死は明日への希望となりて
「有用な技術は見つかるが、動力源ってなると点で見つからんな」
「あ~~今日は落ちて寝るわ」
「私も仕事あるし寝るね」
アイリスとキバーラルは寝るのか……ん?キバーラル仕事の予定入ったの?珍しいな。
スーツアクター兼スタントマンをやっているそうだが、事務所側が気を遣ってなのか安全な仕事しか回して貰えず金欠なのだとか。
その分事務所の先輩方に食事奢られてるらしいけど。
「あ、ボス」
「どうした?」
「エピゾの姉御からSOSが出たから切り上げて一緒に来ないか?」
「…………は?」
「俺もそうなった。だけど、マジの座標送られて来てるからさ」
「行くか」
「ああ」
◆ □ ◆ □ ◆
「来たぞ~」
「あ、グレイくんだけじゃなくてししょーまでありがとうございます」
「いや、別にそれはいいんだがお前が助けを欲する状況って割には穏やかだな」
現在、山奥の洞窟前にてエピゾと合流した。
状況からの推察でしかないが、この洞窟の中にエピゾが困っている原因があるのだろう。
「この洞窟の中には~ドラゴンさんがいるんですよ~」
「「はぁ!?」」
「二人してどうしたんですかぁ?」
「エピゾ、確認だ。そのドラゴンって敵なのか?」
「違いますよ~寿命がもうすぐ尽きそうだから、弔いをして欲しいってお願いなんです~」
「弔い……」
「あ、ボス!ドラゴンって言ったら!」
「あ、アレか。交渉次第で何とかなるかもしれん」
我の交渉術でなんとかなればいいのだが……最悪アールグレイにすべて押し付けて熱意でゴリ押ししてもらうか。
最初は二人とも黙っててもらうか。
◆ □ ◆ □ ◆
『おお、エピゾが呼んだ者か?体がろくに動かないのでな。こうして魔法で会話する事を許してくれ』
四足歩行と推測される蜥蜴ベースで、深紅の鱗が美しいドラゴンが翼を畳み、猫の様に丸まって寝ていた。
圧倒されても言葉は交わさないと始まらない。
「初めてニャルと申します。貴方の呼び名をお聞かせ願えませんか?」
『エピゾからはドラゴンさんとしか呼ばれとらんからな。好きに呼ぶといい』
「ドラゴン殿、弔いをして欲しいと聞いています。弔い方にご希望はありますか?」
『ない。だが、せっかく星渡りの民と会えたのだ。星渡りの民のやり方で弔って欲しいと思っておる』
弔い方に希望は無し、しいていうなら我々の流儀で頼みたい……かなり友好的なドラゴンだな?
「一つ提案があります。私は竜の心臓が欲しいのです」
『我輩の死体を弔う為の代金として持っていって構わんよ』
「……よろしいのですか?」
『ああ、一人で死ぬのが寂しいだけの老いぼれだ。受け継がれる事のなく、厄介事を引き起こしかねない死体の処理をしてくれるというのなら素材ぐらいくれてやるとも』
「……私と契約しませんか?心臓だけでなく、貴方本人の魂が協力してくれるのであれば作りたいモノがより優れたモノになりそうなんです」
『お主は死霊術師なのか?』
「似たような能力を持っているだけですよ」
忍法から特技まで死霊系特化へ変更。並びに機械化処置への対処まで行えるように組み換えを行う。
裏で行っているが実行までに間に合いそうだな。
『お主は何を成し得たいのだ?』
「そこにいるアールグレイ、彼が操縦する飛行船に似た道具の核になって欲しいのです」
『ほう?』
「アイツは自身の相棒たる存在が無機質な奴より、貴方の様な存在を望むでしょうからね」
「ああ、アンタみたいに存在感だけで圧倒できる存在になりてぇ。アンタが俺の相棒になってくれるならこの上なく嬉しいぜ」
『いいだろう。我輩の全て、お主に託すぞ相棒』
ドラゴンが光輝き、我らの視界は極彩色に染まって暗転した。




