商人と接触
「姉御、着きましたよ」
「ん?路地裏?」
「いや、流石に人目がある場所で袋から人を出すなんてできないでしょうよ」
「正論ね。行くわよ」
「へい!」
此処って、もしかしなくても私が誘拐された路地裏?まあ、案内について行きますけど。
案外噴水広場は近かったね。それで、目当ての人物は……多分アイツかな。近くで合言葉を呟いて反応を確かめるとしますか。
「ナーヴァ・ラージャ」
「マスターで一人目ですよ」
「やっぱりお前だったか髭紳士」
「ええ、そちらもずいぶんと凝ったキャラメイクをされたようで」
「こっちは天然モノだ。その渋い面の似合う服装にはやくなれるといいな」
シルクハットとタキシードの似合いそうな髭がトレードマークな老紳士、ナーヴァ・ラージャ。今回商人として普段のプレイを楽しむと宣言していた奴だ。
実際、リアルでも個人経営の商店としてはそこそこ稼いでいる方らしいからな。
お金方面でシナリオを潰しにくるタイプのプレイヤーだからな。シティアドをやらせると金を稼ぐ手法をいくつも使いまわしてしたたかすぎる商人の人って共通認識が生まれる程度には趣味が実益に繋がるタイプのプレイングをしている。
髭紳士はネット上での活動名だから、どちらで呼んでも本人は構わないと書いていたがな。
「商会作るのか?」
「作りますよもちろん」
「人手は確保してやった。後はお前の腕次第だ」
「流石、としか言えませんねマスター」
「偶然としか言えん」
「人数は?」
「30程」
「男女比は?」
「おおよそ9対1。磨けば光る」
「拠点などは?」
「小規模ながら存在する」
「パーフェクトですマスター」
「感謝の極み」
外見だけで語るならセリフ逆だろとは思うが、動作を省略して口頭だけで行う。このやり取り好きな奴は隙あらばやろうとするからな。
……仮に戦争のような事態に巻き込まれたら、演説は少佐のモノをアレンジして使わせてもらうか。
「それにしても吸血鬼ですか?」
「名前を見ろ。それが全てだ」
「にしても、よくその名が通りましたね?」
「普通のとは一味以上違う偽名の作り方をしているからな。禁止ワードが存在して、すり抜けを行ったとしたらソレぐらいしか心当たりはないぞ」
「さようで。であれば、名を隠した方がよろしいかと」
「神話関係調べたのか?」
「雑談程度ではありますが、存在をほのめかされたので用心するに越した事はないかと」
なるほどな。だが、名の変更は余程の事が起きない限り不可能だと利用規約にも表記されていた。
R18なワードではないから規制が掛からなかったとも考えられるが……邪神の信者扱いされるのも困るな。
必要がないなら引きこもりをこっちでもやるしかないという事か。
「我がここで待機する。コレと一緒に顔合わせ行ってこい」
「えっと、拠点までこの方を案内した後、姉御の迎えにここまで戻ってくればいいんですね?」
「頼んだぞ」
このまま他の面子と顔合わせを無事に済ませられるといいのだがな。