遊戯世界復興 10
冒険世界 猫紫苑商会 会長の執務室
「……書類仕事、これ本当に我がやらなければならないのか?」
「ええ、まあ。たまには仕事していただけると。マスターの貯蓄が足りておらず私が代わりに支払いをした請求書などもありますのでその差額分ぐらいは働いてください」
「髭の鬼悪魔」
「進めねば終わりませんよ?」
「終わった仕事だ」
「おや?そのようで」
我、休人最速。本気でやればこのくらいすぐ終わる。
遊戯世界に戻って研究の続きをせねばな。
ん?誰かがこの部屋に近づいてきている?
「いきなりですまないが匿ってくれ」
「それでは『騎士王』陛下、ブリタンニアと我が商会の商談を始めましょうか」
「あ、ああ。よろしく頼む」
「ラージャ、お茶菓子お出しして」
「準備してまいります」
【遊戯魔王】になってから初めて戻ってきたタイミングでやってくるとは……なんの因果が働いてやがる?
いや、仕事をサボりたいという理由で時々文房具等を公務に使用する備品の買出しとして来ていたのは知っていたし、応対した事も何度かある。
その上で一つ確認しておかなければならない事があるな。
「ところで、獅子を追いかけている存在は何者ですか?」
「すまないがその件について語る事はできない。だが、此処はこの街でも屈指の情報の秘匿が可能であろう?」
「私が居る時だけですよ。ひと先ず音と光は遮断しておきました。魔力不使用なのでそこから探知される事はないかと。まあ、魔力無しで用意できる遮断方法は実行してますよ」
「感謝しよう。それで今回は何を売りつけられるのだ?」
「いえ、情報を買い取らせてください。遺失世界はどうやったら確立世界に至れるのかについて教えていただければと」
「ふむ。それは貴殿が【魔王】になった事と関係しているのだな?」
見通されてる……転職したことバレてる。ガワだけのお飾り【魔王】なのに見破られてる。だからこそ、知っていそうだ。
「ええ、とある遺失世界が自らの支配権を対価に復興を依頼してきたので何を以て復興完了となるのかが知りたいのですよ」
「すまないが遺失世界については私もほとんど情報がないのでな。その質問には答えられない」
「そうでしたか。ではこちらのカタログから持ち帰って怒られそうにない品をお買い求めください」
「【冒険勇者】には気をつけろ。アレは【魔王】であればなんであろうと襲い掛かるのでな」
「ご忠告ありがとうございます」
【冒険勇者】って『騎士王』様を差し置いて冒険世界最強の御仁では?ソレに命を狙われ続ける?
『騎士王』陛下の語られた通りなら【魔王】としての能力皆無だとしても関係ないんだろうな。
冒険世界で旅しにくくなってきたな。




