくて薬師もとっ捕まえて来い!ポーションを量産させろ!」
なにこの修羅場。デスマーチの真っ只中?ブラック企業のデスマーチでももう少し温情が合った気がするのだが……いや、知っているソレは例外of例外な環境だから比較対象にならないか。
「副責任者でてこいやー!」
「あ、どうもですボス。忙しいので用件は手短にお願いします」
「資金源はどうなっているの?」
「ロマンの為に借金地獄ですよ?返済は現在の作業が一通り終わってから開始にしてよいと言われてますから」
「石油で何をやろうとしている?」
「プラスチック製品の作成、ひいては電力の代わりに魔力を利用した基盤の作成です。今はまだ余裕が無いので回せていませんが、燃料としての使用も後々の視野に入れています」
うん、コレ休人の魔力でゴリ押ししようとしているからダメってことだな。早急に対応しないと過労死者が出かねんな。
「ちなみに、アールグレイさんなら既に三度ほど過労死してますよ」
「は?」
「魔力操作の練習と称して手伝っていただきましたがログに残っている死亡理由が過労死が三連続で並んじまったわと逃げられました」
そうか。
となると、行くべき場所が決まったな。
「他の奴は過労死するんじゃないぞ。で、サライ」
「最新版のカタログを五冊ご用意してあります」
「……クロエから何か学んだのか?」
「お嬢からは姉御に仕える上で必要なあれこれを指導していただいておりやす」
「うん、足手纏いになるからお前は待機な」
弾丸取材強行決定だな。