閑話:クロエの覚悟
クロエ視点です
「悪いが嬢ちゃん、アンタを倒せば俺ら全員借金チャラになって外に出られるんだわ。だから、おとなしく倒されてくれや」
「お断り致します。我が主よりこの場にて勝利を納めて、莫大な財を献上せよとの命が下っておりますので」
我が主に頼られる事、それが私の喜び。
戸籍が存在せず、どれだけ虐待されようと児童相談所が動くこともない。人権なんてまるで存在しない奴隷同然の存在だった。
そんな私に食事を与え、衣服を与え、家を与え、しまいには戸籍すら与えてくれた御方。
それこそが我が主。今は自ら意思で我が主の奴隷となっている。だけど、ソレを公言すると我が主に迷惑が掛かる。だからあくまでお傍でお仕えする従者でしかない状態。
身も心も我が主に救われ、我が主に捧げたモノ。
だから、我が主の為に自分を磨く事をやめない。どんな特技であれいつか役に立つ日が来るかもしれないのだから。
閑話休題
戦闘開始の合図が鳴り響く。9対1という環境となったバトルロワイアル、勿論私が少数派陣営だ。
人数差からこちらから仕掛けると魔力切れで敗北する事になりかねない。
だからカウンターを主体に、合気の技にて受流し、衣装に仕込まれた暗器で着実に一撃づつ攻撃をしてダメージを積み重ねる。
「……?回復役が混ざってますね」
「お前が負ける事をカジノ側も望んでるってこった」
この休人達は世紀末の世界観で生きてるみたいですね。ダメージの蓄積が足りないとは思っていたが、回復されていたら意味がない……ひたすらに時間がかかる試合となるから。
鉄パイプや釘バッド、火属性魔法での攻撃を避けて、捌いて……この様子だと、私の集中切れ待ちですか?
ミツケタ。アレだ。
「ここ」
「あ?」
背後に回り、相手の頭上から両手に持ったスティレットナイフを眼球にそれぞれ刺し込む。即死判定を誘発させて、退場させる。これで回復役は始末した。
まだまだ油断はできない状況。
ナイフは袖口に仕舞って、無手を基本状態とする。
対応の幅を自ら狭める理由はない。
「な、なあ、アイツさっきから一度も攻撃当たって無くないか?」
「振れたとしても受流しの防御だもんな」
「くっそ、どうなってやがる!」
こちらは魔法を一度も使用していない。空中ジャンプが可能になるスキルしかシステム的な手の内を見せていない。
また一人殺れた。あと敵は七人。
刀等の大きめの武器は取り出す隙がない。だから持ち歩いている小道具で対応するしかない。
相手もまだ隠し玉があるかもしれないのだから、魔法は秘匿するしかない。まだ、余裕を持って対処できているのだから。