誘拐されて
「……噴水前か。姿だけ確認して移動しておこう」
独り言を呟く。口に出して語る事で思考を整理して、目的を明らかにする。いつもの行動に他ならない。
まあ、口に出したら不味い情報だらけの時は脳内で完結させてますけども。
「ふふ……実験成功」
噴水に写る姿は先ほどまで語り合いあっていた女神そのものだった。
流石に今のレベルでは服までは再現できなかったが、容姿はデフォルトがコレだとシステムが定めるように決定してくれたみたいだ。
じゃないと、某犯人の如く全身真っ黒な謎の人型存在の誕生である。
惚れ惚れする程美しいと思った相手の姿に成れたのだ。彼女に不利益とならない様に行動には気をつけておこう。
移動を行いながら所持金を確認する。システムウィンドウの思考操作が可能で助かっている場面とも言えるな。
確認した物価などから初期配布の金額してはありふれた程度しか貰えてないな。
どこか喫茶店にでも入り、ゆっくりと贈り物他確認出来なかった事を確認したいが……
「んえ?」
急に引っ張られ、路地裏に引き摺り込まれてしまったようだ……驚きのあまり、マヌケで可愛らしい声も出てしまったな。
抵抗する事なくされるがままに受け入れていたら、手足を縛られ口を封じて袋詰めにされてしまった。
この際だ、とことこんこの話に付き合うとして、荷として運ばれている間にスキルの鑑定などを行い、この後の事に備えるとするか。
幸い、瞳を閉じていようとシステムウィンドウは見える様だしな。
(模倣)スキルで女神の生き写しなり、(記録)スキルでこの姿を忘れぬモノとした。女神の姿な理由についてはコレがすべてだ。
正直な話としてスキルだとかのステータス類は一切変化しない。ただ、姿形が変わるだけの能力と言えるだろう。
(キャラシ作成)スキルと(ダイスロール)スキルの二つに戦闘能力を掛けたギャンブルな構成と言えるだろう。
(キャラシ作成)は自分に適用されているシステムのキャラクターシート、つまりはキャラメイクを行うスキル。作った後はソレを肉体に適応させる事が可能。
(ダイスロール)は行動の際に、賽を投げる事で可否を定めるスキル……らしいのだが、(鑑定)による説明以上の詳しい事は使って見ないと分からないな。
それにしても何処へ連れてかれているのだ?
暇潰しに(キャラシ作成)を何度も試して、軽い検証が出来た程度にはそれなりに時間が経っているはずなのだが……ステータスを見るに脱出可能な気がするけども……せっかくのレアそうなイベントである以上は最後までやりたいのだがな。
もうしばらくだけ待機しておくか。
貧弱そうで可愛らしい存在を簡単に拐えそうだったらねぇ……治安悪い場所を彷徨いていたニャルさんの落ち度ですネ