伝説の闘技大会13
「そう言えばマスターがどこか行ってる間に準決勝終わったよ。しばらくしたら3位決定戦始まると思う」
「そうか……そうか」
グレイの奴の試合は見たかったんだがな。呪いへの対応をしている間か?五感が機能停止していたとすればそのタイミングだし、マイナーよりになっているとはいえ、公式の大会だ。
流石に普通の状態で歓声を聞き逃したとは思えん。
気になることもあるし、知識調査を兼ねて聞いてみるか。
「カガリ、キョウカ、どっちでもいいから今から行う質問に答えてくれ。相手の騎獣はどういう種族だった?」
「えっと、ユニコーンとペガサスのハーフっぽいなにかでした」
馬をベースとしたその二つの幻獣を分ける特徴は角と翼。
額に立派な一本角が生えているユニコーン、胴部から鳥を彷彿とさせる巨大な翼が生えているペガサス、そのハーフという事は両方の特徴を持っていたという事か。
この場合の仕分けは確か角よりも翼が優先されてペガサス扱いだったな。
「角の本数と翼は何対あった?」
「二本と一対です」
「となるとペガサスの他に挙げる名はユニコーンではなくバイコーンだな」
純潔のユニコーンに不純のバイコーン。原典と亜種とも呼べる二種だが、通説として言われている好みはほぼ正反対……アズル騎士団のメンバーがペガサスとはいえバイコーンに似た存在を使役しているか。
外聞だなんだとうるさい奴が現れそうだが、信仰する神であり、教え導く教祖がバイコーンよりだからな。子が居る。それだけでユニコーンは嫌う存在となる。
厳密に言うとユニコーンが好む相手が純潔の清らかな乙女という厳しい条件故に大抵はバイコーンが好むかもしれないという身勝手な理屈に過ぎんがな。
閑話休題
「聞くのを忘れていたが、クロエ」
「なんでしょうか?」
「お前、今回の闘技大会に出場するのか?」
「そう……ですね、我が主がお望みとあらば出場して参ります」
「準備してないなら行かなくていい。それよりも観戦予定だった試合が終われば取材に行く予定だ。つまりは観戦する気が一切ない」
最強と名高い『超越者』にして唯一無二の万能とも言われる権能の持ち主。
それが次の取材予定の相手。勝てる勝てないではなく、休人に認知してもらう事が重要だと思っている。
住民をただのNPCとして扱い、犯罪をして投獄される馬鹿が増え続けられると困るからな。
友好的に接し、よき隣人であり続けている我ら商会やクラン連合に対して喧嘩を売ってるも同然の話よ。
だからこそ、抑止力については調べておくにこしたことはない。
何処までがグレーラインで何処からが黒く染まった道なのかを。