伝説の闘技大会16
「相手は大蛇か。インフレの加速が過ぎ去っていたのであればヨルムンガンドか?と疑ってしたうが……クロエ」
「神話固有生物の目撃情報はありませんね。アナコンダが更に巨大化している感じかと思われます」
「同意見だ」
ただし、牙から液体が分泌されている事から毒持ちの可能性を考慮しないといけないが……対生物用の毒でしかないのであれば相手が悪すぎたな。
アールグレイの騎獣は鋼鉄の機械だからな。クジラなどの汐吹の方が効果は抜群だ。塩は錆を呼ぶファクターとなり得る……が、その辺りはファンタジー塗料によるコーティングで対処済みかもな。
「初手は締め付け、対抗できる力が無ければそこで終わりだが……」
「装甲がどのような合金を使用したのかわかりませんが、歪み一つおきてなさそうですね」
「正直な話、表面に魔法による結界が構築されて耐えてるだけだと思う。流石に背中の武装に凹み一つできてないというのは使用材料的にちょっと不自然過ぎるからね」
機体となっているドラゴンが防御をおこなっている。であれば操縦者であるグレイの奴は何をやっているんだ?
魔法による補助があれば動けない訳では無いだろうに。
「あ、まさか!あの試験段階のコードを入力してるの!?」
「アイリス、詳細を」
「放電コマンド。試験段階中の機能に関してはプログラムコードを直接入力しないと起動できないようにセーフティーを掛けてるのよ。そのうちの一つに発電機関を暴走させて周囲に高圧の電流を放出する放電機能を組み込んでいる……って機能説明書に書いといたけど、本当に実行するとは思ってなかったのよ。だってほぼ自爆コマンドになるから」
「あ、頭部に噛みつかれた」
「牙通ってませんね」
圧倒的劣勢というわけでも無いのに自爆は選ばんだろ。たしかに爆発はロマンと言える。だが、むやみやたらに爆発してもロマンには繋がらない。ソレを理解していないわけではないはずだ。
それと、いまの噛みつき攻撃で牙が貫通していなくてよかったな。外部装甲は無事でも内部に毒液を注がれると基盤が痛んで動けなくなっていたかもしれんからな。
あと、操縦者本人に掛かっていたかもしれないからな。
運が味方している……と考えると、試合の流れにどこかのだれかの思惑が絡み始めてるとすら勘ぐってしまうな。
「逆転……とは言えんが、ここからどうやってアピールしつつ圧勝するんだ?」
「我が主、私の推測なのですが、電気を纏うことにより接触攻撃への牽制を行い、仕切り直そうとしているのでは?」
放電出力の調整次第ではそういうことも可能……だな。
プログラムコードを即興で作成してるので動かないアールグレイです