VS『賭博』
「クロエ、やりすぎだろ。あのパフォーマンスは流石に敵が出来そうだなぁ……」
弱点を攻撃するって意味では理解できるが、眼球から脳を狙うはなかなかに言うは易く行うは難しだぞ。人の事言える立場ではないけど。
COC卓中にダイスを振らず、ひたすらに宣言のみで立ち回ろうとする奴の行う描写説明から手法を学び、実行できるように鍛錬でも積んでるのか?
閑話休題
「お客様、お楽しみいただけてますでしょうか?」
「うん。あの娘があそこまでの大立ち回りをできると知れて楽しいよ。『超越者』の『賭博』オーナー」
「おや、ご存知でしたか」
「いや、今知った。『超越者』という『逸脱者』の枠組みも、『賭博』という称号もね」
クロエの試合観戦中、ドレスに身を包んだ支配人らしき女性から声を掛けられた。
怪しさしかないし、調べがいのある相手でもある。だから、秘密を"内偵"で抜き取った。全てではないけど、わかった事もある。
だからこそ、やりたいと思えるギャンブルができた。
勝ちに行けば敵対、負けは失うモノが大きい。だから引き分けこそがベスト。
「彼女は貴女の従者みたいですが、休人同士で主従関係が構築されるのですか?」
「されるとも。元居た世界、休人が帰る世界でも似たような関係性を持っていますからね」
「どのようにすればあそこまで休人が忠実なる従者になるのやら……」
「宗教に置き換えて例えるとわかりやすいですよ」
「というと?」
「彼女にとって、私は崇め奉る唯一の神。そして私から与えられる言葉は全て実現しなければならない神託そのもの。そう考えるとわかりやすい構図でしょ?」
クロエの自室には我を崇める祭壇があるし、コレもあながち嘘じゃないんだよな。押入れの中に格納してもらってるから、用があって入っても見なくて済むようにはしてる。
精神衛生上健康によくない。
「『賭博』オーナー、一つ賭けをしませんか?」
「賭け……ですか」
「その前に一つ握手を……はい、ありがとうございます。(模倣)オン。私はこのように他者の姿を模す事ができる存在です。ですが、ソレを直接見せることは一度もしていない」
「どちらが本物であるか、自身の主を見極められるかどうかの掛けという事ですね?」
「ええ、私が負けたらあの娘を貴女に差し上げます」
「こちらに掛けて欲しいモノでもあるの?」
「裏VIPで一人知人が囚われていると聞きまして。ソイツの身柄を引き渡して欲しいのですよ」
「なるほど……構いませんよ」
「最後に、引き分け時にはクロエをこちらの時間で一週間分カジノに奉仕させます。ですので、裏VIPへの入場権を頂ければと」
「この掛けに引き分けは存在しないのでは?」
「しますよ。私も偽者になればいいのですから」
「は?」
「今こうして貴女と語っている私は既に偽者ですからね。本体はスロット楽しんでますよ」
目押し台が減って稼ぎが悪くなってきたとは思う。でも、能力生かすならスロット一択だからな。
「いいでしょう。その賭け、乗りますよ」
「ありがとうございます。試合も終わったみたいですね」
クロエ、期待に応えてくれよ。
…………ぶっちゃけ、本家の『賭博』は乗らないかもしれないギャンブルですね(内容変更するように言われたら捻り出して変更します)




